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008 ブックレビュー 『上を向いてアルコール』

久々に小田嶋さん。コラムニストらしく、テーマについての事実関係、そこに付随する検証、そして個人的見解、この要素がうまいバランスで組み合わせってる小田嶋さんは大好き。「たまむすび」も聴いているけど、語りと文章の表現がとてもシンクロしていてすごい

普通、文章にできないから口頭でとか、口頭だと伝わらないから文章でというふうに分けると思うんですけど、そこの誤差がほとんどない。もちろん、伝わり方は違うと思いますが、伝え方に関しては同調している感じ。(コラム道も必読!)

今回の本。アル中だった小田嶋さんの話。10年前にも書こうと思ったけど書けなかった内容の1冊。今年の3月に出たやつです。ラジオで発売は知っていたのですが、買うタイミングなく少し前にポチッとした。

本題にいきたいのですが、ちと、このタイミングでなぜこの本を買ったのか?から説明。またレビューが日記っぽくなってるのは悪しからず、、、。10日前くらいに「お酒」について、ある2人と話をしていたのですが、2人ともこの本を知っていて、うち1人は読んでみて!と勧められのがきっかけでした。別々の会話です。

もちろん、2人ともアル中でないし、僕もアル中に対しての不安とかを相談がした訳ではなかったのですが、酒好きっていうのが日本では、一つの特技であったり社交面ではストロングポイントになっていることに、ちょっと違和感を感じていたので、「お酒」について話すことになったのが経緯です。様々な場面で「お酒好きですか?」「飲み行きませんか?」みたいな話って社会人になってからずっと変わらないな〜と思ったのもあり。

違和感といっても否定をしている訳でなく、むしろ、そこでの出会いやそこでの楽しみや、そこでのビジネス展開、そこでの人脈はめっちゃ重要だし、僕はたくさんの得られるものがあったので聖域や財産だと思ってる。

違和感のポイントは、その中で自己はどこにあるのか?ってこと。そんなの自分次第だし、それいったところでどうなんよ!みたいな所もあるけど、飲んでる理由や飲みたい理由を自己認識するのは大事だと感じたんです。なので、ふとそんな話を2人とした。

はい!ここからが本題。序盤早々に「酒を飲む理由なんてない!」「ただ飲んじゃったが先にあるだけ!」みたいな、身もふたもないところから始まります。まあ、アル中の人はという前提なのですが、ただ、これって酒好きの人でもあるあるだと思うんです。自分も含めてですが、、、。後付けで、ストレス解消とか、仕事が忙しかったからとか、色々あると思うんですが、結構、真理だなと思いました。

文中で小田嶋さんの主治医の話で「カタストロフ理論」で「アル中患者の行動」を読み解く説明があって、「俺は大丈夫!」みたいな発想のコアだと思ったんです。「カタストロフ理論」とは、破局点にぶつかると急にひっくり返ってゼロに戻るような運動を観察、分析するための考え方らしいです。依存者の飲酒パターンと似てるらしく。

あとは酒場コミュニティの話は面白かったです。彼曰く「架空の親友みたいな感じ」「その場限りのコミュニティ」。これは特にアメリカのバーとか行けばわかると思うんですけどやっぱ日本は独特かと。日本の酒場文化って寛容というかゆるい。彼の言葉では「酒飲みに自分の居場所はここだと勘違いさせる力があって、だから飲み友達を失う怖さにおののき、また飲みに行って、、、、そうなると職場でも家庭でも生き残れないよね」みたいな。そこを楽しんでいる僕としては、グサッとくるんですけど、まあ確かにと思える部分もあるなと。僕自身は居場所という概念なんて1ミリも思ったことはないのですが、、、。でも、ものすごく腹落ちした。

そもそも、酒を楽しみたいのか、コミュニティを楽しみたいのか、余暇を楽しみたいのか?って話になるな〜っても考えると、まあ、冒頭の「飲む理由ですね」。ここは小田嶋さんの視点は鋭くて、フェス、キャンプ、読書、スポーツ観戦、旅などなど、結構、酒ありきで実はみんな動いているんでないか?っていう見解です。ある先輩に「サカシンは、テント張る前に飲み出すでしょ!一旦、自然とか楽しんで、そこから飲みなよ〜」みたいなことを言われて、「あっ!おんなじ事だ!」と思ったんです。これ本質だな〜って。依存と嗜好の違いだなって。

終わり部分は、お酒の依存からSNS依存の話。ただ、個人的には、SNS上でのゆるい関係を気づくことで仕事や友人などの関係構築。果ては、佐々木俊尚さんがいっている人生のセーフィティネット的な力があるので疑心暗鬼ではあったのですが、1周してそういう見解もあるなと考えると結構、目から鱗でした。

スマホやSNSに依存しているのではなく、その先にある他者というコミュニケーションに依存しているというところに小田嶋さんは依存の定義をしているんです。アルコールは実質的に脳を溶かしていく、SNSは心をゆっくりと壊していく。アルコール依存に変わるコミュニケーション依存的な話が最後にドーンときて、これって現代の社会病理的かもと思い、正直、消化不良だったのですが、、、こんな後味が映画も本も大好きなので最高な1冊でした!


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