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neutral009 ルーティーンからNPCへ



 ルーティーンについて考えてみたい。スポーツ選手が行なっているお馴染みの一連の動作のことだ。大谷翔平も勿論だが特徴は少ないので物真似されている独自の洗練されたイチロー選手を取り上げてみよう。ネクストバッターサークルでのストレッチから始まって、バッターボックスでは膝の屈伸をして2回右腕でバットを大きく回し、左手で右肩を摘み本格的に構える。野球の求道者とてリラックスは必要。ニュートラルの状態で身体をほぐしてからギアを入れ球を待つ。
 洗顔、歯磨き、掃除、洗濯、通勤・通学などは同じ動作のルーティーン、繰り返しによって何も考えずに身体が動くようになる。反復によってニュートラルはほぼ完成し「誰でもない自分」で居られる快適な環境が整えられる。日本人は出来るだけこの環境を広げ、いわば自己を無化しようとしているようにさえ見える。自己同一性 n=1 を保とうという欧米人とは根本が違っている。それでも互いにコミュニケーションが通じ、人間関係が築けるという不可思議こそ知っておくべきなのではないかと思う。
 n=1 自己同一性は数式としても分かりやすい。明治期日本は「和魂洋才」という掛け声で近代化が行われたのであるが、急激に実行できた背景にはこのような分かりやすく解き易いという欧米の文化、背景もあっただろう。近代化が日本人が使う「合理的」(効率的)という言葉で成り立っていた故に。本来は理性に沿っているかどうかが問われる、和魂故そこは抜け落ちていた。ずる賢い、計算高いというrational(こちらも合理的と訳される。高校の社会科の恩師が指摘し、調べてみた)の意味で日本では定着してしまった。西洋根幹の「理性」そのものを深く理解しないまま、技術的には日本伝統の匠たちの下地があったから吸収も速かった。蒸気機関車の模型を与えられれば4年で同じ物を作ってしまう技術力があった。
 反対に欧米人が日本人をどの程度理解しようとしていたのか、バブル期のトヨタのカンバン方式をアメリカ企業も研究したらしいが、実際にどの程度導入されたのかは今となっては分からない。有耶無耶だ。アニメ・漫画が売り上げではハリウッドを随分前に凌いでいたが、一般人への浸透では昨今のアカデミー賞受賞での侵食や日本への観光で漸く日本文化への関心が深まって来た兆しが見えて来た。兆し、あくまでもその段階であろう。
 YouTube で発信されている海外観光客からの日本の印象、日本人が感じている日本の実感とはズレが大きく困惑しない日本人はごく稀れだろう。インフラに哲学があるとすれば限りなく快適な空間を作ろうとしている日本。公共の場が更に快適空間になるように向かっているように見える。揺れない新幹線。ノートPCが何処でも使えるように電源その他が無料で整備されていたり、一見ルーティーンとは別次元の話に見えて目指している空間は同じであろう。地方では舗装された畦道がよく見られる。農業の快適化?日本列島は隅々までニュートラルの環境に向かって行く。ニュートラルは空気のようなものでそれを生かすも殺すも自分次第なところがある。快適さだけで満足することも、その環境を更にリフレッシュさせて新しい物や文化、環境を作り出そうとすることも可能だ。
 ゲームというのはいくら負けても、殺され悔しくても部屋の空間自体が消え去ったり不快そのものになることはないだろう。スカイツリーから観光客が眺める東京の夜景はあたかも外国人向けに作られたロールプレイングゲームの街に感じられる。そこに住んで動いている我々はNPC(non player character 仮想プレイヤー)ということになる。ゲームを操作している主人公以外で動いている人物や車だ。ゲームの制作者(ゲームマスター)がプログラミングで作動させているキャラクターたち。アクターともいう。車もアクターと呼ばれる。脇役的な役割を担っている。スタンドアローン(ネットでのリアルなゲーマーとの対戦ではない)のゲームで敵となる者はCPUやCOM(computer)と呼ばれる。東京人の自分が外国人観光客によってNPCとなる、変身させられることにはワクワクするものさえ感じる。東京のネイティブサン(江戸っ子)だった自分がそれを返上させられ、東京という街の風景の一部(一要素)となってしまうのだ。自分を自意識で無理やり考えて行くんじゃなくて、このように相対化されNPCになって、無我になっている自分の姿を考えてみるきっかけにもなろう。外国人観光客は貴重なチャンスを与えてくれる有難い存在でもある。
 一義的には東京に住んでいる我々の為のこの街の筈である。例え超観光化したとしても。今のところはまだ観光化されていない街の惣菜屋にリピーターの外国人が群がっている段階のようである。日本食では「おもち」好きまでは迫って来ているがまだ「米」自体を目的で訪れる観光客は目立っていない。「米」目当てで魚沼郡に外国人が殺到ってなるといよいよ、な気がする。主食の「お米」が日本食の最後の砦?。くさやの干物というレアな食べ物は日本食を代表していないのでここでは除外するとして、減反から輸出へのチャンスが到来していることに変わりはない。農林族の政治家、農協は今回も活かせないだろう、に残念ながら一票を投じておくが、食料自給率を上げて行くチャンスにああ、何と勿体無いことか。(続く)
 2024/03/30


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