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戦争が個人にもたらす残酷な仕打ちへの怖れと人生の哀歓がこもった得難い余韻を残していく作品…★劇評★【舞台=私はだれでしょう(2020)】

 戦争は恐ろしい。そう言ったとしても本当に実感としてそう感じてくれているのかどうかを推し量ることはなかなか難しい。しかし、物語の中に潜ませたそうした真理は観客の心の中にひたひたと入り込み、いつのまにか絶対にはぎとることのできない感情として定着する。井上ひさしが終戦直後に急増した「たずね人」をモチーフに戦争の傷跡の実相とそこからの再生を描いた舞台「私はだれでしょう」は、市井の人々が時につつましく時にたくましく生きる生活感あふれる描写が満載で、挟み込まれる劇中歌も底辺にあっても前向きに生きる人々の生命力を表していて明るい輝きに満ちているが、一方では戦争が個人にもたらす、そうした残酷な仕打ちや戦後という時代の闇、権力者たちの欺瞞を鋭く糾弾する。だからこそ、本当の意味で戦争の怖さが分かる。2つの層が互いに連関し共鳴しあいながら、物語を進めていく様はある種の凄みさえ感じられ、戦争への怖れと人生の哀歓がこもった得難い余韻を残していく作品だ。演出は名匠、栗山民也。(写真は舞台「私はだれでしょう」とは関係ありません。イメージです)
 舞台「私はだれでしょう」は10月9~22日に東京・新宿の紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで上演予定。以降10月27日~12月20日に盛岡、神戸、姫路、阪南、紀の川、和歌山、奈良、彦根、京都、貝塚でも上演される。

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★舞台「私はだれでしょう」公演情報

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