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ロマンス 《詩》

「ロマンス」

僕は鏡を見つめていた 

其処には

何も映し出されてはいない

空白があるだけだった


感覚が麻痺している訳でもない

混乱や戸惑いもなく 

今を成立させる

基準や理論を探してた


自分自身が捉えた感覚を
適切に言葉に置き換える

その事だけに注力していた

それが僕の証を残す事が出来る

唯一の方法だったからだ


不均一で不可解な
空白と短い語彙で綴られた言葉


形作られた詩は砂時計の砂の様に

流れ落ちていく 

重ね合わされた沈黙が

音も無く鏡の向こう側から

僕を見ていた

本来なら僕が
属して居なくてはならない

世界の事を思った 

社会と呼ばれる枠組みだ


僕はただ安らかな眠りを求めていた

静かな湖面に浮かんだ

花びらが揺れている

それは孤独に寄り添う 

あの人の
淡い口紅の色を思い出させた


ふたつの世界を結ぶ

回線が存在している

其処にあるそれぞれの個別の時間

僕は中立を保つ為にまたペンを取る


もう君を元には戻せない

そして僕も元には戻れない


全ては途切れる事無く
繋がり連動している

誰かが其れをロマンスと呼んだ


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