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『精神科医が教える 親を憎むのをやめる方法』増田裕介著


YouTubeでも患者さんからご家族、そして健常者まで大人気の現役医師!


さて、なかなかに奇抜なタイトルですね(笑)

こちらは、早稲田メンタルクリニック院長であり、現役の精神科医である増田裕介先生が書かれた本です。

増田先生は大変ユニークで熱心な方です。

先生は多くの患者を治療してきて、その根本的な原因の多くが「認知のゆがみ」であると考えました。つまり、多くの経験を通じて「誤った考え方」や「間違った学習」をしてしまったとー。

そのためには「知る」という事が大切だと。

ご自身が治療をされる患者さんに、診療時間は限られているため、病気への理解を深める内容などを最初プリントアウトしてお渡ししていたそうです。

もちろん、訪れる患者は「診療」を受けに来ているわけですから、ご本人は何かしらの疾患をお持ちです。先生はプリントアウトして渡せば流石に読んでくれるでしょと思いながらやっていましたが、だんだんと気づきます。「全然読んでない…」。

でも、患者さんはどんどん増え、先生のお時間も限られている。それでも、「あと一歩これを気づいて欲しい」「この病気をうまくいい状態に持っていくにはこれを知って欲しい」

そのような想いで、YouTubeなら見てくれるかもしれないと、チャンネルを立ち上げられました。

先生は診療が終了したら、すぐに撮影。現役の精神科医が教えてくれる「病気」のこと。支え方などは、当事者以上に悩む多くの方に人気になり、今ではチャンネル登録50万人を超えています。

ご自身も苦しみを抱えていたからこそ、本物の知識を得てほしい

そんな増田先生が診察をする中で、機能不全家族で育ったアダルトチャイルドに限らず、精神疾患のみを抱えている患者さんでも、実に多くの方が「親との関係性を原因とした苦しみ」を持っていることに気づきました。

「毒親」という言葉や、著作物も普及しました。

しかし、現役の精神科医として、増田先生は「毒親という考えは治療的ではないし、一時的なもの」であるという立場を取られています。

私は医療従事者ではありませんが、一当事者としてこのことにとても同意致します。

なので、広く機能不全家族で育った「生きづらさ」を抱える方には、AC(アダルトチャイルド)の辛さを癒し、乗り越え、成長していくためのきっかけになる本を以前ご紹介しました。

本書は、ACだけでなく、広く「親との関係性のために生きづらさを抱えている人」にこそ読んでほしい一書

今回は、広く「病気」になっている方、そして現状は「症状」が出ていなくても、「親との関係性」で「生きづらさ」を抱えている方におすすめの本となります。

少しだけ引用させて頂きます。

毒親と呼ぶことで、自分の親を世間の親とは違うものと一線を引き、悪いものとして理解することには、一定の治療効果はあるようですが…。

では、その元・子どもたちは「毒親話」をすることで、すべての悩みを払拭できたのでしょうか?

誰かに吐露してすっきりしたり、関連本を読んで納得したり、という形で一時的な慰めを得られたこともあるでしょう。しかし、それによって以前の自分から変われたり、前向きになれたり、生きづらさが軽減したりしたでしょうか。

そうした変化はあまりなかったのではないかと思います。

精神科医の立場から言うと、毒親というテーマで繰り返し語り合ったり、心の中で反芻したりすることは「治療的」ではありません。

なぜなら、それらはあまりに単純で、一方的な見方であり、子どもの心の成熟を妨げてしまうからです。

(中略)

親に悩む人の多くは、親本人について不自然なほど無知です。

『精神科医が教える 親を憎むのをやめる方法』

本書を読み、先生が教えてくれていることを自分の歴史に沿って実践するワークショップ

ということで、先生は「親について知る」ことを通して、
主観(苦しい・許せない)

客観(親の親や育った時代背景、親本人などを知る)

主観2.0(認知のゆがみを正しい情報を入れることで新たにしていく)の獲得
という方法を提唱されています。これを本を読んで学んだとおりに、自分自身で実践することで、「主観2.0」を獲得し「生きづらさ」を克服していくという方法です。

「認知のゆがみ」が「鬱」や「生きづらさ」や「トラウマ」の根本原因になっていると考えているということですね。

しかし、この「認知のゆがみ」。どれだけ「外から治そう(直そう)と」しても「無理」なんです。

例)

患者「親が言った通り私はダメな人間です」

先生「いいえ。あなたがダメだという事実はありません」

患者「いいえ。本当にダメな人間なんです」

つまり、「自分はダメな人間なんだ」という認知のゆがみがある。この歪んだ原因が「親との関係性」もっと言うと、親から「毎日言われていたから」にあるとしたら、「親は本当にそう思っていたのか?」ということを「親を知る」ことで客観的に検証してみようということです。

すると、例えばひとり親で、毎日毎日3時間しか寝ていないのに、帰ってきたら子どもたちはおもちゃを散らかしっぱなし。ご飯よと声をかけてもゲームをやめない。疲れ切ったお母さんは「もう!本当にダメな子ね!」と言っていたとしましょう。

あれ?お母さんはただいっぱいいっぱいで、私が本当にダメな人間だから「ダメな子」と言っていたわけではないのでは?と気づけるという感じです。

これは、以前紹介したACの本とも同じような側面があります。つまり、親を責めるのではなく、自分をダメだと思うのでもなく、自分を縛ってきた鎖はどこに在るかを確認し、そして今はその鎖に縛られる必要はない事を知る。これによって「生きづらさ」を軽減していく、乗り越えていくという考え方と実践的なワーク。

私はこの2冊を読み、親を知る努力を続けることによって、一定の効果を実感しています。

以前、別のSNSで記載した私の投稿の一部を引用します。

私は母については「知る」ということを今やっています。母の子供時代はどんなだったのか。どんなふうに過ごしていたのか。何が楽しくて何が嫌だったのか。母の両親はどんなだったのか。働きに出た時の世の中は、社会情勢はどうだったのか。

母を助けるという事ではなくて、不思議なことですが、許せはしなくても、いくつかの悪い思考の連鎖は切れるのです。つまり、「母が私を殴った」のは「私を愛していなかった」から。「実の親にも愛されない私」を「誰も愛することなんてない」といった負の思考の連鎖の中から、「母に愛されている一瞬もあったのかもしれない」とか、「母には母の事情があってしていたことで私を嫌っていたわけではなかったんだ」とか。理解が進むたびに、自分が「癒される」ことに気づきました。

つまり、「親を許そう」とか「愛そう」と言っているのではなく、「親を断罪しよう・糾弾しよう(毒親理論)」というのでもなく、「自分がどうしてこんなに苦しむ考え方をしているのかを客観的情報を元に修正をしていく」というスタイルです。

私はそういう意味では、親を憎むという感情は元々なく、かといって生きづらい自分は変わらずそこにいてどうにもならない感情を抱えていましたが、今は多少なりとも前に進もう、これでいいんだ、これが自分らしさなんだという感覚は得られるようになりました。

ACの本に書かれているワークよりは、精神科の先生が書かれた本なので、もう少し精神的負担を軽くしながら進めることが出来ると思います。

是非、お手に取ってみてください。

また、大変に参考になるので、先生のYouTubeもご覧になってみてください。

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