sengenyama_613

2023年3月20日永眠。享年92歳。農業の傍ら田畑や毎日の暮らしについて短歌を詠んで…

sengenyama_613

2023年3月20日永眠。享年92歳。農業の傍ら田畑や毎日の暮らしについて短歌を詠んできました。素朴な優しい歌が周囲の多くの人に愛されました。まだまだ父の優しい世界に触れていたいので、引き続き父に代わって娘の手で父の短歌を発表していこうと思います。

記事一覧

父の征き祖母と叔母らと家守る
 田畑のあれば戦債も買う

sengenyama_613
9か月前

ねぢ花と気づきたる時草刈りの
 鎌は根本を通り過ぎたり

sengenyama_613
9か月前

梅雨明けは近きか葵は秀に近く
 花のぼらせてわが丈を越ゆ

sengenyama_613
10か月前
2

梅雨晴れ間惜しみて韮を植ゑ急ぐ
 冬から春へのわが家の身過ぎ

sengenyama_613
10か月前
1

子つばめの育ちの早し巣のへりに
 五つの嘴(はし)を並べ餌まつ

sengenyama_613
11か月前
1

残照はなほ続きをり一輪車
 慣れし女孫はわれのあとさき

sengenyama_613
11か月前
5

鎌を研ぐ傍に並び立つ孫の
 幼き方の靴みぎひだり

2

はつ夏の陽に輝ける柿若葉を
妻は誉めをり二度も三度も

2

咲き盛る霧島つつじの枝撓(たわ)む夜半に降りし雨滴ふくみて

3

日溜りの土手に蓬を摘む妻のまだ小さいと笊を傾げる

2

若竹の秀の抜き出でて竹藪の笹揺るるなく小糠雨ふる

1

あかときに草刈る鎌を研ぎあげて砥の粉拭へば鉄気(かなけ)が臭ふ


(生涯に一冊だけ作った歌集のタイトルになった歌)

2

春寒にひと日おびえし春彼岸けなげに愛(かな)しかたくりの咲く

1

夕空に浮く三日月にすがりたし思はず洩らす今日の疲れを

2

きさらぎの畑の小径の乾きそむ身籠る山羊を引きて帰れり

1

初詣の客に会釈を返しゐる着ぶくれしまま拝殿に座し

1

父の征き祖母と叔母らと家守る
 田畑のあれば戦債も買う

ねぢ花と気づきたる時草刈りの
 鎌は根本を通り過ぎたり

梅雨明けは近きか葵は秀に近く
 花のぼらせてわが丈を越ゆ

梅雨晴れ間惜しみて韮を植ゑ急ぐ
 冬から春へのわが家の身過ぎ

子つばめの育ちの早し巣のへりに
 五つの嘴(はし)を並べ餌まつ

残照はなほ続きをり一輪車
 慣れし女孫はわれのあとさき

鎌を研ぐ傍に並び立つ孫の
 幼き方の靴みぎひだり

はつ夏の陽に輝ける柿若葉を
妻は誉めをり二度も三度も

咲き盛る霧島つつじの枝撓(たわ)む夜半に降りし雨滴ふくみて

日溜りの土手に蓬を摘む妻のまだ小さいと笊を傾げる

若竹の秀の抜き出でて竹藪の笹揺るるなく小糠雨ふる

あかときに草刈る鎌を研ぎあげて砥の粉拭へば鉄気(かなけ)が臭ふ


(生涯に一冊だけ作った歌集のタイトルになった歌)

春寒にひと日おびえし春彼岸けなげに愛(かな)しかたくりの咲く

夕空に浮く三日月にすがりたし思はず洩らす今日の疲れを

きさらぎの畑の小径の乾きそむ身籠る山羊を引きて帰れり

初詣の客に会釈を返しゐる着ぶくれしまま拝殿に座し