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ドイツと日本の古(いにしえ)の風習と植物の自己防衛


クリスマスマーケット

 ドイツのクリスマスといえばクリスマスマーケットが有名です。
マーケットには移動遊園地のようなものもあって、見ているだけでも楽しいですが、ブラートブルスト(Bratwurst)というソーセージを焼いてパンにはさんで食べたりする屋台料理もとてもおいしいです。

ベルリンのクリスマスマーケットの様子

ブラートブルスト(Bratwurst)

 

成木責(なりきぜ)め

 ドイツでは昔から行われているクリスマスの風習として木の根元に食べ物を置く樹木信仰と思われるものや、木に少し傷をつけて成長を願う、ちょっと変わった伝統があるそうです。

 クリスマスのころは、御馳走の余りやミルクを果樹の根元においたり、ワインを注いだりする。栗や胡桃(くるみ)を移植するときは、幹を疵(きず)つけると、早くしかも、たくさん実るという。

ヨーロッパ歳時記

 変わったことをするなと思いましたが、日本にもこれと似た風習があるそうです。ただ、今はほとんど行われていないのではないでしょうか。

 日本でも成木責(なりきぜ)めの習俗が正月のころおこなわれる。
 柿の木のところへいって家の主が鉈(なた)を振り上げて「成るか成らぬか、成らねば切ってしまうぞ」というと、柿のかげにかくれている息子が「成りまする、成りまする」と柿に代わって答える。
 すると主人は切りたおすのを止め、少し鉈目(なため)をつけ、そこにお粥(かゆ)を少々つける。その年は稔(みのり)りがよいという。

上掲書

 Wikipedia にはほかにもマレーシアやブルガリア、シチリアなどアジアからヨーロッパまで同様の行事が行われている、と書かれていますので実りと成長を願う、同一の起源を持つ習わしなのかもしれません。

植物の自衛手段

 ちょっと傷をつけて成長を促す、ということはあり得ることかなと思いますが、これに対して植物は自衛する、という話もあります。

 葉を食用する害虫の攻勢に対するポプラやサトウカエデ等の対抗策について、アメリカ、ニューハンプシャー州の植物学者たちが注目しはじめたのは1983年のことである。
 ポプラ、サトウカエデのどちらも、タンニン酸のような、防護的な化学物質を分泌し、植物を害虫にとって消化しにくくて魅力のないものにしてしまう、という、という対抗策をとっている。

アースワークス―大地のいとなみ ライアルワトソン

 植物には害虫への対抗措置として、食べられないように、自ら毒性を強めるということが知られていて、例えば無農薬野菜について、無農薬だから毒性がない、というわけでもないという話があるようです。

植物の警報

 さて、アメリカで植物を傷つけてその変化を観察する実験を繰り返していたアメリカの研究チームはその後、不思議な現象を目にします。

 実験ではコントロールされた条件の実験室内で両種の苗木を育て、そのうちのあるものの葉を昆虫に襲われたように、故意に切ったり破ったりして痛める。すると予想どおり、二日以内に両種とも化学物質による防御を二倍にして対抗してきたが、科学者たちが予想していなかったのは、まったく何の対処もしていないほかの苗木にまで、同じ変化が起こったことだった。
 この事態をさらに詳しく探るため、苗木を今度は別々の鉢に植え、それらのあいだで根による接触がないようにするとともに、葉どうしにも直接接触がないように配置した。
 それでも、何の損傷も受けていない苗木は相変わらず、故意に傷つけられたものの防御反応を真似し続けた。
 一方、ワシントン州シアトル市近くの森林で研究をすすめていた別の植物学者チームがあった。彼らも、同様な状況がヤナギやハンノキのあいだでも起こることを発見していた。
 これらの場合も、テンマクケムシやアメリカシロヒトリの幼虫の攻勢に対する自然な防御策としてアルカロイドのような化学物質を産出して、害虫たちの口に合わないようにする。
 これを現実に受けた攻撃に対する直接的反応として行うわけだが、大陸の反対側のポプラやカエデと同様、このほかにまだ荒らされていない木までが先制攻撃的な予防策を講じる、という形跡が見つかった。

 両科学者チームの結論としては、傷つけられた植物は、害虫の口にまずい化学物質だけでなく、空気中に浮遊するホルモンであるフェロモンも放ち、これが警報となって風に乗って伝わるのだろう、ということである。
 害虫による攻勢が身に迫っていることを、森の他の地域に生息する仲間の木に知らせ、攻撃に対する独自の準備を整えるよう、呼びかけるのだ。

アースワークス―大地のいとなみ ライアルワトソン

 以前、植物も音楽を聴くと健やかに育つ、などと言われたこともありましたが、これははっきりとその効果が確認される観察結果は出ていないそうです。

音楽が植物に与える影響(PDF)

 音楽の効果は定かではないですが、最近では植物も会話しているとかいう話を聞きます。本当なのでしょうか。。。ひとと同じかもしれない、という想定が過ぎるのでは、とも思いますが。


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