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世界史のまとめ ✖ SDGs 第1回 人類の誕生と世界のこれから(700万年前~前12000年)

SDGsとは―


世界のあらゆる人々のかかえる問題を解決するために、国連で採択された目標」のことです。
 言い換えれば「2018年になっても、人類が解決することができていない問題」を、2030年までにどの程度まで解決するべきか定めた目標です。 

 17の目標の詳細はこちら
 SDGsの前身であるMDGsが、「発展途上国」の課題解決に重点を置いていたのに対し、SDGsでは「先進国を含めた世界中の国々」をターゲットに据えています。
 一見「発展途上国」の問題にみえるても、世界のあらゆる問題は複雑に絡み合っているからです。
 しかも、「経済」の発展ばかりを重視しても、「環境」や「社会」にとって良い結果をもたらすとはいえません。


 「世界史のまとめ」では、われわれ人間がこれまでにこの課題にどう直面し、どのように対処してきたのか、SDGsの目標と関連づけながら振り返っていこうと思います。


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第1回  人類の誕生と世界のこれから(約700万年前~前12000年)

人間の社会は「暴力」から逃れられないのだろうか?

SDGs 目標 16
持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する

この時代のまとめ

今から約700万年前、アフリカ大陸で「人類」という種が生まれた。
ゴリラよりも攻撃的で高い知性を持っていた人類は、どちらかというとチンパンジーに近い。
古いタイプの人類は厳しい氷河期の中で絶滅し、新しいタイプの人類が生き残った。
そのうちの一つが、われわれの属する「ホモ・サピエンス」(以下、「ヒト」または「人間」)という種である。

ヒトは小さな「群れ」を作って植物の採集や動物の狩猟、魚の獲得によって命をつないだ。
人間は血の繋がりを超えた「群れ」を形成し、「暴力」を用いて同種の相手を殺すこともあった。

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このころの人類は、地球環境に影響を与える力はまだ少なかったんでしょうね。

歴史:自然の中に暮らすほかの多くの動植物の一つに過ぎなかった。
 ビーバーが木々で川をせき止めてダムを作り、鳥が草木を集めて巣を造るように、人類も環境に働きかけ、こぢんまりと「人類の活動の場」をつくっていったんだ。
 でもまだ自然を大きくコントロールするには至っていない。

人間ってもともとはサルだったんですよね?

歴史:難しい質問だね。
 どちらかというと、「サルのグループの中に人間が含まれている」といったほうがいいかな。

 生き物には、自分の「コピー」を子孫として残すことができる力がある。
 でも、「コピー」は必ずしも正確なものではなくて、自分の体の情報が書き込まれた「設計図」(DNA)は、写し取るときに「誤差」が生じることがあるんだ。
 そのちょっとした「誤差」のことを突然変異と呼ぶよ。

 その突然変異がたまたま周りの環境に適したものだったとしたら、その生き物にとって有利に働くよね。すると、はじめは突然変異だったものでも、生きていくのに有利な特徴ならば、子孫へと受け継がれていく場合がある。
 このようにして生き物は少しずつ進化していくと考えられているんだ。


じゃあ、人類もそうやってサルから進化していったということですか?

歴史:そうだよ。
 ただ、どこまでがサルで、どこからが「人類」といえるかという線引きには、微妙なところがある。骨の化石で判断するしかないしね。


判断ポイントはどこですか?

歴史:脳容積だけを比べてみると、初期の人類とチンパンジーの間にはほとんど違いがない(約360立方cm)。
 じゃあどこが違うかというと、頭蓋骨と背骨の「つなぎ目」(注:大後頭孔(だいこうとうこう))の位置だ。
 多くの哺乳類は、この「つなぎ目」が頭蓋骨の後ろのほうにある。
 でも、「人類」といえる場合は、頭蓋骨の「真下」にある。

440万年前の人類。頭蓋骨の真下の背骨があるwikimedia


なるほど。背骨の上に頭蓋骨が乗っかってるってことですね。

歴史:そうそう。
 直立して二本足だけで歩いていたってことが、人類の特徴として認められるんじゃないかって考えられているんだ。


どうしてですか?

歴史:直立二足歩行ができればまず二本の手が自由に使える。
 それに、脳が大きくなっても、背骨でしっかりと支えることができる(脳の容積が大きくなる要因となる遺伝子は、今のところ突き止められていない)。

 さらに口の中、のどのあたりに一定の空間ができるから、いろんな種類の鳴き声を出すことができるようになった。つまり、言葉を話すことができるようになったわけだ。

補足)なお、どうして直立二足歩行を始めるようになったのか、以前は気候の乾燥化によってサバンナ化した環境に適応したのではないかと考えられることが多かった(注:リフトバレー仮説)。
 初期の人類の化石が、サバンナではなく乾季には葉を落とす森林(熱帯季節林)林の分布していた地域で見つかっていることから、人類が二足歩行を始めたのは気候の乾燥化の影響を受けた森林地帯だったのではという説も出されています(竹元博幸「人類はなぜ森林のなかで地上生活を始めたのか – ボノボとチンパンジーの生態から探る」)。


ほかにも判断材料はないんですか?

 DNAを調べてみると、ゴリラ、ボノボ、チンパンジーという種の類人猿に近い。


 ゴリラやボノボが友好的なコミュニケーションを重んじるのに対し、人類はチンパンジーと同じく暴力的な一面を持っている。
 こうして見てみると、人類と類人猿(その他のサル)を分けるのはむしろ「変なこと」で、類人猿という共通のグループの中に、人類を含むいろんな種類がいるとみたほうがいい。


人類って「暴力」的な動物なんですか…。

歴史:これは宿命的なことなのかもしれない。
 子供やおなじ仲間を殺す哺乳類は、多くない。
 人類は「暴力」を抑えるため、今までさまざまな手立てをとってきたといえる。

人類はいきなりサルから分かれたんですか?

歴史:環境の激変に対応し、いくつもの種が生まれては消えていったんだ。
 最古のものはサヘラントロプスといって、今のアフリカの中央部のチャドというところで化石が見つかっている。

 それ以前は、アウストラロピテクスという種のサルが最古級といわれていた。
 石を割って道具も作っていた。
 でも、すでに絶滅してしまっているから、われわれとは別の種として分類される。


アウストラロピテクスから進化した別の人類のほうが、環境に適していたということですね?

歴史:そうだよ。アウストラロピテクスからは、いくつもの種類に枝分かれして進化が起こっていくんだけれど、われわれに近い種類の人間は約240年前にアフリカで出現した。

 彼らは脳みその大きさが一段と大きく、アフリカの外に移動し、火も使えた。火というテクノロジーを手にした人間は、猛獣を追い払うことが可能になり、地上で寝ることもできるようになった。
 さらに食べ物の加熱も可能となり料理ができるようになった。


どうして加熱するようになったんですかね?

歴史:一説には、脳の容積が大きくなったことが関係しているという。脳は人間の体の中でもっともエネルギーを消費するパーツの一つだからだ(注:料理仮説)。


男女の分業はいつの時代から生まれたのだろうか?

SDGs 目標5 ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る。

料理ができるようになると、人類の暮らしは一変しそうですね。そのまま食べることが難しそうなものでも、柔らかくなりますし。

歴史:消化しやすくなった点が大きいね。
 料理ができるようになったことで、胃腸の大きさが今までのサルよりも小さくなった。
 また、より多くの熱を得ることができることから、体毛が薄くなった。

 それに男女の役割分担が生まれるきっかけになったとも言われている。


どうしてですか?

歴史:食べるために必要な時間が短縮されたことで、オス(男)が狩猟に出かける時間がより多く確保されるようになったためだ。
 あくまで仮説ではあるけど、このような男女の分業は現代にまで続く人間社会の大きな特徴となっているね(ちなみに人間に近いチンパンジーやボノボの群れ(社会)には、共通して父方の力の強い傾向のあることが知られている)。

 また、言葉によるコミュニケーションをとることが可能になったことでチームワークが高まり、情報を子孫に伝えることができるようになった。
 サルだったら何かいいアイディアがあっても、仲間のサルに伝えることは難しく、しかも子どもや孫に伝えることができない。

 でも人間には、それができるようになったわけだ。喜びや悲しみも、言葉や歌にのせて他人とシェアすることができる。さまざまなよくわからないことに、自分たちで意味を付けることもできるようになった。
 こうして人類は、単なるサル以上の存在になっていくことになるんだ。


初期の人類は、気候の変動にどのように対応したのだろうか?

SDGs 目標 13 気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る

でも、サヘラントロプスやアウストラロピテクスって、今はもう絶滅してしまったんですよね?

歴史:そう。
 じつは当時の地球は、今とは比べ物にならないくらい寒かった。
 それで「古いタイプの人類」は滅んでしまったんだ。

 でも、そんな中、アフリカで進化した人類の一種が、アフリカの外に出て、寒いヨーロッパの環境を生き抜いた。

 こうして「新しいタイプの人類」が生まれた。
 ネアンデルタール人という脳みそが一段と大きな人類だ。火・言葉を使えるし、「死んだらどうなるか?」ということまで考えられたらしい。お墓が残っているからだ。

 一方、アフリカに残って進化した人類の一種が、われわれだ。
 正式名称はホモ=サピエンスという。ネアンデルタール人よりも脳みそは小さいんだけれども、人の”感情”を含む「複雑な情報」を処理するのが得意だった。

 ネアンデルタール人とわれわれホモ=サピエンスは、極寒の気候(20万年前~12万年前)を生き抜き、いったん気候は温暖化。
 この2種類の人類は「共存」していたんだよ。


ネアンデルタール人が、ホモ=サピエンスに進化したわけじゃないんですね。

歴史:そうなんだ。

 でも、だいたい7万年前くらいになると、ホモ=サピエンスがネアンデルタール人を圧倒するようになる。
 この時代のホモ=サピエンスは、すでに現在の我々と機能的にはほぼ同じだ。


そうなんですか!? じゃあ、その後の7万年間はほとんど機能的には変化がないってことなんですか。

歴史:そういうことになる。
 ホモ=サピエンスは身体的な機能はほとんど変えずに、言葉とか社会のしくみをアップデートしていくことで、ここまで複雑な群れ(=社会)を形成していったってわけだ。


同じパソコン(=ハード)に、新しく開発されたアプリ(=ソフト)をアップデートしていくようなものですね。

歴史:それは良いたとえ!
 ちなみにホモ=サピエンスは単独で進化を進めていったわけじゃない。
 同じ時代を生きていたネアンデルタール人との間に生まれた子どももいたといわれていて、白い皮膚、髪の色、病原菌への耐性が受け継がれたのではないかと考えられている。

 最近ではほかにも約4万年前にはデニソワ人という、やはりホモ=サピエンスに近い別種の人類がいて、相互に関わりがあったんじゃないかともいわれているよ。

 でも、ネアンデルタール人もデニソワ人も絶滅してしまう。
 ホモ=サピエンスとの戦いがあったんじゃないか?とか、火山が大爆発してネアンデルタール人の食料がなくなったんじゃないかとか、ホモ=サピエンスの持っていた感染症が広まったんじゃないか?とか。

 なかでも有力な説には、脳機能の差がある。
 ホモ=サピエンスはコミュニケーションをとるのがネアンデルタール人よりも得意だった。
 生活を営む集団の数も100人程度のネアンデルタールに比べ、150人程度と大人数だった。

 大きな集団でコミュニケーションをとりながら、イヌとともに集団で狩りをして大きなゾウなどを捕まえていたようだ。寒さ対策のために服も着ていたし、投げ槍(やり)も発明している。


人種の区別はいつから始まったのだろうか?

SDGs 目標10.2  2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々のエンパワーメント、および社会的、経済的、および政治的な包含を促進する。

 最後の氷期が地球を襲う中、ホモ=サピエンスは獲物を追ってアフリカから世界各地に進出した。
 出発点がアフリカだったということはほぼ間違いないけれど、正確な地点についてはわかっていない(モロッコ説(ジェベル・イルード)、エチオピア説(ヘルトオモ・キビシュ))。

 アフリカを出た後の旅路は3つ。

①北ルート
 アフリカから北に向かった人たちはヨーロッパにたどり着く。

②東ルート
 ユーラシア大陸を東に向かった人たちのうち、インドのあたりから海の世界に進出した人たちもいた。
 彼らの中にはユーラシア大陸の東端から、当時陸続きだった北アメリカへと渡ることになった者もいる。

③南ルート
 東ルートをとった者の中には、最終的にオーストラリアにまで至ったグループもいた。現在のオーストラリアの先住民やニューギニア島の住民の祖先だ。

 その過程で、同じ種類とはいえ気候によって肌の色などの特徴が変わり、黒人や白人といった人種が生まれていった。

黒人と白人、それに日本人は、みな同じ種類なんですね?

歴史:まったく同じ種類だ。身体的な見かけが似通っているだけで、人種の違いによって優劣はないよ。

(* 第2回に続きます)

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