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自分の意見を自分で否定して。自分の心を自分で否定して。
ぼくは文章を書くのが好きだ。
ある日、思いついたことがあり、その気分のまま勢いにのって、ひとつの文章を書き上げた。
そうして、できあがった文章は誤字脱字もあり、表現も拙い部分ある荒削りの文章であった。
しかし、ぼくは満足感を感じた。自分の意見をまっすぐにその文章に載せて書いたことを誇らしく思った。
少し時間を置いてその文章を自分で読み返してみる。
ここはこう書いた方がいいな、ここはこの表現の方が
【エッセイ】娘さんを幸せにします……たぶん……
先日、とある映画を観ていると次のような場面があった。
主人公の男性が結婚の許可を貰いに、付き合っている女性の実家に挨拶に行く、というよくあるシーンだ。
女性の実家は、立派な瓦屋根の平家で、庭も広い。スーツを着込んだ主人公の男性が、緊張の面持ちで玄関に入ると、優しそうで品のある女性の母親が出迎えてくれる。挨拶もそこそこに家にあがると、居間では、神妙な面持ちで、気難しそうな女性の父親があぐら
【小説】3回目のデート
やばい、選曲ミスったかもしれない。
正志はマイクに向かって声を張り、画面に流れる歌詞をなぞるが、意識は完全に美咲の後ろ姿に集中していた。
都内のカラオケボックスはとんでもなく窮屈だ。ソファに並んで座ったときに、液晶画面が右斜め前、いや、もうほぼ右に位置しているので、画面を観るとき、首を右に向けるか、体ごと右を少し向かなくてはならない。曲が始めれば、正志の右隣に座った美咲も必然的に右を向くわけ