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"歴史" 系 note まとめ

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2021年9月の記事一覧

名刺版写真 カルトドヴィジット -フランス19世紀の流行-

パリではないフランスで古物パトロールするのがライフワークとなっている、銀色アンティークの蚤の市日記です。 毎週毎週蚤の市で素敵アイテムを探しておりますが、そんな私が最近心惹かれてやまないのが、100年以上前に流行したカルトドヴィジットと呼ばれる名刺版写真です。 名刺版写真 カルトドヴィジットってどんなもの?名刺版写真 カルトドヴィジットとは、カード状の厚紙の台紙に張り付けられた肖像写真で、サイズは6.2cm×10.3cmくらいです。 形状のイメージとしては、百人一首やかる

明治時代の人物情報誌『人事興信録』をデータベース化! 【4】

今回は、明治時代の人物情報誌のデータベース化プロジェクトを紹介します。 ↓ 音声でもお届けしています! 今年も恒例の世界長者番付が発表されましたね。世界のメディアも注目のトピックですが、実は日本にも、明治時代から富裕層やエリートについての情報誌があったのをご存知ですか? その名を「人事興信録」といいます。 人事興信録は、明治36年から平成21年までの100年近くに渡り、日本社会の上流階級の男女を記録してきました。戦前の人事興信録には、身分や職業、生年月日、婚姻関係や親類

ヘルシンキを地理学的に読み解こうとしてみる

しばらく、フィンランドのことがよくわからないでいた。ヨーロッパのまちを、しっかりと観察するのはこれがはじめて。 基本的にほぼ自分用メモみたいに書いてるのでアレですが、おそらく3〜5あたりがなんとなく歴史〜地理の話をしています。7の個人的なヘルシンキ解説はちょっとまだ暫定版ですが、割と何かが見えてくるかもしれない(俺が)。 とりあえず7で記載しているヘルシンキの森的マップ暫定版を置いておきます。 ※フィンランド全体の地理=フィンランドが一体どんな地形になっていて、どの都市

Too Much To Read:英語で人文系学術書を読むためのノート

 自分の好きな本を、好きな速度で読むことは楽しいことです。しかし、わたしたちの読書というものはこうした楽しい読書に限定されるものではありません。読書は何かを学び、情報をえる手段でもあり、特定の目的を実現するために行われることもあります。大学においてはしばしば限られた時間の中で学術書を、特に英語で、読むことが必要となるでしょう。  日本語などの非ヨーロッパ言語を第一言語とする話者が、英語での学術書を読むのはわりと大変です。大学受験レベルの英語をきちんと勉強できていれば、文法わか

明治日本と西洋文明の出会い #1本シリーズの目的と資料について

はじめに田中彰は、明治維新を「東アジアの日本が、近代国家へと変貌した一大変革=『革命』だった」と述べた。 この革命を進めるにあたって、日本は欧米の近代文明・文化を参考にした。この国家をあげての大修学旅行というプロジェクトを担ったのが、岩倉使節団である。遣欧米特命全権大使は岩倉具視、副使は木戸孝允・大久保利通・伊藤博文・山口尚芳の明治維新の中心メンバーである。 本シリーズは、岩倉使節団が欧米で何を学び、何を日本にもたらしたのかという点について、彼らの公的な報告書である『

読めば読むほどおもしろくなる『珈琲の世界史』(講談社現代新書)の話

上野と浅草の間くらいに面白い本屋さんがあって、たまに行きます。店主こだわりセレクトの本たちが並んでる。学ぶこと、主張することから逃げない感じを尊敬しています。 さて、そこで先日買ったのが『珈琲の世界史』(旦部幸博、講談社現代新書、2017年)。 この本、すごいですよ。目次見ます?引用しようかと思ったけど「honto」に詳しい目次載ってた!  ええ、すごいなあ。何がすごいって、実際にこの本の目次ページには「章」レベルまでしか書いてないんですよ。でも、「honto」に載って

ボスニア紛争と知られざるPR作戦⑦~「民族浄化」というバズワード

前回はこちら。  やり手のPR企業の助力の結果、セルビア非難の論調は徐々にアメリカのメディアにも取り上げられるようになる。 ジャーナリストの功績も忘れてはならない これを、ジム・ハーフとルーダー・フィン社だけの功績と考えるのはフェアではない。内戦開始直後、危険を冒して現地入りしたジャーナリストもいたからである。彼らの多くは、ボスニアの首都サラエボを拠点としていた。サラエボは、モスレム人政府が支配を及ぼしており、セルビア人の攻撃対象である。  つまり、国際社会に報道される現

ボリバルとは、何者か? 資料でよむ世界史 11.3.1 ラテンアメリカの独立 ボリバルの『ジャマイカ書簡』

この記事は、「11.3.1 ラテンアメリカの独立 世界史の教科書を最初から最後まで」とリンクしています。 コロンビア、ベネズエラ、エクアドル…。 ラテンアメリカにある国々のほとんどは、19世紀初めにスペインと戦い、独立を勝ち取った国々だ。 しかし、新たに独立した国々には、じつにさまざまな人々が暮らしていた。 まず、植民地に赴任したスペイン人。 さらに植民地生まれのスペイン人(クリオーリョ)。 先住民(インディオ)。 先住民とスペイン人との混血(メスティーソ)。 奴隷と