フェンシング界賞賛記事のウラ側

本日、東洋経済オンラインで、フェンシング協会会長の太田雄貴さんの改革への挑戦を書いた記事が公開された。

もはや結果論でしかないのだが、多くの人に記事が届き、一石を投じるという、マスメディアに記事を書くことの役割を果たすことができたのは、僕にとって大きな成果だった。

では、なぜ、僕の書いた記事は、ヤフートップに掲載されたのだろうか?

また、なぜ、僕の書いた記事は、SNSでバズったのだろうか?

以下に、僕が工夫した点について、備忘録も兼ねて書き記しておくことにする。

すでに流通していた太田雄貴さんの記事

2017年の8月に、太田さんが日本フェンシング協会の会長に就任して以来、フェンシング界は、数多くの改革を推し進めてきた。また、自らもスポーツ媒体で執筆するなどしており、フェンシング協会の取り組みに関する情報は、大量に流通していた。さらに、つい先日の10月4日には、ビズリーチで、フェンシング協会内の人材を募集するというプレスリリースが流れ、ここでも数多くのメディアがこのことを報じた。正直なところ、個人的には、出遅れた感もあり、どんな内容の記事を書くのかは、大きな悩みのタネだった。

とはいえ、二番煎じ三番煎じの記事を書くのでは、意味はない。どうしてもそれだけは避けなければならなかった。

得意な分野で勝負

確かに、太田さんの取材が終わったとき、非常に面白い話が聞けたという手応えはあった。記事の中にもあったような協会の組織運営の話や、集客・マーケティングの話など、約1時間に渡り、事細かに話を聞くことができた。こちらが聞きたい話を聞くことができたという意味では、以前、フットサル連盟の小倉純二会長を取材した時とは、全く異なる手応えを感じていた。

だからこそ、今回、太田さんから聞いた話を、どう記事として料理し、マスメディアに載せるかは、編集者とライターの腕の見せ所であり、戦略を伴う共同作業でもあった。

取材を終えた後に、コーヒーを飲みながら打ち合わせをし、記事の構成を検討している中で、編集者から言われた決定的な言葉があった。それは、

瀬川さんにしか書けないことを書いて欲しい

という言葉だった。

この時、僕が最も得意とする、「イベント」「チケッティング」「マーケティング」「集客」というキーワードで勝負することが決まった。他の媒体では、深く言及されていなかったのも、運が良かったのかもしれない。

多くの人に有益であること

もう一つ、意識したことがあった。それは、フェンシングに興味がある人はもちろん、それ以外のスポーツに関わる人、さらには、スポーツに興味のない人にとっても、有益な情報を届けるということだった。

このため、僕は、太田さんの取材で得た情報の中で、多くのスポーツ競技団体に共通する課題・ビジネスマンにも通ずる課題を抽出し、太田会長が推し進めるフェンシング界の改革を例にして書くことにした。

こうして僕は、既出の情報との差別化を図りながらも、フェンシング界の改革という題材を通じて、他の競技団体の人やビジネスマンが自分の環境に置き換えて読むことができる記事に仕上げることを意識したのだった。

世の中に問いたかった本音を盛り込む

太田さんは、取材中、フェンシング協会の会長に就任してから1年強が経つが、今まで行ってきた施策は、どれも「どストレート」「王道」だと言っていた。確かに、言われてみれば、太田さんの施策は、どれもビジネス界では当たり前と言われることを行なっているだけだ。

では、なぜ、ビジネス界では王道のことをスポーツ界でやると話題になってしまうのか?

なぜ、他のスポーツ競技団体では、王道の施策を行うことができないのか?

なぜ、スポーツ界で働きたいという人は沢山いるのに、人が受け入れられないのか?

それらを世の中に問いたかったのだ。

今まで、国からの補助金は、強いことやメダルを取ることが条件で交付されてきた。強ければ、国からお金がおり、それが協会組織の運営費に使われてきた。フェンシング界は、太田会長が選手時代に、北京、ロンドンと2大会連続でメダルを獲得したことで、協会の予算規模は一気に増えた。2011年度に3億6000万円だった支出は、2017年度には7億円超にまで跳ね上がっているという。

だが、この状況は、最も危険な状況といえた。2020年以後はスポンサー収入も国からの補助金も減ることが予想され、選手強化や普及育成、大会運営などの競技団体全体の運営は、2020年以降、今までと同じやり方では通用しなくなるからだ。

だが、残念ながら、強化至上主義・勝利至上主義が蔓延する日本のスポーツ競技団体の施策は、我々、草の根レベルにまで浸透している。僕はそれを、自分が関わっているジュニアサッカーの世界の現実から知った。

だから、この記事では、強化一辺倒の組織運営や、ビジネスパーソンを受け入れず閉鎖的なムラ社会を形成し続けようとするスポーツ界への問題提起の意味を込めたつもりだ。

今は、2020年を前に、スポーツ界が膿を出すとても重要な時期だ。一時的には、大きな打撃を受けたと思われる、アメフトや体操、レスリングやアマチュアボクシング界も、未来へ向けて、絶対に通らなければならない出来事だったと言える時が来るだろう。

その膿を出さずに、今隠し通したら、その団体は、ずっと体質は変わらない。いずれ人材は流出し、運営が回らなくなり、その競技は淘汰されてしまうだろう。

そんな危機感を持った方々が、議論をまき起こし、問題意識を表に出していくことが、チャレンジの第一歩だと僕は思う。

この記事は、フェンシング界の改革の挑戦を書いているが、裏には、他の競技団体への痛烈な批判があると思っていただいて構わない

変わるチャンスは今しかないのだ。

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瀬川 泰祐

取材者の心絵(ココロエ)

東洋経済オンラインやOCEANS、AlpenGroupMagazine、キングギア などの媒体に寄稿しているスポーツライター、瀬川泰祐が取材・執筆活動の中で、日々感じている取材からの学びを書き留める。
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