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自分で自分を殺す無限ループ!クローネンバーグの世界を余すこと無くしゃぶり尽くせ!「インフィニティ•プール」現在上映中【ホラー映画を毎日観るナレーター】(495日目)

「インフィニティ•プール」(2024)
ブランドン・クローネンバーグ監督

◆あらすじ
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高級リゾート地として知られる孤島を訪れたスランプ中の作家ジェームズは、裕福な資産家の娘である妻のエムとともに、ここでバカンスを楽しみながら新たな作品のインスピレーションを得ようと考えていた。ある日、彼の小説の大ファンだという女性ガビに話しかけられたジェームズは、彼女とその夫に誘われ一緒に食事をすることに。意気投合した彼らは、観光客は行かないようにと警告されていた敷地外へとドライブに出かける。それが悪夢の始まりになるとは知らずに......。(公式より引用)
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公式サイト↓

「スキャナーズ」や「ヴィデオドローム」など数々の名作を生み出してきた鬼才•デヴィッド・クローネンバーグ氏の息子であるブランドン・クローネンバーグ監督の最新作です。

父親であるデヴィッド氏同様にSFホラーを得意としており、人の脳と体に入り込み、遠隔操作で殺人を実行する暗殺者が主人公の「ポゼッサー」など一筋縄ではいかない独自の世界観を描いております。

今作も例に違わず非常に独創的で

◇裕福な夫婦がリゾートで訪れたリ•トルカ島。その国ではどんな犯罪を起こそうと大金を積めば自分のクローンを作ることができ、そのクローンを自身の身代わりに死刑にすることで罪を免れる

という生命に対する侮辱とすら思える非常にパンチの効いた設定がバチボコにキマっており、「これは、あなたの“性癖”に刺さるリゾートスリラー」というキャッチコピーの通り、好きな人は好きだけどハマらない人はとことんハマらないかもしれません。

ちなみに私はめちゃくちゃハマりました!

冒頭数十分を見た時点では“リゾート地を訪れた夫婦がこれから怪異に巻き込まれる”という展開なのかと予想してしまいますが、クローネンバーグ監督がそんなありきたりなことをやるわけがありません。

「リゾートスリラー?そんなもんやんねぇよ(笑)」

と鼻で笑って

『自身のクローンを身代わりに死刑に処する』

という秀逸な設定をぶちこみ、セオリーという名の筋書きを破壊していきます。そのため我々視聴者はどうあがいても先の展開を予測することができません。

主人公ジェームズ役のアレクサンダー・スカルスガルド
破滅の道を歩んでいきます。

タイトルにもなっているインフィニティプールとは

水盤や外縁を水で覆い、外縁が存在しないかのように見せかけたプールである。どこまでも限りないさまを現した表現で、外縁が海などのより大規模な水や空と混じり合い境目がわからないように見えるよう設計される。(Wikipediaより引用)

という意味で

今作では、金さえあれば何度も自身のクローンを生み出すことができる。娯楽や快楽のために殺人や犯罪行為を繰り返し、その度に自身のクローンを死刑に処する。そしていつしか自身とクローンの境目が分からなくなる…

というところが本来のインフィニティプールと掛かっており、これがまた底抜けに恐ろしいです。

クローンは記憶なども全て受け継いでいるため、死刑の時は当然抵抗もすれば命乞いもします。腹を何度もナイフで刺され、大量出血で死んでいく様を本人たちは笑いながら鑑賞します。

繰り返される犯罪行為や生命への冒涜に良心は侵されていき、命の価値、倫理観、道徳などが失われていきます。

そして私が一番恐ろしく感じたのは

今死んだのは果たして本当にクローンなのか?

という点です。

見た目も記憶もまるっきり同じなため、今死んでいく自分がクローンだなんて証拠はどこにもありません。乱痴気騒ぎでボコボコにしてションベンを引っ掛けた相手は本当に自分のクローンだったのか?、全裸で首輪を付けて犬と化したあのクローンはどうなのか?

気づけば自分とクローンの境界が失われていき、常に懐疑的になってしまいます。

ここまで来るとこれは最早パンドラの箱なのかもしれません。やっちゃだめ!想像しちゃだめ!をここまで生々しく映画に落とし込んだクローネンバーグ監督にはやはり鬼才という言葉が相応しいのかもしれません。

絶対に薬物やったことあるでしょ?と思わず聞きたくなってしまうような幻覚の数々も必見です。

そしてこの恐ろしい作品に拍車をかけるのが
ミア・ゴスの怪演です。

ガビ役のミア・ゴス

主人公ジェームズを地獄に誘い込む謎の女性ガビを演じた彼女の演技には鬼気迫るものがあり、年相応の美しい女性やあどけなさを残した少女、時には醜い中年女性のように見えるその変貌ぶりは圧巻の一言で、ふとした時のスイッチが入る瞬間の表情には釘付けになります。

最高にぶっ飛んでます。

恥ずかしながらミア・ゴス主演の「X エックス」や「パール」はまだ未視聴なので近い内に見たいと思います。

クローネンバーグからしか摂取できない“あれやこれ”を余すこと無くしゃぶり尽くせる渾身の一作!
是非とも劇場の大きなスクリーンで見ていただきたいです!

☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。

渋谷裕輝 公式HP↓


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