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Out of 紅白, But I Love. '23 vol.9

どんどん行きましょう。


紅組⑰Cocco/焼け野が原

紅組続いてはCocco/焼け野が原。

昨年デビュー25周年を迎えたCoccoちゃん。

この焼け野が原という曲は、
2001年、彼女の活動休止前最後のシングルで、
その際に出演したMステでのことはいまだに話題になるくらい印象深いものでした。
詞を紡ぎ、声に乗せて歌にするということがここまで生と直結する"行為"になり得るのだと、今振り返るとより思考が巡る部分があるのですが、

先日リリースされた昨年から続くツアーでのこの曲の歌唱を聴くと、20年前と明らかに違うことがわかります。

それは単にフィジカルな時間経過によるものではなく、彼女自身の人生のフェーズの変化やその中での歌う行為の置き場所の変化、のようなものをこちらに想像させます。

もちろん聴く側の私たちもこの経過した時間とともに聴き方も、意味合いも、単純に好きか嫌いかも、ひとつの曲だけどもさまざまな変化を感じることができると思います。

今の焼け野が原もとても好きです。

昨年メディアでの顔出しをしない旨の発表をした彼女なので、果たしてどういったステージングになるのかも見てみたいです。


白組⑰Mr.Children/I MISS YOU

(0:40よりワンフレーズのみ聴けます。、)

白組はMr.Children。今年リリースのアルバムmiss youよりタイトル曲I MISS YOU。

キャリアが長くなればなるほど代表曲やヒット曲と呼ばれるものが生まれ、その曲たちと共生しながらも新しい曲を作っていく、という作業は並大抵なことではないなと思います。

このOut of 紅白ではそんなキャリアと向き合いながら新曲を作り続けているアーティストを多く選出しています。

ミスチルもそんなアーティストであって、数多の代表曲があってもちろん好きだし聴きたいんだけど、それよりもむしろ現在の最新曲を聴かせてほしいしそこで新たな音楽を体験したい。

そう思わせてくれるのは彼らが常にそうした新たな音を探索し続けている気がしているからかなと感じています。

この曲も希望の中の絶望、絶望の中の希望、といいますか、一筋縄ではいかない、すごく生々しい、矛盾している人間の心の在り様を切り取ったような、そんな曲だなと思います。

割とハードな曲ではあるけれど、だからこそ現在の世界情勢にもミクロの僕たちの生活にもリアルにコンタクトできているところもすばらしい。


紅組⑱宇多田ヒカル/Gold〜また逢う日まで〜

(新宿西口を歩く宇多田パイセン。、好き)

昨年の傑作アルバムBADモードを経て、いろいろ始まる40代を迎えた宇多田ヒカルひさびさの(そして2023年唯一の)リリース作品となったGold〜また逢う日まで〜。

映画主題歌というのは良くも悪くも楽曲のイメージが映像と直結されてしまう部分が少なからずあって、自分の頭の中で描きたい曲の像がある時にはノイズというか雑味になってしまうことがあります。

宇多田ヒカルも映画を含めた映像作品のタイアップ曲を数多くリリースしており、そのどれもがかなりのシンクロ率を見せて作品のクオリティをグッと引き立てているのですが、
一度作品を離れた時には完全にその作品の印象が消え去り、楽曲単体として十分に機能し前述したようなリスナー各々に楽曲の像を自由に描かせてくれます。
これはやはり曲の持つ強さに拠るところかなと思っています。

今作もタイアップ作品ではありますが、楽曲としては、BADモードからの流れを継続した、聞いていて徐々に上がってくる昂揚感が心地よい質の高いダンスミュージックに仕上がっています。

来年はデビュー25周年記念のベストアルバム発売とひさびさのライブ開催が決定していますが、こうしたある意味獣のような力のある楽曲たちが今後も生み出されるのかと思うとむしろそっちの方が楽しみだったりします。


白組⑱七尾旅人/未来のこと

1998年デビューのシンガーソングライター、七尾旅人の昨年リリースのアルバムより"未来のこと"。

昔から名前を知っていた彼の音楽に初めて触れたのは2007年リリースのアルバム、911FANTASIAでした。
2001年のアメリカ同時多発テロをテーマに製作されたこの作品は、優しい語り口ながら世界の矛盾と混沌を生々しく歌っていて、恐怖と絶望、ぬくもりと希望、そして戸惑いやモヤモヤとした言葉にならない何か、いろいろな感情が生まれては消え、後にも先にもない音楽体験をしたことを覚えています。

その後も作品ごとにその時その時の世の中の動きや空気感が織り込まれていて、生活に寄り添ったというか、すっと入ってくるので、好きな作品がいくつもあります。

政治的なメッセージが入った曲もあれば、ミニマルなラブソングがあったり、日常を歌った歌が多いのも特徴で、現代のフォークソングというのはこういうものじゃないかな、なんて思ったりします。
ただ"プロテストソング"と呼ばれるにはあまりにも優しすぎて、だからこそ多くの人の耳にきっと届く言葉となっているのだと感じます。

"未来のこと"という曲も優しいメロディと言葉をもっていますが、その先のメッセージを各々がキャッチして考えることができる、そんな曲だなと思います。

今年も国内外で悲しいことや矛盾していること、自分たちの力ではどうにもならないことがたくさんありました。
それでも僕らは毎日を生きているわけで、
一分一秒先を、明日を、未来を、考えながら生きているわけで、
そこにはきっと言葉にすれば"希望"となるであろう何かが常にあるのだろうなと思います。


今日はここまで。次回で終わるかな。


前回はこちら。(Awich/藤井フミヤ/AKB48/NEWS)


次回はこちら。(松田聖子/布施明/由紀さおり/SnowMan/島津亜矢/松崎しげる)

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