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【古代中世言語好きがオススメする歴史漫画(2)】『アレクサンドロス』のコンプレックスをちくちく突く「残酷描写」は古代世界の描写として正しいと思う話

古代ギリシア語などに埋没している私は、当然、古代ギリシア世界が好きなわけです。かといって古代ギリシアに生まれ変わりたいとは絶対に思いません

だって、いかに古代世界が現代の私たちを魅惑する哲学や文学芸術に満ちていたとしても、彼らの実生活のほうは、現代人の我々の価値観からすると、とうていついていけない「陰湿さ」「残酷さ」に満ちていたことでしょうから。

戦争は当たり前。奴隷も当たり前。旅に出ることは強盗や誘拐に会うリスクと隣り合わせ。経済的な理由による赤ちゃん殺しや老親殺しも当たり前

そんな古代世界を描く筆致において、とことん「陰湿」「残酷」なトコロを正しく突いてくる(!)のが、ガンダムのキャラクターデザインでも有名な安彦良和先生の『アレクサンドロス』です。

題名のとおり、古代ギリシア世界の英雄アレクサンドロス大王を主人公にした伝記漫画なのですが、

(未遂とはいえ)父親殺しあり
(間接的描写とはいえ)赤ちゃん殺しあり
不条理な部下殺しが後半になるほど連発
ついには酒飲みの場の諍いによるしょうもない殺傷事件もあり

などなど、「こんな世界に絶対に生きたくない」と現代日本の清純な私たちに思わせてくれるに十分な(!)、陰湿きわまりない愛憎劇が描かれます。

安彦良和先生は、コンプレックスへの反動から立ち上がってくるヒーローを描くのがとても巧い方ですが、世界史の英雄アレクサンドロス大王もこの筆致の餌食。

直接明示されているわけではないのですが、アレクサンドロスの心理描写では、歪んだエディプスコンプレックス(母への愛と父への憎悪)がほのめかされ、

ペルセポリスでの無意味な殺戮や破壊行為も、そのコンプレックスに火をつけてしまう事件が直前にあったから、と解釈されています。

コンプレックスをチクチクとついてくる英雄物語、というのは描写としてとてもリアルであり、そのような「英雄」が通り過ぎた後で行われる残酷描写もまたリアルであり、

古代の英雄事業というのは実際にはこんな感じに周囲には見えていたのではないか、と思わせてくれるリアリティなのでした。

それにしても、、、アレクサンドロスにせよナポレオンにせよ、どうして若いうちに空前の成功を収めた人物というものは、けっきょくは無謀な事業に突入して自分自身も自分の部下たちも滅亡に追いやってしまうことになるのでしょうか?

でも、それってひょっとしたら現代の企業文化でも、起こっていることかもしれないですね。

若いうちにあまりに成功してしまった企業の社長が、あまりにも長く独裁体制を敷きすぎると、、、ウーム、たしかに、よくあるケース

人間世界の構造というのは古代から、そんなに変わっていないということなのかもしれません。

くわばらくわばら、、、。

子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!