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記事一覧

【映画】『ミッシング』がすでに欠けていることを突きつける

【映画】『ミッシング』がすでに欠けていることを突きつける

映画の内容はまさにこの通りだ。
娘が行方不明になる。
それにより欠けていたことに気付かされる人たちが苦しみ続け、悲しみに埋没し抜け出せない。
心が失われている大勢の人たちは過剰に被害者をネットで叩く。

この映画の構成が秀逸なのは、正義のジャーナリズムを貫徹しているように見えるTV局記者砂田(中村倫也)も心が欠けているのが露呈してしまうのを描いたところだ。

石原さとみと青木崇高が演じる夫婦も少し

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別れの映画『PERFECT DAYS』

別れの映画『PERFECT DAYS』

『PERFECT DAYS』を再び鑑賞してきました。
何かを確認したいわけでもなく、ただもう一度映画館で観ておきたいと思ったのです。
パンフレットも購入しようと思いました。
(映画のパンフレットって電子書籍化できないのでしょうか。需要があると思います)
パンフレットを購入して良かったです。本作が心に残った方は必ずお気に召すかと思います。
平山(役所広司)のフルネームも載ってますし。

2回目の鑑賞

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Love the world or hang on to society [film] 『PERFECT DAYS』

Love the world or hang on to society [film] 『PERFECT DAYS』

Some people are better at loving the world than others.
Hirayama (Koji Yakusho) works cleaning public toilets in Shibuya Ward. He lives in Sumida Ward, where the Sky Tree is nearby, and drives back an

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【映画】『PERFECT DAYS』鑑賞後に頭の近くに漂ってる淡い感覚をまとめました

【映画】『PERFECT DAYS』鑑賞後に頭の近くに漂ってる淡い感覚をまとめました

いまだに『PERFECT DAYS』に思考が引きずられている。
「引きずられる」だとネガティブな感じだから、言い換えると「側頭部の近くを漂っている」という感じが近い。

※前回記事 世界を愛するか、社会にすがるか【映画】『PERFECT DAYS』の世界観

鑑賞後いろんな人の感想を拝読し、新たに思いついたことを書いていきたい。
すでにご鑑賞いただいている方には「そうそう、そんなこともあった」と思

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世界を愛するか、社会にすがるか【映画】『PERFECT DAYS』の世界観

世界を愛するか、社会にすがるか【映画】『PERFECT DAYS』の世界観

世界を愛するのが上手い人と苦手な人がいる。
平山(役所広司)は渋谷区の公衆トイレを清掃する仕事をしている。スカイツリーが近くにある足立区で暮らしており(訂正:車のナンバーが足立区なだけで、墨田区に住んでるそうです)、毎日渋谷区と家を車で往復している。
休みの日は木漏れ日を撮影したカメラのフィルムを現像に出し前回の現像分を受け取ったり、古本屋で100円の小説を買ったり、行きつけの居酒屋でママ(石川さ

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『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』と現代批評

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』と現代批評

妖怪漫画の金字塔『ゲゲゲの鬼太郎』をなぞりつつ敗戦国日本のおぞましさを描いています。
もちろんいまだに続いている敗戦国としての現代日本をも標的にしていて、老人に食い物にされ続けている我々にとって、この作品が発するメッセージは身に染みて痛感することでしょう。

「M」と呼ばれる製剤(おそらくヒロポンのことか)で不眠不休で働き国力を上げようとする様は、エナジードリンク「M」をがぶ飲みして働き続ける現代

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映画『正欲』は早押しクイズではなく巨大迷路である

映画『正欲』は早押しクイズではなく巨大迷路である

映画『正欲』が今年一番だと感じるほど良かったのですが、低評価を付けてる人や偉そうに「多様性が。水フェチが。」みたいに言ってる人を見るとやるせない気持ちになる。
それより「わからない。難しい」と言ってる人の方が信頼できるし好きだ。

現代はSNSの発達が原因なのか「答えがわからなければならない」という焦りのようなものに支配されているのではないか。
そして「答えのように見えるもの」に誰よりも早くたどり

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【映画】『正欲』が性欲ではない形で絆を強固にする

【映画】『正欲』が性欲ではない形で絆を強固にする

映画版『正欲』のキャッチコピーは「観る前の自分には戻れない」だが果たしてそうだろうか。
原作は「読む前の自分には戻れない」でこちらは未読のため映画版よりもさらに深く、大きなものが描かれている可能性がある。原作も映画版も知っている人に違いをお聞きしたい。
映画鑑賞後に僕がこのキャッチコピーから感じたのは「本作が救いになる人と救いにも何にもならない大多数の人」とに分かれるだろうな、というものだ。

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映画『月』を観てもまだ「命は尊い」と言えるのか

映画『月』を観てもまだ「命は尊い」と言えるのか

考えがうまくまとまらない。
まとまらないのではなく目を背けていただけで、この映画が無理矢理目をこじ開けてきただけだ。

以下の文章は映画『月』の内容に触れるが、未見の方がすでに想像している通りの映画だ。ネタバレというものにはならないだろう。

◾️感想が言えない

映画自体の感想は簡単に出来る。
演技力の高い出演者たち。
わかりやすい演出。
詩的な映像表現。
期待通りのストーリー。
というように。

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【映画】『福田村事件』が僕らの鬼性を浮き彫りにする

【映画】『福田村事件』が僕らの鬼性を浮き彫りにする

「声がデカいだけの馬鹿に従うな」
とてもわかりやすい教訓だが、その程度の当たり前のことを学ぶための犠牲としてはあまりにも酷過ぎた。

悲惨な事件に発展する前に止められたであろうポイントはいくつかある。
それでも止まらない。
なぜなら人は馬鹿で、周りに流されて、自分の頭で考えず、そして心に鬼を飼っている。
その鬼が表に出るきっかけはいくつかあって、不安や恐怖、思考停止、思い込みなどが起きている状態が

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『アリスとテレスのまぼろし工場』によるこの日常の批判

『アリスとテレスのまぼろし工場』によるこの日常の批判

『アリスとテレスのまぼろし工場』は悲しい作品だ。二重の意味で。
本稿ではまず『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』と本作を対比させ、次に本作自体が放っている悲しみについて考えたい。そして我々が生きているこの世界について捉え直すことで「二重の悲しみ」を浮かび上がらせてみたい。

以降の文章は『アリスとテレスのまぼろし工場』と『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』の内容に触れるためご了

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映画『怪物』鑑賞後のもやもやを明らかにする

映画『怪物』鑑賞後のもやもやを明らかにする

鑑賞後ずっともやもやが晴れないでいる。
文章をうまく構成できないと思うが、ひとまず書きなぐることで少しでももやもやが晴れれば良いという願いを込めて書き始めたい。
僕と同じくもやもやしている方々に出会い意見交換できればという期待も込めて。

以下の文章は映画『怪物』(監督是枝裕和、脚本坂元裕二)のネタバレを含む。
映画ノベライズ版は未読。解釈違いや記憶違いなど間違いに感じられる部分があればご指摘いた

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映画『Village』がこの現実と地続きになっている理由

映画『Village』がこの現実と地続きになっている理由

とても救いのない物語だ。
父親が殺人を犯し直後に自殺。母親(西田尚美)がギャンブル依存症。そしてその息子の片山優(横浜流星)は親の借金のために村のゴミ処理施設でいじめに遭いながら抜け殻のように働き続けている。

以下ネタバレを含む。

能の「邯鄲」という演目が作中に登場するため内容を調べてみると、この映画は「邯鄲」をなぞらえていることがわかる。

「邯鄲」について要約してみる。

にわか雨が降った

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『search/#サーチ2』絶対観て!!

『search/#サーチ2』絶対観て!!

めっちゃおもしろい。
レビューなんか読んでないで映画館へ行こう。
前作とは関連が無いし監督も違うみたい。
でも前作を上回る面白さ。
激おすすめ。
「激おすすめ」とか言う奴のことは信用ならないかも知れない。
でもあなたの映画嗅覚が必ずこの映画を嗅ぎつけるはず。
観てからいろいろ話そう!!

以下ネタバレ。観てない人は映画館へ!!!

もうやば過ぎた。前作も好きだけど個人的には今作は超えてきた感じ。

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