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裁量労働制の健康確保措置としての「つながらない権利」

「ストレスの解消には、休息の質と量の確保が大切です。勤務間インターバル制度は量の確保である一方、『つながらない権利』は質の確保と言えます」(久保智英・労働安全衛生総合研究所上席研究員)

経団連「当面の課題に関する考え方」

経団連の「当面の課題に関する考え方」(2022年5月9日)には「テレワークの活用など多様で柔軟な働き方を推進するとともに、働き手の健康確保を前提とした裁量労働制の対象拡大等、自律的・主体的な働き方に適した新しい労働時間制度の実現を目指す」と記載されている。

5.働き方改革と人材育成
改正雇用保険法(4月1日施行)により規定された機動的な国庫繰入の実効性の確保を引き続き求めるとともに、制度の持続可能性のため、雇用保険財政再建に向けた検討を急ぐべきである。6月末まで延長された雇用調整助成金の特例措置の今後の扱いについては、雇用情勢と新型(略)ウイルスの感染状況を注視し、雇用保険財政も十分踏まえながら、慎重に検討する必要がある。
また、働き手のエンゲージメント向上に着目し、働き方改革の深化を促すとともに、イノベーションの源泉となるダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みを加速する。その一環として、テレワークの活用など多様で柔軟な働き方を推進するとともに、働き手の健康確保を前提とした裁量労働制の対象拡大等、自律的・主体的な働き方に適した新しい労働時間制度の実現を目指す。
「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」が4月18日に公表した2021年度報告書のフォローアップとして、大学等と連携したリカレント教育の促進や、インターンシップをはじめとした学生のキャリア形成支援活動の周知・推進に取り組む。また、大学教育改革提言(2022年1月公表)に基づき、大学をめぐる内外の環境変化等を踏まえた大学設置基準の見直しやリカレント教育の促進等を関係方面に働きかける。(経団連「当面の課題に関する考え方」2022年5月9日版 抜粋)

厚労省 これからの労働時間制度に関する検討会

政府(岸田政権)も同様の考えがあると推測しているが、参議院選挙前までは与野党が対立するよな法案などは明らかにしないようだ。しかし、経団連の方針に沿った形で、厚生労働省の裁量労働制など労働時間制度見直しに関する有識者会議(これからの労働時間制度に関する検討会)での議論は進捗している。

人事院 テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会

また、厚生労働省での議論は民間企業に勤務する者を対象とした裁量労働制だが、人事院の有識者会議(テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会)でも国家公務員の裁量労働制(国家公務員の場合は「裁量勤務制」)拡大が国家公務員のテレワークにも最適の労働時間制度(勤務時間制度)として推奨され、議論が進捗している。

規制改革推進会議「当面の規制改革の実施事項」

なお、内閣総理大臣諮問機関・規制改革推進会議「当面の規制改革の実施事項」(2021年12月)には「厚生労働省は、働き手がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる環境整備を促進するため、『これからの労働時間制度に関する検討会』における議論を加速し、令和4年度中に一定の結論を得る。その際、裁量労働制については、健康・福祉確保措置や労使コミュニケーションの在り方等を含めた検討を行うとともに、労働者の柔軟な働き方や健康確保の観点を含め、裁量労働制を含む労働時間制度全体が制度の趣旨に沿って労使双方にとって有益な制度となるよう十分留意して検討を進める。同検討会における結論を踏まえ、裁量労働制を含む労働時間制度の見直しに関し、必要な措置を講ずる」と記載されている。

エ 労働時間制度(特に裁量労働制)の見直し
【a:令和4年度中に検討・結論、結論を得次第速やかに措置、b:令和4年度検討開始】
a 厚生労働省は、働き手がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる環境整備を促進するため、「これからの労働時間制度に関する検討会」における議論を加速し、令和4年度中に一定の結論を得る。その際、裁量労働制については、健康・福祉確保措置や労使コミュニケーションの在り方等を含めた検討を行うとともに、労働者の柔軟な働き方や健康確保の観点を含め、裁量労働制を含む労働時間制度全体が制度の趣旨に沿って労使双方にとって有益な制度となるよう十分留意して検討を進める。同検討会における結論を踏まえ、裁量労働制を含む労働時間制度の見直しに関し、必要な措置を講ずる。
b 厚生労働省は、労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号)上の労使協定等に関わる届出等の手続について、労使慣行の変化や社会保険手続を含めた政府全体の電子申請の状況も注視しつつ、より企業の利便性を高める方策を検討し、必要な措置を講ずる。(規制改革推進会議「当面の規制改革の実施事項」2021年12月版 抜粋)

テレワークや裁量労働制における健康確保措置

経団連の文書には「働き手の健康確保を前提とした」と書かれ、また規制改革推進会議の文書では「健康・福祉確保措置」とも記載されている。

厚労省「これからの労働時間制度に関する検討会」ではテレワークや裁量労働制において必要な健康確保措置として勤務間インターバル制度が検討されている。しかし、テレワークや裁量労働制における健康確保措置としては、勤務間インターバル制度だけではなく「つながらない権利」が必要だと思う。

久保智英氏は『睡眠の質の確保が大切「つながらない権利」の議論を』と題した記事を情報労連のサイトに書いており、その記事の中で「ストレスの解消には、休息の質と量の確保が大切です。勤務間インターバル制度は量の確保である一方、『つながらない権利』は質の確保と言えます」と述べている。

追記:これからの労働時間制度に関する検討会 報告書

厚生労働省は(2022年)7月15日、第16回「これからの労働時間制度に関する検討会」を開催し、「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書案を議論し、その日に厚生労働省は「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書(本文、概要、参考資料)を公表。

公表された「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書の概要には、裁量労働制の対象業務について「現行制度の下での対象業務の明確化等による対応」「対象業務の範囲は経済社会や労使のニーズの変化等も踏まえて必要に応じて検討」と記載され、本文には「対象業務の範囲については、前述したような経済社会の変化や、それに伴う働き方に対する労使のニーズの変化等も踏まえて、その必要に応じて検討することが適当」と書かれている。

また、「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書の概要には「勤務間インターバル制度について、当面は、引き続き、企業の実情に応じて導入を促進。また、いわゆる『つながらない権利』を参考にして検討を深めていく」と記載され、本文には勤務間インターバル制度については「当面は、引き続き、企業の実情に応じて導入を促進していくことが必要である」とあり、そして「海外で導入されているいわゆる『つながらない権利』を参考にして検討を深めていくことが考えられる」と書かれている。

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