ただただ、しいたけステーキ。
飲み屋に行って、まず何飲もうか、何食べようかと受け取ったおしぼりでフキフキしながら考える。
いろいろ考えた末、決まって未知を開拓しようと試みる、そういう私が頼んだのはしいたけステーキだ。
この世界には、しいたけステーキというものがあって、
想像できるように、こう、なんというか、
しみじみ旨いのだ。そう、噛んだ分だけ旨い。
「まずは、じくを取りまして、
フライパンにしいたけ並べます。
多分、油をひいたなら、さっと炒めて出来上がり。大事なことはこれからで、
プチプチ食感醤油麹で味付けて、白ごま小ねぎ振りかけたなら、美味しいステーキ出来上がり。」
はい、「みそ、みそみそ手前みそ。」
というように、しいたけステーキをしみじみ、
日本酒をしみじみ。
BGMは「てまえみそのうた」で頂くのだ。
しいたけステーキの様な地味すぎる絵面が広がるカウンターを大切な人と2人で愛でることができるのは、激動のSNS時代においても幸せなのだ。
しいたけステーキをかみ締めると、口いっぱいではおさまりが効かないほど広がるしいたけの旨みと、味の決め手ともいえる醤油麹の奥深さは、例えるならば、約14時間ほどのフライトを終えてキャリーを引きつれ向かったホテルのふかふかベッドみたいなもので、体内に染み入る何かがあるのだ。
普段の生活におけるしいたけは、なんというか、しいたけ以上しいたけ未満であるのに、しいたけステーキとなったらそれはもうちょっとした宇宙なんだと思う。
中心部の飾りとして切り込まれたバッテンは、さながらアンドロメダ大星雲であり、ちりばめられた白ゴマ、小ねぎ、醤油麹の麦は、大小さまざまな星星なのである。
今尚広がり続ける宇宙と口の中を満たし広がるしいたけステーキ。
しいたけステーキを愛でる時間は、神様からの贈り物。
日本酒が日々の疲れを癒し、しいたけステーキとともに明日に向かって一歩を踏み出す私なのだ。
しいたけステーキを飾り付ける必要は無い。
日々を飾り付ける必要が無いことと同じで。
一人淡々と、ヘラヘラしながら愛でればよい。
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