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009 ブックレビュー『アタマのやわらかさの原理』

最近「編集」に関する連載をはじめたこともあり、その流れで「こんな本がありますね〜」とマイナビ出版『web desining』編集長におすすめして頂いた1冊です。界隈で言われている「これからは編集力ですね!」的な話を企画力や発想力に落とし込んだ1冊です。

ログミーばりの完全な口語調展開で、文字量も少ないので読みやすく2時間コースでした。難しい単語も少なく相当にひらたい内容を意識して書かれたと思いました。

著者が今まで仕事を一緒にしてきたアド系のトップクリエイターたちの思考や言動をベースに構成されているので、言い回しに重厚感がなくても、信憑性のレベルは高いです。杉山恒太郎、眞木準、佐々木宏、中島信也、谷山雅計、水口克夫、嶋浩一郎、伊藤直樹、水野学、、、帯に名前を入れるべき人ばかりです。自らのクリエィティビティを武器に活躍しているクリエイター陣が総出演です。

巻末の「おわりに」のページで、「これからは編集の時代」という編集3.0的な営みも考えもちゃんと説明されていないから書こう!と思ったというところは、僕も全く同じ思いでした。僕も「編集力とビジネス力」のテーマで連載を始めたのは、「周りの人から、今、書くべき!」という声と自分としても15年編集をやってきた集大成として、形にしたいと思ったのがきっかけです。著者と着眼点は少し違いますが、リンクするところは多く、そういったところでも楽しめた本でした。

本書は、「アタマのやわらかさ」をテーマに発想力や創造性を紐解いた本です。有能なクリエイターたちは、思いつきで仕事をしているわけでなく、アタマの中で「編集」という作業をしてアウトプットしているという大筋です。

創造とは「ひらめき」ではなく「発見」である。こんな内容が冒頭にはいくつか出てきていて、とても納得できるフレーズでした。何かを見つけるには、膨大な知識や視点のバリエーションも必要なわけで、さらに、見つけたものを色々と掛け合わせる「編集」というスキルも重要となるってことだと理解しました。その結果が「新しい価値の発見」。すなわち創造的なものが生まれるということなのかと、、、。

タイトルには「原理」という言葉が入っています。なので法則的な内容ベースで「アタマのやわらかさ」を説いています。ただ、メソッド的な堅苦しい内容ではなく事例やクリエイターたちの言動、著名人の引用などなどをたくさん用いているので、自分自身の考え方や物の見方を棚卸しできる1冊でもあるなと思いました。

「価値を固定せずに新しい可能性を探っている」「こう!と価値を決めつけたりしていない」「他にも価値があるんじゃんないか?」という言葉は、視点で考える重要性、組み合わせで考える必要性を気づかせてもらいました。

本書では、『編集とは、組み合わせによって価値やメッセージを引き出すこと』という定義付けがされています。「集めて編む」という語源にも近いので、この定義は理解しやすいと思いました。ただ、言葉で理解はできても、やはり価値やメッセージを引き出すのは、なかなか難しいことだな〜と思いました。

こんな例がありました。コーヒーの価値は、味、色、ではなく「カフェイン」「眠気」と組み合わせて「目覚める」さらに「子供は苦手」と組み合わせる、すると「大人の楽しみ」とい価値を引き出せたり。どうでしょう?なんとなくこの法則がわかりそうですよね。

あと、背景の引き出し方として「イスなら」座るためのものという価値が引き出されれるとしたら、掛け合わせとしては、「休息」とか「リラックス」といった概念が明確になるので、そこをさらに崩していくと面白いアイデアが生まれる、、、。なるほどって感じです。

やっぱり、ものの捉え方を変えられない人は、モノだけ、価値だけを見てしまうから、こういった思考が苦手だろうし、この思考すら気づかないんだろうと思いました。そうすると組み合わせという編集作業もできない訳だから、アタマのやわらかさどころか創造性も養えないってことになるので、クリエイターとしては致命的だな〜と思いました。

「アイデア」は「思い出すもの」。このフレーズも印象に残りました。創造性には、ある程度自分で理解している情報、つまりは自分の知識になっているものがキーとなるという意味です。自分の興味から得た知識をうまく生かして創造的な仕事をしている人が少なくないという彼の見解です。確かに僕も同感です。博識まで行かなくても、インプットに乏しい人の企画とかってやはり頭打ち感というか、説得力にかけるし面白いものって少ない気がします。驚きがないというか。もちろん、視点の違いで今までにない価値を見出すことは、たまにはありますが、小手先感は否めないです。調べずにわかる知識を自分の中にどれだけ多く蓄えておくがことが重要ってことですね。

最後に、「今、起きていることに注目する。周りで起こっていることに反応し続ける。自我を通すのではない、、、」著名なクリエイターたちに「自分を生かす」をテーマで話をしてもらった時の共通点だそうです。なんかジワる言葉だな〜と思いました。


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