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"歴史" 系 note まとめ

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2021年7月の記事一覧

第37回歴史学入門講座「境界史の構想」

今日、オンライン開講となった歴史学入門講座を受講しました。 講師は日本中世史が専門で、「境界」に注目した研究をされている村井章介先生です。個人的には『世界史のなかの戦国日本』などを読んだことがあり、研究内容に興味を持っていました。 村井先生の著書『境界史の構想』で取り上げられた史料をピックアップしてお話をしていただきましたが、非常に興味深かったので備忘録代わりにメモしておきます。 A.坂上田村麻呂の蝦夷討伐史料:「清水寺縁起絵巻」 ◎蝦夷討伐は平安時代初期だが、この史料の

近代欧州君主一族逸話集:戦前の博文館刊行物群より

 先般、講談社『マネー現代』から、皇室の警備をテーマとする拙文が新たに公開された。未読の方は、"眞子さま・小室さんの警備問題、ヨーロッパ各国の王室が参考になる理由"をぜひ先にお読みいただきたい。  先の拙文では、明治38(1905)年に博文館から出版された『世界之帝王』から、特にデンマーク王クリスチャン9世とギリシャ王ゲオルギオス1世の外出時の逸話を取り上げた。  当該記事中で『世界之帝王』について「ぜひともご一読いただきたい」と書きはしたものの、おそらくほとんどの方は読

【久保田豊】国造りの相談役!土木スーパースター列伝 #04

こんにちは。土木広報センター土木リテラシー促進グループ長の鈴木三馨です。 土木リテラシー促進グループでは土木の世界をもっと広く多くの人に知ってもらおうと『土木偉人かるた』を制作し、その普及活動を行っています。 今回ご紹介するのは、"海外で活躍した土木偉人"の流れのまま、海外技術協力のパイオニア『久保田豊』です。 建設コンサルタントの先駆けとして、160の国で実績を持つ日本の企業である日本工営の創業者です。 日本工営の本社に行ってきました! こちらは、FIDIC*大賞

ベトナム歴史秘話:なぜ民族の英雄は、巨乳として歴史書に記録されたのか?

近世ベトナムの公式歴史書において中国と戦った民族の英雄ながら唯一、その胸の巨大さについても言及されている女性がいます。19世紀、ベトナム皇帝でさえもその理由が分からずに困惑したという歴史書の記述です。 なぜ彼女の胸の大きさは公式の歴史書に記述されたのか、そこにはどんな理由があったと考えられるのか。ベトナムの歴史書、中国の歴史書の原文における記述を探し出し、古代・中世・近世とその記述の変遷を調べることで、中越関係における英雄の実像と真相について探ってみました。 1. 三国志

「世界の名著」を読む  #05

ジャン・ジャック・ルソー  今回のテーマである、「世界の名著」のルソーの巻の話をする前に、ポール・アザールの著書「十八世紀ヨーロッパ思想」の話をしたい。70歳を越えた私は、最近、蔵書の断捨離をすすめている。「ブラック・スワン」で有名なナシーム・タレブは、「その人間の書棚の価値は、彼がすでに読んだ本ではなく、これから読もうとしている本にある」という意味のことを書いていて、なるほどと感心したことがある。となれば、既読の本はばっさりと全て手放すのが正しい選択だということになる

フィンランドデザインの質の高さは「工業」と「アート」の往復運動から生まれる 〜アアルトとカイフランクのデザインアプローチ〜

みなさんこんにちは! 暑い日が続いておりますがいかがお過ごしでしょうか? 今回の北欧デザインコラムでは、フィンランドデザインのクオリティの源泉を、アルヴァ・アアルトとカイ・フランクの二人の名デザイナーの事例を引きながら「工業」と「アート」という二つの視点から紐解いてみたいと思います。 1.アアルトのデザインにおける「遊び」の役割先日、世田谷美術館で開催されていたアルヴァ・アアルト展に行ったときのこと。最後のブースにアアルトが描いた「絵画」が展示されていました。アアルトと言

「始皇帝」は、暴君なのか? その思想を調べてみました①【始皇七刻石】

【キングダムの嬴政】始皇帝は暴君なのか?中国をはじめて統一した皇帝である「始皇帝」の正体が実は、暴君であるという評判がネットでは強いです。 始皇帝は、人気漫画『キングダム』の準主役である嬴政(えいせい)にあたります。 『キングダム』における嬴政は、冷淡に見てつつも、暖かい情熱的な人物で、「人の持つ本質は光だ!」という思想を持っているため、 かえって、「史実の始皇帝は暴君! 全然違う!」という意見が強くなっているものと思われます。 そこで、様々な史料を調べて、始皇帝の思

見ることも触れることもできない世界へ -広井良典著『無と意識の人類史』を読む

広井良典氏の『無と意識の人類史』を読む。 人類の歴史は、人間たちの「意識」のあり方の歴史でもある。 広井氏は意識について、それが「"脳が見る共同の夢"」としての「現実」を作り出すものであると書かれている(『無と意識の人類史』p.24)。 これはユヴァル・ノア・ハラリ氏が『サピエンス全史』や『ホモ・デウス』で論じた「虚構の力」にも通じるところがある。 "脳が見る共同の夢"は「現実」であり、「有」の世界、「ある」ものたちの世界である。それに対して「無」とは、意識が、自ら作

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大和郡山市の近代史を調べています

 はじめまして。又春廓🌸奴と申します。奈良県大和郡山市の近代史、特に洞泉寺遊廓について調べています。ここでは主に、奈良県の地域新聞や郡山の地域誌を調べてわかったこと、その内容をアップしていきます。  なぜこう言った形で公開するのかといいますと、固定されてしまった洞泉寺遊廓のネガティブイメージを取り払いたいと考えるからなのです。  実は現在の洞泉寺遊廓・岡町遊廓は、悲哀に満ちた創作話や間違った説明が多く出回り、負の遺産という言葉に代表されるように、ネガティブなイメージが一人歩