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”国際系” note まとめ

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This magazine curates notes relating to stuffs between globalness and localness.
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2022年2月の記事一覧

『リグ・ヴェーダ』を(趣味の範囲で)読むための前提知識

まえがき『リグ・ヴェーダ』(R̥gveda)という文献があります。一般にはRVと略します。使われている言語は、サンスクリットの中でも一番古い段階のヴェーダ期サンスクリット語(Vedic Sanskrit)、の中でもぶっちぎりで一番古風なものです。要するにインド・アーリヤ語の中で一番古い段階の言語の姿が残っている文献です。 この名前から一般に連想される韻文集は、厳密には『リグ・ヴェーダ・サンヒター』(R̥gveda-Saṃhitā)(の中でも、現存するのはシャーカラ(Śāka

2022.2.15 サバ缶とじゃがいもとたまねぎのスープ、ロシアの川魚

ウハーという、ロシアの魚のスープがあります。それをサバ缶で作りました。 ストーブの上に水を入れた鍋をかけ、皮をむいたたまねぎ1個と、じゃがいも1個を、鍋に直接切り落とします。 ローリエと冷蔵庫でカラカラになっていたタイムの枝も入れて野菜が柔らかくなるまで煮ます。 サバ缶は今日はオイル漬けのものを使ったのですが、水煮缶でもOKです。野菜が柔らかく煮えたら、缶を開けて投入。汁は全部は入れず、1/3くらい。全部入れると魚臭くなってしまいますし、今朝は特にオイル漬けだったので減らし

カシミールでお茶を#1_ピンクチャイ・リサーチ

【カシミールのピンクチャイ】きっかけは忘れてしまったが,以前チャイについて調べていた時に "Pink chai" や "Kashmiri tea" または "Noon tea"と呼ばれるなんともキャッチーなお茶文化があることを知った.名前の通り,苺ミルクのようなピンク色.さらにピスタチオなどのナッツを砕いて載せるのも定番らしく愛らしさを増強している. カシミール,といえばインド・パキスタン・中国にまたがる複雑な地域を指すが,少なくともインドとパキスタンの双方でこの名称は通っ

新感覚!解決しないミステリー小説 ロンドの旅Part1ロンドの旅 全編

Part1 ロンドの旅  Chap1 ニューヨークの事件1.探索 ニューヨーク郊外で3人は1人の女性を待っていた。 七分袖のジャケットにTシャツとハーフパンツ、革靴を合わせた男性と、シンプルなワンピースを着た少女2人は、全身をまっさらな白色で揃えている。さらに、肩まであるストレートの金髪と金色の瞳はこの3人に共通していて、いささか異彩を放っていた。  初めまして。 腰まである黒髪ストレートの女性は、黒い無地のTシャツにデニムの装いで、ハイヒールをコツコツ鳴らしながらま

1都2県でガーナ料理を知るための10皿

ナイジェリア、カメルーンとアフリカ料理について書いてきたので、 「次はガーナ料理を書かなければ!」 という想いが日に日に強くなってきました。というのも、日本のアフリカ系移民の人口で言うと、ナイジェリアの次に多いのがガーナ人だからです。 またガーナは、主食となる料理がいくつもあります。ガーナの様々な雑穀の餅状のものを総じて「フフ」と理解して食べていましたが、どうも、そうとは言い切れないことが食べ続けて分かりました。 この写真は、ナイジェリアやカメルーンで食べられているパ

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アメリカ文学史に屹立する「何もしない」英雄――『教養としてのアメリカ短篇小説』より、「書記バートルビー」を読み解く第2講を全文公開!

 “I would prefer not to.”(「わたくしはしない方がいいと思います」)とは、『白鯨』の著者として知られるハーマン・メルヴィルの短篇小説「書記バートルビー」に出てくる表現です。上司に言いつけられた仕事をこの言葉によって拒絶しつづけ、それ以外一切の説明をしない奇妙な人物・バートルビー。アメリカ文学史に屹立するこの「英雄」の物語が発表されたのは1853年。150年以上前の作品ですが、先ごろ日本経済新聞の一面下コラム「春秋」(https://www.nikkei

海外の教育現場経験のある先生に出会おう!第2弾セミナーのお知らせ

海外の教育現場経験のある先生に出会おう!第2弾セミナーのお知らせ。 2021年8月に立ち上げた「海外の教育現場を経験した日本の先生のコミュニティ」がお送りするセミナー第2弾。🌍 このコミュニティは海外の教育現場について日本の先生方に紹介する機会を提供することで、現在の教育活動を多角的捉えたり振り返る機会とすることを目的としています。(詳しくはHP参照) セミナー第2弾は現在オーストラリアの小・中学校でご活躍中の増田裕太先生をお招きし、オンラインを活用した指導方法や授業展開

続編2:2022年ウクライナ情勢をより深く理解するための歴史文化背景雑学

当方はウクライナやスラブ研究者では無く、米国大学にてホスピタリテイ・観光経営分野で研究系博士教員をしている日本人学者・米国永住者です。ウクライナには縁があって旧ソ連崩壊後数年であった1995年から往訪しており、渡航回数は30回程度です。過去5年は年に数回のペースで渡航していました。 自分の研究領域専門分野ではありませんが、比較的現地情勢に詳しいので、約一か月前に掲題の雑学メモを書きました。現地に行かずに欧米メデイアを分析・評論するような日本語メデイア、或いは親ロシア派の自称

クリミア危機とウクライナの歴史

現在、ロシアが侵攻している とされているウクライナですが、 そのきっかけとなった 「クリミア危機」について書きます。 なお、ここに書くのは、 過去に私が読んだ文献から 拾った覚え書き程度の 内容に過ぎません。 私の主張は一切入っておりませんので、 誤解されないようにしてください。 (私自身は、欧米の味方でも  ロシアの味方でもありません) この記事を書くにあたって、 参照した本を先に紹介しておきます。 本書は2014年に文藝春秋から 出版された新書本です。 テレビの

25年間中華街を歩き続けた「中華街コンシェルジュ」が語る。奥深い紹興酒の世界

「紹興酒を広めるためには、まず中華全体を元気にしなくては!」 そんな熱い想いを胸に、中華街を歩き続ける「永昌源」社員がいた。 入社26年目、営業担当として25年間、紹興酒の魅力を伝えるため全国を飛び回ってきた内海正靖です。紹興酒をもっと知ってもらうためには、中華全体を盛り上げなくては。そのために、まずは身近な中華街を元気にしよう。 キリンのグループ企業である紹興酒・中国酒メーカー「永昌源」で働きながら、横浜中華街コンシェルジュとして横浜中華街を盛り上げることにも尽力して

パワーポイントで加工可能なヨーロッパの地図(ウクライナについて知るために)

 ウクライナをめぐる情勢、とても心配しています。学校などで、現在の状況やこれまでの経緯を説明する機会が多くなるのではないかと思います。そのとき、国の色分け(国家群など)ができる地図があると便利だと思いました。ただ、GIS(地理情報システム)を使った地図化は、地理の先生方でも難しい場合が多く、歴史の先生方にとってはなおさらだと思います。そこで今回は、世界の国境のデータをGIS(ArcMap)で加工し、パワーポイントで国別に色分けができるファイル(pptxファイル)を作成しました

映画「牛久」レビュー

日本は極めて同質性が高い国だからなのか、同じコミュニティの中にいる人、あきらかにお客さんである人に対してはとてもホスピタリティにあふれている。物価も先進国としては安いので、旅行で訪れる国としては最高の国の一つだろう。 一方で、システムから外れた人に対しては、日本人が相手であっても冷酷になる。それは「おもてなし」の国である日本のB面で、現代版の村八分のようだ。児童相談所の中にある一時保護所においても、一部の場所では子どもに対する人権侵害が起きていた(今も起きている施設があるか

地球儀から考える新冷戦 『13歳からの地政学』

最後に地球儀をじっくり見たのがいつだったか、覚えているだろうか。 私はといえば、リビングに転がる「ほぼ日のアースボール」のビーチボール版で遊ぶことはあっても、「じっくり見る」ということあまりなかった。 先日、少し空気が抜け気味だった地球儀に息を吹き込み、久しぶりに時間をかけて眺めまわした。 きっかけはロシアによるウクライナ侵攻と、田中孝幸さんのデビュー作『13歳からの地政学』を読んだことだった。 田中さんはモスクワ駐在を含む国際報道のベテラン記者だ。外交・安全保障分野の

「大国と小国の連邦においては大国が下に横たわらなければならない」『老子』第六一章

 連邦制の思想としてもっとも古く明瞭な原則を述べたのは『老子』であるというのが年来の主張です。『現代語訳 老子』(ちくま新書)で述べました。  その原則を述べた六一章の現代語訳を再検討しました。鍵は牝牛が中国思想では水神であることに思いついたことです。その他基本は上記著書とかわりません。  大国は水神の牝牛(めうし)のように流れながら天下の交りを深めていく。牝(めす)は雄の下に横たわって雄(おす)を抑える。大国が小国の下にいれば大国は小国を支配できるし、小国は大国を下にし