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【古代ギリシャ語の効用の話つづき】カエサル(Καίσαρ)のものはカエサルに返せ!ギリシャ語の文中では名詞も形を変えざるを得ない話

英語をやっていた人が、そのまま古代ギリシャ語の世界に入った時にブットぶのが、「動詞ばかりでなく、形容詞も冠詞も、そもそも名詞も活用変化する」というところではないでしょうか?

英語では、たとえば犬を表す「DOG」が、文中のどこに出現するかによってDOGAになったりDOGIになったりDOGONになったりするなんてことは、考えられませんよね?ギリシャ語では、これが起こるのです。よって名詞の活用変化もまる暗記しないといけません

などということを本気でやるのは大変なので、あくまで雑学として、新約聖書に登場する「カエサルのものはカエサルに」という有名な言葉を、原文の古代ギリシャ語で読んでみましょう(この言葉の背景は前回の記事でちょっと解説しています)。

「カエサルのものはカエサルに」

の原文は、

Τὰ Καίσαρος ἀπόδοτε Καίσαρι(タ カエサロス アポドーテ カエサリー)

です。

古代ローマの皇帝たる「カエサル」の名前が、原文のギリシャ語の中で「カエサロス」「カエサリー」と変化しているのが見えやすい文ですね

もっと詳しく説明すると、カエサロスは属格、カエサリーは与格を表しています。属格の「カエサロス」は、英語でいう「of Caesar」、カエサリーは英語でいう「to Caesar」となります。日本語でいう「てにをは」が、ギリシャ語では名詞そのものの変形で表現されるのですね

Τὰが「もの」、ἀπόδοτεは「返す」なので、この言葉の日本語訳は「カエサルのものはカエサルに返せ」となります

で、今日の話題について、私がどうしても言いたいこと。この新約聖書の名セリフ、日本語にしたときに、キャッチコピーのような格好良さが出ていると思いませんか?

もちろんそれは、日本語にしたとき「カエサル」と「返せ」が微妙にダジャレっぽく響き合うというまったくの偶然のおかげなのですが(!)、こういうところ、コトバのもつ偶然というものは実に面白いところですね。

「カエサルのものはカエサルに返せ」となんとなく繰り返すようになってしまうゴロのよさは、「名詞を文脈に応じて変えざるを得ない」というメンドウさを跳ね返せるだけのオモシロサをもつ名例文として、そのまま暗記すると便利なものと、つくづく思い返すのでした。

遠い古代からオモシロい言葉遊びネタをありがとう、カエサル!

子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!