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徒然なる雑感

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「ことば」に関するあれこれ
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記事一覧

【徒然なる雑感】10.「ヤンバルオオフトミミズ」は「犯人」か「立役者」か

【徒然なる雑感】10.「ヤンバルオオフトミミズ」は「犯人」か「立役者」か

本日(もう昨日だけど)、ユネスコにより、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が世界自然遺産に登録されることが決定した。世界的にも希少な亜熱帯の森に、数多くの固有種が生息する生物多様性を評価した、とのことである。沖縄本島北部の山原地域は「ヤンバル」の名で親しまれ、広大な森が広がっている。「ヤンバル」の名を冠したヤンバルクイナやノグチゲラは有名だが、そのほかにもヤンバルオオヒメコウモリやオキナ

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【徒然なる雑感】9.為政者とことば

【徒然なる雑感】9.為政者とことば

 ワクチンを担当する河野大臣は、全国知事会との意見交換の場でワクチンの供給量が減ったことなどについて謝罪しました。出席者からは「はしごを外され混乱している」などの声が上がりました。
 「なかなか、このままのペースを維持できないということで、はしごを外した形になってしまいまして、大変申し訳なく思っております」(河野太郎 行革相)
 「予防接種に全力を挙げていたところ、はしごを外され混乱をしている。こ

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【徒然なる雑感】8.髙良朱香音「あなたがあの時」(沖縄全戦没者追悼式*平和の詩)に寄せて

下まぶたが熱を帯びて画面がにじんだ。

高良朱香音さんの詩「あなたがあの時」は、ことばの力強さと詩の叙情性とを持って迫ってくる。

 まず、構成が巧みである。「ガマ」を詩の展開場面に活用し、「ガマ」の描写で大きく3つに分かれる。
1)「ガマ」(現代から戦争時へ)⇒戦争当時の状況描写
 時は現代、「ガマ」で行われたであろう戦争の追体験の場面から始まる。続く、2、3、4連で戦争時のことが描かれる、「あ

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【徒然なる雑感】7.「後悔するようになればいい」

最近、思うこと。
政治家さんの言葉が荒れてませんか?某知事さんの残念なご発言はなかなかの失言レベルだなと思う。ということで、非常勤先の授業「日本語文章作法」のネタにさせてもらおうと思う。残念なご発言を添削しよう!と銘打って。そもそも「後悔するようになればいい」という言葉遣いに違和感がある。「後悔するようになる」という表現は、他人の感情を操作する物言いである。例文「私に謝らなかったことを彼らは後悔す

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【徒然なる雑感】6.「大ママ」という呼び方

https://www.nhk.or.jp/music/s-oto/425452.html

KOHHさんというアーティストをNHKの「シブヤノオト」で知った。ラップ形式というのはあまり好んで聞くジャンルではないけれど、彼の歌にはなんだか引き込まれてしまった。カリスマと言われるのも納得。ラップ形式だけど、いわるゆラップのような感じではなくて、彼自身が感じたことを素直にことばにしてるという感じで、た

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【徒然なる雑感】5.「かわいい」と「素敵」

今年の卒論で、SNSを中心に「かわいい」という語の使用について研究したものがあった。「かわいい」が空間の形容として積極的に使われているのがSNSにおける「かわいい」の使用の特徴の1つとして結論付けていた。「かわいい部屋」「かわいいカフェ」「かわいい庭」(「部屋、かわいい♡」という形でももちろんあり◯)とかのように空間を「かわいい」で形容することってわりとありそうな気がしていたけど、コーパスの検索で

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【徒然なる雑感】4.鳴かぬなら…

【徒然なる雑感】4.鳴かぬなら…

新型コロナウィルスが世界的に蔓延し、もはやパンデミック。日本でも突然学校が休校になったり、デマでトイレットペーパー争奪戦が繰り広げられたりして、日常生活ももはやプチパニック。ちなみに、我が家のトイレットペーパーの在庫は2ロールです(涙)もしものときはどなたかお恵みをー。

そのような状況下、本学の卒業式は取り止めとなりました。卒業式取り止めのメールが届いて数時間後、4年生3人が研究室へやって来まし

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【徒然なる雑感】3.映画と研究と教育とー2月10日の気付きー

【徒然なる雑感】3.映画と研究と教育とー2月10日の気付きー

ポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」がアカデミー賞を受賞したニュースが話題ですね。映画はほんとに面白かったです。たぶん、今年はこれ以上の作品は見られないのではないかと思うくらい、最高のエンターテインメントにして様々な現代の問題を提起する社会的作品でもあります。それにしても、外国語映画でありながら、というか、アメリカ資本が入っていない作品がアカデミー賞を、しかも作品賞、監督賞を受賞するとい

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【徒然なる雑感】2.ミクロとしての研究思考とマクロとしてのエッセイ思考

 この【徒然なる雑感】には、ことばをもとにしたエッセイを中心に書いていくつもりです。この【徒然なる雑感】の位置づけは、「マクロとしてのエッセイ思考」を実験的に書き綴る場として自分のなかでは位置づけています。

 まず、「ミクロとしての研究思考」ということにおいて、私が意味するところは、言語の仕組みや本質を言語資料やデータ、言語理論をとおして「研究」することに他なりません。つまり、研究で得られた言語

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【徒然なる雑感】1.感情は破壊と創造の源である

【徒然なる雑感】1.感情は破壊と創造の源である

 この数年、なぜ自分が文法を研究しているのかということをなんとはなしに考えることがあります。結局のところ、「好きだから」という結論にいつも至るのですが。しかし、先日、5月1日の令和の始まりの日はちょっと違いました。朝ごはんのあと、食器を洗いながら、ふと「なぜ文法を研究しているのだろう。」と考えはじめ、さらに思考は展開して、「文法とは?文法のおもしろさってなんだろう?」と考え始めていました。「なぜこ

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