おひさしぶりです、サトウです。
年末に診断メーカーの「＃書き出しと終わり」というものを引いたので、書いてみました。

らしいどす。
ひええ、難しい！
わたくしサトウサコ、依頼受けて書くってのがどーも苦手なのに、どーして診断メーカーなんて引いてしまったんだろうと過去の自分を呪いながら書きました。

感想は……否定的なのであればいりません。
可愛い女の子のお話です。
どうぞ！

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓本編↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

『A/NAIVETY/GIRL』 サトウ サコ

　言葉が見つからなかった。
　感動？　衝撃？　心臓が止まりそうとか、涙が出そうとか、そんなもんじゃない。この感情に見合う言葉なんてないし、単語にした瞬間に嘘になるだろう。
　こんなくたびれた地元の銭湯。壁の向こう側に、推しがいる。
　Blu-rayもアルバムも写真集も全部持ってる。着ボイスからSMSの有料スタンプまで全部。動画も生放送も、最低でも一〇〇回再生するようにしてる推し。水道止められた私か働いてんのか分からないジジババしか集わない銭湯に、推し。
　この声、間違いない。だって比喩じゃなく親の声より聞いてるもん。そこら辺にいるオッサンとつまらない話してる。「最近あついっすねえ、まだ春なのにい、ははは」オッサンがそこら辺のオッサンだって断定できるのは、推しのスタッフ情報を網羅してるから。推しのファンなら知ってんの。
　ひとりできたのかな。プライベートだよね。でも私は他の害悪オタクどもとは違うから安心してね。
　コンサートには必ず行く。握手会にだって。でも私は見てるだけ。だって触れたら、推しが穢れちゃうもん。あいつらは自分の私利私欲のために推しを推してるだけ。汚い顔、汚い手、汚い声、汚い妄想で推しを貶める。
　害悪オタク。全員くたばれ。くたばれ。くたばれ。
「兄ちゃん、イケメンだなあ、もしかして、ゲイノウジン？　」
　死ね。
　学校のチャイムみたいな、場違いなアラームが鳴り響いた。清掃のため一時店を閉めるとのアナウンスがされる。片方にしか露天がないから、風呂の掃除のついでに男女風呂を入れ替えるのだ。
　でも私は知ってる。このボロ銭湯が、もう何ヶ月も風呂の掃除なんてしてないこと。あえて陳腐な単語を選ぶなら──きっとそれを、幸せって呼ぶんだね。