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冬の月 《詩》

「冬の月」

死がふたりを分かつまでは…

そんな言葉を何処かで聞いた


冷気を含んだ丘からの風が
僕の前髪を揺らす 

空は灰色の雲に覆われ

静かに雨が降り始めた

大きくて白い冬の月を見たのは

いったい いつだったろう 

思い出せない

僕は

其の小説を書きあげてはならない

其れは未完成で無くてはならない

姿形を持たない

観念的な象徴の中にだけ

物語は生きている


其れを具現化する事は出来ない

文字に起こし

表記し伝えられるものでは無い


そして自分自身の投影は

危険を含んでいる事も知っていた

僕等は閉ざされた
環の中で結び付いている

死がふたりを分かつまでは…

お前は其れを信じた方が良い 

神様はそう言った

風は止んだか 雨は止んだか

神様の声が聞こえた 

もう時間だ 

時が動き始める

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