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あなたは、そのままでいいんだよ

世の中は厳しすぎる。 と、ときどき思う。 すぐに批判する人がいて、すぐに怒る人がいて、すぐに笑う人がいて、すぐにバカにする人がいる。 頑張っても頑張っても、まだまだ、まだまだ、と何かに追い立てられる。 周りを見渡せばみんな頑張っている。 みんな自分なりに苦しんで、悩んで、戦って、そうして頑張っている。 なのに、聞こえてくる声は厳しいものばかり。 「そんなのは頑張っているとはいわない」 「甘えてるだけだ」 「みんなやっていることだ」 だから頑張る、もっと頑張る。 そ

    • 好き嫌い好き

      この前読んだ本が個人的にあまり面白くなかった。 それは海外の小説を日本語に訳したものだったのだけれど、わかりにくくてイマイチ頭に入ってこなかった。 だけど、その本は小説として世界的に絶賛されている本だ。 たくさんの人が素晴らしいと認め、高い評価を受けている本だ。 逆のパターンもある。 自分がすごく面白いと思った小説があった。 しかし、世間的にはそれは酷評を受けていた。 そんなときに「ふーん」と思えればいいのだけれど、なかなかそうもいかない。 ぼくは、心のどこかで「自分

      • 雨が降れば傘をさして、疲れたら雨宿りをして

        雨。 じめじめするし、カビの心配が増えるし、洗濯物は外に干せなくなるし、自転車には乗れなくなるし、髪の毛は爆発するし、靴の中にまで水が染みる。道は混むし、電車やバスが混むこともある。 これから梅雨の季節だから、そういった日々が続くだろう。 でも、ぼくは雨の日が割と好きだ。 雨がアスファルトを叩く音。車が通るときに水を跳ねる音。傘を叩く音。 雨に濡れる花。地面に張り付いた落ち葉。電線から落ちる水滴。 傘をさして歩く人。水たまりにはしゃぐ子供たち。普段より静かな町。それから

        • 自分の意見を自分で否定して。自分の心を自分で否定して。

          ぼくは文章を書くのが好きだ。 ある日、思いついたことがあり、その気分のまま勢いにのって、ひとつの文章を書き上げた。 そうして、できあがった文章は誤字脱字もあり、表現も拙い部分ある荒削りの文章であった。 しかし、ぼくは満足感を感じた。自分の意見をまっすぐにその文章に載せて書いたことを誇らしく思った。 少し時間を置いてその文章を自分で読み返してみる。 ここはこう書いた方がいいな、ここはこの表現の方がいいな。 そうやって少しずつ修正をしていく。 しかし、そのうちこのような考えが

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        • エッセイ
          13本
        • 日常会話
          25本
        • 物語
          9本

        記事

          ゲームの中ですら先のことばかり考えて今を楽しめない人生なんて

           ぼくはゲームが好きだ。  RPG、いわゆるロールプレイングゲームなんかは特に好きで、新しい発見があったり、仲間が増えたり、主人公のレベルが上がったり、レアなアイテムが手に入ったり、とても楽しい。  最近のゲームはボリュームもあり、世界観やキャラクターの作り込みが凄いこともあって、とにかく没入感が高いものが多い。  ゲームの世界を実際に冒険しているような体験ができる。  主人公を操作するぼくは、その世界で謎を解き明かすべく、あるいは世界を救うべく日々敵と戦いを繰り広げる。

          ゲームの中ですら先のことばかり考えて今を楽しめない人生なんて

          だから今日もぼくはノロノロと下を向いて歩く

           散歩をしているぼくの前をスーツをビシッと着こなした男性が歩いている。年齢は30代後半くらいだろうか。少し日焼けした肌に、刈り上げた襟足、ワックスで濡れたようにもみえる髪の毛にはパーマがあてられている。身につけているスーツや手に握られている鞄は高級そうにみえる。  彼はスマホを耳に当て、誰かと話しながら前をしっかりと見据え、胸を張り一歩一歩力強く進んでいく。  それに対しぼくは、少し寝癖のついたままの頭、寝る時にも履いていたスウェットパンツに首元の伸びたTシャツという格好で

          だから今日もぼくはノロノロと下を向いて歩く

          誰とも話さないでも楽しめるのは才能だ

           こんなことを言われたことがあります。 「もっと外に出て、人と会って話したほうがいいよ」  ぼくは「なるほどな」と思いました。  ぼくにそう言った、その人は、パワフルで活動的でとても魅力的な人です。  その人は会社などで普段会う人とはまた別に、約束をとりつけて毎日誰かと必ず会うことを自分の中でルールにしているそうです。  飲み会の誘いがあれば、基本的に断らずに出向くことにしているそうです。  ぼくは、やっぱり「なるほどな」って、そう思いました。  だから、そのアドバ

          誰とも話さないでも楽しめるのは才能だ

          【日常会話】特別な普通の一日

          「よし、じゃあ二軒目いこうか」 「いや、俺明日早いし今日はもう帰るわ」 「え?」 「悪いな、また今度」 「え? ……なんで?」 「だから明日仕事早いんだって」 「え? ……なんで?」 「日本語通じねぇのか」 「えーいいじゃん。もう一軒いこうよー」 「また今度、な」 「あ、まって。ほら唐揚げが一個残ってる」 「ん? ああ、そうだな」 「知ってる? これ関西では『遠慮のかたまり』って言うんだって」 「遠慮のかたまり?」 「そう。大皿とかで出てきた料理の

          【日常会話】特別な普通の一日

          【日常会話】どうせ分かってもらえないんでしょ?

          「ハッックション!! うぇぇい!!」 「おお、おお。派手にやってるねぇ」 「ああ……しんどいわ。ああ、もう!」 「きつそうやね。大丈夫?」 「大丈夫じゃねえよ! 鼻水は止まらないし、目は痒いし!」 「大変やねぇ」 「他人事かよ。お前にはどうせこの苦しみは分かんねぇよ! ったくよぉ!」 「うん……まぁ。俺は花粉症じゃないからなぁ。その辛さを分かってやることはできないけど……」 「そうだろ? この常に顔あたりにある不快感が分かんないだろ!? ハックション! うぇ…

          【日常会話】どうせ分かってもらえないんでしょ?

          【小説】もうすぐ、誕生日が終わる

          「かち、かち、かち」   先ほどから、里中明美は時計の秒数が増えるごとに、ひとり声にならないくらいの声量でつぶやいている。時計、といってもデジタル時計なので、実際にその時計から秒針の音がしているわけではない。ただ、明美はその時計を睨みつけ、数字が1つ増えるたびに、その音をひとり勝手につぶやいている。  薄暗い部屋。蛍光灯はついていない。明かりは、テーブルの上に置かれた暖色のオレンジを帯びたランプの光のみだ。フローリングに直に座り込み、明美はスマホを握りしめ、デジタル時計を睨み

          【小説】もうすぐ、誕生日が終わる

          【エッセイ】娘さんを幸せにします……たぶん……

           先日、とある映画を観ていると次のような場面があった。  主人公の男性が結婚の許可を貰いに、付き合っている女性の実家に挨拶に行く、というよくあるシーンだ。    女性の実家は、立派な瓦屋根の平家で、庭も広い。スーツを着込んだ主人公の男性が、緊張の面持ちで玄関に入ると、優しそうで品のある女性の母親が出迎えてくれる。挨拶もそこそこに家にあがると、居間では、神妙な面持ちで、気難しそうな女性の父親があぐらをかいて座っている。母親が4人分のお茶を運んできて、主人公の男性、交際相手の女性

          【エッセイ】娘さんを幸せにします……たぶん……

          【エッセイ】母の手作り弁当

           『母の手作り弁当』  この言葉を聞いて、どのような印象を受けるだろうか。  『母』を『お母さん』に変換すると、いかにも小学生の作文の題名にありそうだ。そしてその作文はきっと「お母さん、いつもありがとう」で締め括られる、感謝の文章だろう。  イメージする画は、子供のために、誰よりも早起きをして、台所で包丁を叩く母の後ろ姿か。どれだけ疲れていても、どれだけ眠たかったとしても、休むことなく、毎朝必ず。学校に行きたくないと、ごねた日も、反抗期で声を荒げてしまった日も、喧嘩した日も

          【エッセイ】母の手作り弁当

          【小説】3回目のデート

           やばい、選曲ミスったかもしれない。  正志はマイクに向かって声を張り、画面に流れる歌詞をなぞるが、意識は完全に美咲の後ろ姿に集中していた。  都内のカラオケボックスはとんでもなく窮屈だ。ソファに並んで座ったときに、液晶画面が右斜め前、いや、もうほぼ右に位置しているので、画面を観るとき、首を右に向けるか、体ごと右を少し向かなくてはならない。曲が始めれば、正志の右隣に座った美咲も必然的に右を向くわけで、そうすると、正志の位置からは、美咲の束ねられた髪と、小刻みに揺れる小ぶりなイ

          【小説】3回目のデート

          ただいま、おかえり、アンサーミー

          「ああ、最近おかえりって言われてないなぁ」 「おかえり?」 「そう。ただいまって言ったら、おかえりって返ってくるって噂の例のアレ」 「お前一人暮らしだもんな」 「そうだよ。暗闇に向かってただいまって言っても、帰ってくるのは静寂だけなんだよ?」 「まぁ、涙拭けよ」 「でさ、ふと思ったんだよね」 「人と人の繋がりの大切さ?」 「“ただいま”と“おかえり”ってセットじゃん?」 「まぁそうだな」 「“いただきます”と“ごちそうさま”もセットじゃん?」 「うん、そ

          ただいま、おかえり、アンサーミー

          何気ない一言

          「何気ない一言が嬉しいことってあるよな」 「何気ない一言?」 「うん」 「半額セールとか?」 「うん違うね」 「ハッピーアワー」 「それも、違うね」 「3連休」 「ううん、違う」 「手数料無料」 「ちげーよ」 「半額セール」 「それ最初に言っただろ、ほんと記憶力悪いな、おまえ」 「でも、全部嬉しいじゃんか」 「いや、嬉しいけどね。そういうことじゃなくて」 「じゃあ、どういうことよ?」 「俺、あんまりお酒が好きじゃないんだけど」 「うん、知って

          何気ない一言

          コミュニケーションで大事なのはリアクションです

          「なぁなぁ、知ってた? 会話で大事なのってリアクションらしいよ」 「リアクション?」 「そう。コミュニケーションが苦手な人でもリアクションさえできてれば、なんとかなるんだって」 「ほんとかよ……。筋金入りのコミュ障をあんまり舐めるなよ?」 「いや、ほんとに。ポイントはちょっと大袈裟かも? ってくらいリアクションをするんだって。そしたら相手は、話を聞いてもらえてるって気分よく話せるらしいよ」 「大袈裟なリアクションねぇ……」 「そうそう。話が苦手なら、相手に喋らせれ

          コミュニケーションで大事なのはリアクションです