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社会思想史①マキャヴェリ

○『君主論』
・人間を3種類に分ける。
①政治権力で支配する君主
②支配を補佐する廷臣、官僚
③支配される一般民衆
これらの人々は皆「自己利益」と「名誉・権力」の追求を目的に行動する。「理想」と「現実」を区別し、プラトンのような「理想」で「現実」を理解するな。道徳にとって「善い」「悪い」を無視するのが現実の人間である。

・目的のためには徹底して合理的な手段を使え。(これが本当の「マキャベリズム」)

・現実の政治における人間は「恩知らず」で「厚かましい」裏切り者である。ならば、愛されるよりも恐れられた方がよい。

・君主は普段、法律に従って国を納め、国が機能不全になったら法を犯して能力を発揮するのが好ましい。

・君主は緊急時において徳(ヴィルトゥ)が必要となる。ヴィルトゥは高度な状況認識力、正確な判断力、大胆な決断力である。
闘争には2つの方法がある。1つ目は人間に対する「法」であり、2つ目が野獣に対する「力(武力)」である。「どちらを行使するか」を先に挙げたヴィルトゥによって判断するのが君主の役割だ。
もしかしたら運命(フォルトゥナ)が行手を阻むかもしれない。だが、そんなものはヴィルトゥで吹き飛ばしてしまえ。

○『ディスコルシ』
・なぜローマはあんなに長く続いたのか。その要因はは政治体制にある。ローマは自由だから政治が安定し、経済が繁栄した。なぜ自由かというと共和制だったからである。また、スパルタを見るに、君主制、貴族制、民主制が同時に存在している状態が最も安定する。そして、その政治体制においても徳(ヴィルトゥ)が必要になる。

・なぜ共和制は腐るのか。それは、君主や政治家などの「徳」が腐り、国民の「徳」が腐るからだ。「徳」とは公共のためになる判断であるが、自分のことしか考えなくなってしまうと共和制は崩壊する。では、なぜ自分のことしか考えられなくなてしまうのか。それは「国民としての意識」(ナショナリズム)がない傭兵の投入と政治的・経済的秩序の腐敗による富の不平等格差が原因だ。

○マキャヴェリ思想の分析
マックスウェーバーが分類した「人々が自発的に従属するパターン」(人々が納得できる支配)で見てみる。
それは
①合法的支配(法律があるから支配されても納得できる)
②伝統的支配(昔からあるから支配されても納得できる)
③カリスマ的支配(神のような人間を超えた存在だから支配されても納得できる)
これにマキャヴェリ思想を当てはめてみると、①合法的支配と③カリスマ的支配に当てはまる。なぜなら、彼は君主は普段、法律に従って統治を行い、緊急時には法律を無視しても徳(ヴィルトゥ)を発揮して(武力を使って)ことの対処にあたるべきだと主張しているからだ。ここに一般的なマキャヴェリのイメージとズレがある。

○マキャヴェリ思想の問題点
彼が言う「自己利益の追求」とは「自由の獲得と、公共の利益につながる政治的権力と名誉の追求」である。(ちょっと現実とは違っている?)

参考文献
坂本達哉(2021)『社会思想の歴史』名古屋大学出版会

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