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"歴史" 系 note まとめ

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2020年7月の記事一覧

鍵盤楽器音楽の歴史(6)印刷楽譜

1455年のグーテンベルク聖書を皮切りに、15世紀後半には印刷出版業が興隆します。当然、印刷された楽譜も出版されるようになります。 最初の出版された鍵盤音楽集は、やはりドイツからで、1512年のアルノルト・シュリック (c. 1460 – after 1521) による『オルガンとリュートのための賛歌とリートのタブラチュア編曲集』("Tabulaturen etlicher Lobgesang und Lidlein uff die Orgel und Lauten") で

「結局、世界の歴史は不正の連続なんじゃないのか?」

#岩波少年文庫70冊チャレンジ #1日目 クラウス・コルドン著, 酒寄進一訳『ベルリン1919 ー赤い水兵 上』(岩波少年文庫, 2020)[1984] 岩波少年文庫70冊チャレンジの1冊目は、今年新しく文庫入りした「ベルリン三部作」の1巻にしました。 この作品は以前理論社から出ていたそうですが、絶版ののち、岩波に移ってきたようです。 労働者階級の少年ヘレの目を通して、敗戦後の市民革命とドイツ帝国の崩壊、そこで闘う人々の姿を描いています。 読みながら、ああ、わたしはこ

ブローデル『地中海世界』ーローマ

紀元前9世紀から7世紀、ラティウム(ローマの周辺)にとって初期鉄器時代から第二次鉄器時代への移行の時期だ。農機具の改良、増産、人口増加、大規模な定住化が行われ、原始的コミュニティが大きな組織のなかに包括されてゆく。それは同時に専門職の出現を促し、ギリシャ人到来(即ちは植民地化)の時期でもあった。 これらの一連の変化がラティウムに大きな社会変動を生んだのだ。社会的階層や経済的水準が、平等から格差への移行した。それは墳墓に残された数々の証拠によって裏付けられるが、土地の私的所有

✕はなぜ閉じるのシンボルなのか歴史を読み解く

先日Cybozu Frontend Monthly #1 にてb4h0_c4tさんの「HTMHell special: close buttons」のお話を聴いていた中で、一つ引っかかるものがあった。 「そもそも✗(バツ)は閉じるって意味じゃないから!」 確かに。 現代、様々なUIを触ってきた中でなぜ ✕ を閉じるものと捉えているのだろうと不思議に思った。 ✕ではなくx(エックス)で表現されることも多々あるようで、こんな名言もある。 ✕とはなんなんだろう ではなぜこの

気候変動リスクと現代の「帝国」 “今”と“過去”をつなぐ世界史のまとめ④ 前2000年〜前1200年

僕らは今、なぜこのような世界を生きているのだろう。 ばらばらになったり、まとまったりしながらも、とりあえず仕方がない、というように動き続けているわれわれの社会は、どのようにして今ある形になったのだろう。 ひとつの確固たる世界があるようでいて、そういうわけでもなく、区切られているようでいて、そういうわけでもない、あいまいなまま、はっきりとしないまま漂うこの世界は、一体どこに向かっているのだろうか。 "今"と"過去"をつなぎながら、世界史を、ゆるく、なんとなく、まとめていく

戦う女性たちの世界史

歴史好きは小学生の頃からだ。 過去の人物の一生を追体験し、想いを馳せる。 歴史的事実の背景にある人間模様を想像しながら、あれこれ考えるのが好きだ。 想像力?妄想力?がある方なので、感情移入しまくり、日常生活に支障が出るぎりぎりなってしまうこともあるのが難点。 気になった人物の生い立ちについて調べるのも好きで、現在活躍する方々の生育環境や親の育て方にも興味がある。 そんな中、最近読んだ本が面白かった。 戦う女性たちの世界史 (日経ビジネス人文庫) 軽く読めるサイ

*近刊書籍/歴史*(2020年8月刊行)

<Index> 1. 「アレクサンドロス大王物語」 2. 「ペルシア帝国」 3. 「古代の食生活」 4. 『特攻と日本軍兵士 ~大学生から「特殊兵器」搭乗員になった兄弟の証言と伝言 ~ 』 5. 「戦時下のくらし」 6. 「イギリス海上覇権の盛衰」(上)(下) 7. 「カエサル 内戦の時代を駆けぬけた政治家」 8. 「アイヌと神々の謡 カムイユカラと子守歌」 9. 「吉原の舞台裏のウラ 遊女たちの私生活は実は○○だった?」 10. 「渋沢栄一と勝海舟(仮)」 11. 「上杉謙

信じられる「未来」についての虚構をどう描くか? ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』が問いかけるもの

歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による『サピエンス全史』。上下二巻にわたり人類の歴史を一掴みにしようというおもしろい本である。 様々な人々の無数の経験が織りなす複雑な人類の歴史を、わずか二冊の本で一掴みにする。そのための方法としてハラリ氏が選んだのが「虚構の力」という概念を軸に設定し、その軸の周囲に人類史を記述していくというやり方である。 だからこそ7万年前ほど前の人類に起こったコトバの力の獲得、虚構を音声や物に置き換えて他者と共有する力の獲得から、『サピエンス全史』の記

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半年がかりで「ローマ人の物語」全43巻を読み終えた

昨日、「ローマ人の物語」(塩野七生著/新潮文庫)全43巻を読み終えた。半年かかった。 1200年の歴史を紡いだリーダーたちの壮大な物語。しっかりとした感想は、せめてパラパラとでも捲り返しながら少しづつ分けて書いてみたい。 あと10年早く読んでおけばよかったと思いつつ、あの頃読み始めても読破する根気はなかったかもしれないとも思っている。 ここでは、シンプルな読後感を二つの角度から書いておきたい。 一つ目。 人生後半をどう生きるか日々自分に問う年になった僕にはテキストのような、

アメリカ合衆国の歴史を大人になってから教わった(3/3)20世紀から現在まで

アメリカ合衆国の歴史を大人になってから教わった(1/3)今までの教育はなんだったんだ?を読む アメリカ合衆国の歴史を大人になってから教わった(2/3)17世紀から19世紀までを読む [見出し画像]Taking a stand in Baton Rouge(バトン・ルージュで立ち構える)と題したこちらの写真はカメラマンのJonathan Bachman(ジョナサン・バクマン)がロイター通信のために撮った一枚である。中心にいる女性はIeshia Evans(アイーシャ・エヴァン

48時間で友人に世界史を一通り教えた話

※有料設定になっていますが最後まで無料で読めます。 「そういえば世界史得意だったよね、せっかくだし時間あるなら教えて欲しい」 『いいよー明日からSkypeでやるかー』 「おっけーよろしくー」 だいたいこんなノリだったと思う。 2年ぶりに高校からの友人と再会して、唐突にやることが決まった。 どうやら試験を受けるのに必要らしく、どう手をつければいいかわからなくて途方に暮れていたそうだ。 僕もちょうど手持ち無沙汰になっている時期で、そういえばアウトプットすることってあんまり

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「いい問い」があると生活も人生も楽しい! コルク佐渡島庸平さんと探る、歴史の学び方《前編》

未来は誰にも予測できない。 これは、歴史を勉強すればするほどわかることです。 特に、いまはものすごい速さで変化する時代に突入しています。古代であれば500年スパンで変遷していた価値観が、いまは20年、30年で変わっています。 かつてないほどに不確定な時代を生きているんです。 そんな時代に大切なことは、自らの価値観を相対的かつ客観的に理解し、他者の考え方や価値観を受け入れること。そのうえで自らの価値観を選択し、決断することだと思います。 その手段として、歴史が役に立ち

プレテスト「世界史B」 全問解説①第1問 解説動画付き―井出進学塾のマンツーマン授業の実況中継(大学入学共通テスト「世界史」対策)

こんにちは、井出進学塾です。 今年度から新しく始まる大学入学共通テストですが、2年前にプレテストが行われました。 共通テスト「世界史」対策として、「世界史B」プレテストを解説・分析していきます。 これからの勉強で、何を気を付ければよいか?どのような勉強をしていけばよいか?方針を固めていきましょう。 未履修分野もあるでしょうが、それでも、今の段階でどれだけ解けるか試してみるとよいです。問題の完成度としては高いものになっているので、未修の分野でも、それまでの知識や資料のよみと

ルネサンスはペストと経済危機からの再生だった!ーー人気の公認会計士が「美術」と「経済」の知られざる関係を解き明かす。

人々の知恵と工夫が経済を動かし、さまざまな困難を乗り越えてきた! 大人気の公認会計士・田中靖浩さんが名画を通して読み解く画期的な世界史入門『名画で学ぶ経済の世界史ー国境を越えた勇気の再生の物語ー』。今まで美術に興味がなかった方も、経済に疎かった方も、名画に隠されたさまざまな史実に大興奮必至。発売前ですが、予告編としてプロローグを全文公開します! プロローグ ペストとルネサンスと虹と その船がシチリアの港に着いたのは1347年の秋。  降りてきた船員たちの皮膚はどす黒くただれ