【短編小説】泡沫の希望
目が覚めると、水の中にいた。
体は重く、息は苦しく、けれども身動きが取れないわけでもない。
酸欠なせいか、どうしようもないくらい眠い。
思わずあくびをすると、口から真珠くらいの大きさの泡がぷくりと上に上がった。
それが目指す方向を見ると光が差している。
上ってもいいんだろうか。
眠い目を擦りながら体を起こして、光の方を目指そうとした。けれど、もがけどもがけど苦しくなるばかり。
そうか。さっきの泡が私に残された最後の希望だったんだ。それを自分は気づかずに手放してしまった。
愚かだ。
今度目を覚ました時はもう少し酸素が残ってるといいな。
そう思いながら遠のいてゆく意識の中ゆっくりと身体が沈んだ。
眠りにつくように落ちていく。
サポートしていただくとさらに物語が紡がれます。