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判決期日@札幌地方裁判所 に向けた取材対応のための資料 訴訟のまとめ 思いと感謝

先日から判決期日に向けて取材が始まりました。原告が話した「言葉」や提示した「資料」は、記者の目、フィルターを通じて報道されます。そのため、原告として、この訴訟についてまとめ記事を書くことにしました。

1.原告の思い
 今回の裁判を通じて、性的マイノリティについての人権課題だけでなく、マジョリティ(多数派)とマイノリティ(少数派)の関係性や個人の尊厳、人権について深く考えていただけたらと思います。人は、全ての側面においてマジョリティ、あるいは、マイノリティであるとは限りません。ある側面においてはマイノリティであっても、ある側面においてはマジョリティであるということもあります。例えば、私は性自認や性的指向という面においてはマイノリティですが、日本にルーツを持ち、日本で生まれ育ち、日本国籍をもっている点では、マジョリティでもあります。そういうマジョリティでもある私の生活の中では、意識しなければ、先住民族の方や外国にルーツをもち、日本で生まれ育った方の姿などはほとんど見えてきません。しかし、見えてないということは、いないということではありません。いないと思っている属性をもつ人は、もしかしたら、今、あなたの目の前にいる人かもしれません。あなたの周囲にいる人かもしれません。差別が大きければ大きいほど、当事者は自分のことを日常的に話すことができません。私たちは、もっと想像力をもって人と接する必要があるように思います。また、無関心は差別をする側かしない側か、それとも中立な立場にいるかという問題もあります。無関心でいることは、いじめの問題を想定するとわかりやすいと思います。さらに、個人の尊厳や人権は、マジョリティの「理解(の度合い)」を前提としないと考えています。 そして、公の機関こそが率先して制度を柔軟に解釈・運用し、古い制度を改正し、民間の理解水準を高めていくことが求められると考えます。是非、この裁判に関心をもっていただきたいです。裁判の傍聴をよろしくお願いします。

2.北海道の施策
 北海道人権施策推進基本方針を策定。分野別施策として「性的マイノリティ」を掲げ、性の多様性を理解し認め合う職場づくりについて、冊子を作成し、情報発信している。
北海道環境生活部くらし安全局道民生活課 発行・配布
・にじいろガイドブック~性のあり方の多様性を理解し認め合う職場づくりのために~
・みんなが自分らしく 性の多様性を考える 性的指向・性自認・性別表現
 北海道人権配慮企業登録・紹介制度を創設。「北海道人権施策推進基本方針に掲げる12分野(女性、子ども、高齢者、障がいのある人、アイヌの人たち、外国人、HIV・ハンセン病等の感染者等、犯罪被害者等、犯罪をした人等、性的マイノリティ、インターネットによる人権侵害、その他)に関連する人権配慮の取組を行われている道内企業等を登録し、道がHP等で紹介することにより、人権への配慮が企業の評価や信頼性を高めることへの理解を広げていく制度」としている。

3.訴訟の概要
【提訴】2021年6月9日
  札幌地方裁判所に提訴(令和3年(ワ)第1175号 損害賠償請求事件)

提訴時のプレスリリースに原告が修正を加えたもの
(訴状を提出した後、請求の趣旨減縮申立書を提出している)


3.裁判の経過
【第1回口頭弁論期日】2021年9月6日
 原告から訴状を陳述・証拠を提出

【第2回口頭弁論期日】2021年11月24日
 被告らが第1準備書面を陳述・証拠を提出
【第3回口頭弁論期日】2022年3月7日
 原告から準備書面(1)を陳述・証拠を提出
【第4回口頭弁論期日】2022年6月22日
 原告から準備書面(2)を陳述・証拠を提出、被告ら第2準備書面陳述
【第5回口頭弁論期日】2022年8月31日
 原告から準備書面(3)を陳述
【第6回口頭弁論期日】2022年11月9日
 原告から準備書面(4)準備書面(5)を陳述・証拠を提出、被告ら第3準備書面陳述
【第7回口頭弁論期日】2022年12月26日
 原告から証拠申出書・陳述書提出(原告本人尋問採用)

【第8回口頭弁論期日】2023年5月17日
 原告から準備書面(6)を陳述・証拠を提出、原告本人尋問

【最終準備書面提出】2023年7月13日
 原告から準備書面(7)を提出


4.裁判の争点
<原告まとめ>
①「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性パートナーを持つ職員を含むと認められるか
②国家賠償法による違法であると認められるか
(被告らの故意過失により違法に損害を加えたといえるか)
③憲法14条1項違反、違憲判決がでるか
(「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性パートナーを有する職員を含める解釈をしないことが違憲といえるか)
④損害賠償が認められるか

~参考~
・国家賠償法1条1項「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」

・憲法第14条1項 「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」

<弁護団まとめ>
第0 国家賠償法上の「違法の判断枠組み」をどのように考えるか
第1 被告らが本件届出1~3を認定不可と決定したことは国家賠償法上「違法」か否か(下記⑴⑵をともに満たした場合に「違法」と認定され得る)
⑴ 本件各規定の「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性パートナーを有す
る職員を含める解釈が可能か否か
⑵ (⑴につき可能と認定されることを前提として)本件各規定の「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性パートナーを有する職員を含める解釈をすべきか否か(この争点の中で、本件各規定の「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性パートナーを有する職員を含める解釈をしないことが憲法14条1項に違反するかが問題となり得ます)
第2 (第1で違法と認定されることを前提に)被告らの行為に故意過失が認められるか
第3 (第1及び第2がともに認定されることを前提に)原告に生じた損害の内容及び因果関係

まず、第0の争点は、純粋な法律論ですので、あまり気にしなくても結構です。簡単に説明すると、どのような場合に国家賠償法上「違法」と判断されるのかについて、判断枠組みがいくつかあるところ、弁護団は緩やかな枠組み(違法と判断されやすい枠組み)で判断せよと主張し、被告らは厳格な枠組み(違法と判断されにくい枠組み)で判断せよと主張しており、どのような判断枠組みを採用するかという点が1つ争点となっています。

第0を置いておくと、本件の争点は大きく第1、第2、第3の3つに分けられ、第1の争点はさらに⑴⑵の2つの争点に分けることができます。
注意していただきたいのは、これらの争点は、必ずしも全部について判断が示されるとは限らないことです。
例えば、仮に第1の争点に関して、「違法ではない」という認定になった場合、第2と第3の争点には一切触れられずに棄却判決がなされることになります。
また、第1の争点の中の⑴の争点に関して「『事実上婚姻関係と同様の事情にある者』に同性パートナーを有する職員を含める解釈は不可能」と判断された場合は、⑵の争点について判断することなく(つまり、憲法14条1項に違反するか否かは触れられないまま)棄却判決がなされることになります。

すなわち、裁判所が憲法14条1項に違反するか否かを判断する場合とは、少なくとも第1⑴の争点について、「可能」と判断した場合ということになります。「少なくとも」と書いたのは、仮に裁判所が第1⑴の争点について、「可能」と判断した場合でも、⑵の争点の判断において、特に憲法論に言及することなく、「『事実上婚姻関係と同様の事情にある者』に同性パートナーを有する職員を含める解釈をすべきとはいえない」として請求棄却判決をする可能性もあるからです。

5.提訴までの経過
届出から退職までの流れ


6.サポート
 さまざまな形でのサポートに感謝申し上げます。
・元道職員SOGIハラ訴訟提訴までにサポートしてくださったみなさま
・元道職員SOGIハラ訴訟に関心を寄せ、傍聴や報告会にお越しいただいたみなさま
・元道職員SOGIハラ訴訟に関心を寄せ、カンパしてくださったみなさま
・元道職員SOGIハラ訴訟に関心を寄せ、報道してくださったみなさま

ご協力いただいた団体及び個人の方(順不同)

①同性パートナーの権利を求める会(現在は活動終了)
情報開示請求や北海道議会への請願に協力してもらいました。

原告が被告らに提出した要望書が北海道の公文書として存在することを証明するもの
原告が被告らに提出した要望書について検討した公文書が北海道に存在しないことを証明するもの
同性パートナーの権利を求める会による北海道議会への請願

②札幌地域労働組合
チラシ配布など多大なご協力をいただきました。

③斎藤規和社会福祉士(株式会社シムス代表取締役)
広報誌に訴訟の記事を書いていただくなど多大なご協力をいただきました。

④SOGI-Mamii’s
チラシ配布など多大なご協力をいただきました。ラジオ出演の機会もいただきました。

⑤なるべさ!ALLY
札幌LGBTQ映画祭2022及び2023で元道職員SOGIハラ訴訟への支援を表明していだたきました。原告や弁護団が後援という形で協力させていただきました。

⑥北海道社会福祉士会
「性的指向及び性自認を理由とする差別に反対する声明」を発出していただきました。

⑦出口真紀子教授(上智大学外国語学部英語学科) 
提訴の際、記者会見原稿に、ご意見、ご感想、ご助言をいただきました。

⑧先住民族アイヌの方・在日コリアンの方
マジョリティとマイノリティの関係性について考える機会をいただきました。

⑨MARRIAGE FOR ALL JAPAN 結婚の自由をすべての人に



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