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銀河皇帝のいない八月 ①
プロローグ
木星軌道に星百合が咲いた。
巨大な百合の花の形をした、無機鉱物のような物質からなる何か……
しかしそれは生きている。
生物なのだ。
星百合はあるとき忽然と宇宙のどこかに咲き現れ、星々の間に道をつくる。
ほどなく、その道のゲートとなる空間の歪みが、衛星カリストのすぐそばで発生した。そこから小さな光が飛び出し、亜光速で木星圏を脱すると太陽の方へと進路を取った。
数時間後
銀河皇帝のいない八月 ⑦
10. 東京消滅
ネープがトリガーボタンを引くと同時に、あたりを白い閃光が包んだ。
そして静寂が訪れた。
風は止み、スター・コルベットを中心とした小さな空間は安定した空気に包まれていた。
が、その外は嵐だった。
白く輝く嵐が渦巻き、何もかもを消し去るように吹き飛ばしていた。
四階建ての校舎も、その周りに建つビル群も、白い闇に呑み込まれ消えていった。
世界そのものをジューサーミキサー