Sudden Fiction 超短編小説70

書影

70の超短編小説で450ページぐらいだから平均6~7ページぐらいの話となる。

意味不明なものもけっこう多かったが、予想以上におもろいのも多かった。10あげてみます。(数字はランキングではなく掲載順で、最後のpはページ数)

① ジャズの王様(ドナルド・バーセルミ)※村上訳 9p
② 再会(ジョン・チーヴァー)※村上訳 7p
③ ファイヴ・アイヴス(ロイ・ブラウント・ジュニア)※村上訳 12p
④ 寓話(ロバート・フォックス)※小川訳 6p
⑤ 生活の中の力学(レイモンド・カーヴァー)※村上訳 4p
⑥ 犬の生活(マーク・ストランド)※村上訳 8p
⑦ 欲望の分析(ジョン・ルルー)※村上訳 10p
⑧ 同窓生近況(ルーカス・クーパー)※村上訳 10p
⑨ お得意様へ(チェット・ウィリアムソン)※小川訳 7p
⑩ 光の速度(パット・ルーシン)※村上訳 11p

こうして見てみると村上訳が多い。3つ4つ同じ訳者が続いて交代という展開が多いけれど、訳し方でどちらがすぐ訳したのかわかってくる。あぁ、きっとこれ訳者によって違うんだろうなぁ…とも感じつつ。やっぱ村上春樹訳は読みやすい。ヴォイスがヴィークルでドライヴしてる。

上の10から強いて最高作といえばチーヴァーとカーヴァーのやつ。ちなみにこの2人は親交も深かったようで「チーカーの仲」とさえ囁かれた(うそです)。とにかくチーヴァーの「再会」はめちゃおもろい!これは短篇集「巨大なラジオ/泳ぐ人」にも収録されてます。カーヴァーのやつは…最後…ズバっと…かっこいい…。必読。

カーヴァーのが異色として、⑦と⑩以外はたいへんおかしくて、笑える話です。ストランドの「犬の生活」は、同じ訳者がストランドの短篇集を「犬の人生」として訳しているけれどこれは本当に傑作。「生活」が「人生」に変わってるけどその気持ちが痛いほどわかる。マーク・ストランド、天才。

「ジャズの王様」はユーモアと執拗な比喩の連続。
「ファイヴ・アイヴス」も傑作ですよ。バビブベボ行が発音できないやつが出てきて、野球の話なんだけど、バントがいちいちマントになって、牧師が目視になるんだから、たまげるよ。これは必読。

「寓話」もすごくいい。勢いで結婚申し込む話、電車の中で。お母さんのノリもいいんだってば。肯定に肯定を次ぐ肯定。これ読むだけでもこれ買う価値あります。(Amazon古本で送料こみ400円までで今なら買えます)

「光の速度」だけちょっと教訓めいた話になるのかな。

最後に。巻末あたりのグレイス・ペイリーの言葉(小説ではない)をご紹介します。

 真実を述べるなら、とても短い小説を人々はなぜか恐れるようです。ちょうど長い詩を恐れるのと同じようにです。
 短編小説は長編小説よりは詩のほうにより近いし(これは何百万回となく私が言ってきたことですが)、それが一ページとか二ページとか二ページ半とかの長さである場合には、それは詩のように読まれなくてはならないのです。つまりゆっくり、ということです。飛ばし読みの好きな人も、三ページの小説を飛ばし読みすることはできないでしょう。

(書影は https://www.amazon.co.jp より拝借いたしました)

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