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ポジティブ心理学の挑戦 “幸福”から“持続的幸福”へ

読者がずっと続く豊かな幸せ(フラーリッシュ)を手に入れるために役立つ本。

著者の心理学における新しい目標
・何が人生を生きるに値するものにするのかを研究する。
・生きるに値する人生を可能とする状態を築き上げていく。

ポジティブ心理学=ウィルビーイング理論

ポジティブ心理学、ペンシルベニア大学公式サイト

人生のポジティブな側面に関するテストがすべて掲載されている。
➔テスト後にフィードバックを受けることも可能。

<序文>

人間のウェルビーイング(よいあり方)について理解する。
➔よい生き方を可能とする状態を築く。

ポジティブ心理学に携わっている人たち。
➔最高に精神的に満たされた人たち。

ポジティブ心理学の内容。
・幸せ
・フロー(没我、没頭感)
・意味、意義
・愛
・感謝
・達成
・成長
・良好な関係性
など。
=内容そのものが持続的な幸福のあり方を構成している。

<第1部 新・ポジティブ心理学>

🐾ウェルビーイングとは何か?

●新しい理論の誕生
幸せに関する著者の考え。
・タレス
➔万物は水でできていると考えた。
・アリストテレス
➔人間のあらゆる活動は、幸せになるためにあると考えた。
・ニーチェ
➔人間のあらゆる活動は、力を得るためにあると考えた。
・フロイト
➔人間のあらゆる活動は、不安を回避すするためにあると考えた。

※全員一元論という重大な誤りをおかしている。

「一元論」
人間のあらゆる動機が、結局はたった1つのものに帰着するという考え方。

一元論を認める考え方
哲学
「思考節約の法則」
➔最も単純な答えを正しい答えとするもの。

限界)
現象の複雑なニュアンスを単純にしか説明できない。
➔何も説明できなことになってしまう。

著者の当初の考え方。
➔アリストテレスに最も近い。
=全ては幸せになるため。

「幸せ」
➔乱用されすぎて、ほとんど意味をなさない言葉。
・科学には使えない。
・教育
・セラピー
・公共政策
・自分の生き方を変える
➔などにも使えない。
=著者の大嫌いな言葉。

ポジティブ心理学の第一歩。
「幸せ」の一元論を解消。
➔もっと使える言葉にする。

🐾最初の理論:幸福理論

人間がそのもののよさのために何を選ぶか。
幸せの3つの異なる要素。
「ポジティブ感情」
「エンゲージメント」
「意味・意義」
➔「幸せ」よりも正確に定義
=測定可能なもの。

「ポジティブ感情」
楽しみ、歓喜、恍惚感、温もり、心地よさ。
➔自分が「感じるもの」

ポジティブ感情を中心に一生順調に過ごす。
=「快の人生」

「エンゲージメント」
「フロー」に関すること。
・音楽との一体感
・時が止まる感覚
・無我夢中になる行為
➔忘我の感覚のこと。

フロー状態が目的の生き方。
=「充実した人生」

エンゲージメントポジティブな感情
フロー状態中何を考えているか?
=「何も」

「意味・意義」
「有意義な人生」
=自分よりも大きと信じるものに属して、そこに仕えるという生き方。
・宗教
・政党
・地球に優しいエコライフ
・ボーイスカウト
・家族
など。

🐾幸福理論からウェルビーイング理論へ

ポジティブ心理学のテーマ
=ウェルビーイング

測定する判断基準
「持続的幸福度(フラーリッシング)」

ポジティブ心理学の目標
=持続的幸福度を増大すること。
➔「ウェルビーイング理論」

幸福理論の3つの不備
欠点①「幸せ」
➔「明るい気持ち」と表裏一体。
=「ポジティブ感情」の一つであるが、幸せに対して最低限の意味しかない。

欠点②「人生の満足度」
➔幸せを測定するのに特別扱いされすぎている。

幸福論における幸せ。
=人生の満足度という判断基準。

人生の満足度の報告。
=70%以上がそのときどきの気分で決まる。
➔頭で”判断”する割合は30%にも満たない。

古い判断基準は偏った形で「気分」と結びついている。

※人生の満足度は幸福学(ハッピオロジー)以上のものをめざす理論に置いては、中心としてふさわしくない。

欠点③「人がそのもののよさのために選ぶ」
「ポジティブ感情」
「エンゲージメント」
「意味・意義」
➔要素に収まりきらない。

本書より

🐾ウェルビーング理論とは

「ウェルビーイング」
「構成概念」であり、幸せとは「もの」である。
「本物」とは直接観測できる「実在物」のこと。
➔極めて具体的な測定によって実在するものが決まる、ということ。

ウェルビーイング理論
✘ポジティブ心理学のテーマが本物であること。

テーマはウェルビーイングという「構成概念」
➔測定可能ないくつかの要素がある。

各要素は本物。
➔ウェルビーイングと関係している。

※ウェルビーイングを決める要素は何ひとつとしてない。

例)
「天気」の場合。
天気それ自体は実在するものではない。
・気温
・湿度
・風速
・気圧
など。
➔操作でき、実在するいくつかの要素が天気と関係している。
=1つの尺度だけでは完全には定義しきれない。
(「完全に定義する」を専門用語では「操作可能」と言う)

幸福理論
➔人生の満足度が幸せを操作する。
=気温と風速が体感温度を決めるようなもの。

🐾ウェルビーイングの5つの要素

ウェルビーイングには一元論に陥らずにすむいくつかの要素がある。

ウェルビーイングの要素が備えていなければならない3つの性質。
①ウェルビーイングに寄与する。
②そのもののよさのために多くの人が求める。単に他の要素を得るために求めるのではない。
③他の要素からは独立して(単独に)定義され、測定される。

ウェルビーイングの5つの要素。
「ポジティブ感情」
「エンゲージメント」
「意味・意義」
ポジティブな「関係性」
「達成」
➔頭文字を取って「PERMA(パーマ)」と表される。

●ポジティブ感情
(P:Positive Emotion)
➔快の人生
=幸福論の1つ目の要素でもある。

●エンゲージメント
(E:Engagement)
➔主観によってのみ測定される。
「自分にとって時は止まっていたか?」
「自分は仕事に完全に没頭していたか?」
「自分は没我状態にあったか?」

ウィルビーイング理論
・ポジティブ感情
・エンゲージメント
➔2つの要素のすべてが主観によってのみ測定される。

ポジティブ感情の主観的な状態
➔今現在にある。

※エンゲージメントの主観的な状態は回想的。
➔フロー状態の最中は思考や感情は存在しない。
=過去にしか存在しない。

●意味・意義
(M:Meaning)
➔自分よりも大きいと信じる存在に属して仕えること。

満たしている3つの要素
①ウェルビーイングに寄与する。
②たいてい、そのもののよさのために求められる。
③意味・意義は、ポジティブ感情やエンゲージメントとは互いに独立して定義され、測定される。
➔他の2つの要素、達成と関係性からも独立している。

●達成
(A:Achievement)
➔そのもののよさのために追求される。

例)
ゲームに勝つためではなく、上達するために学ぶ。
良いゲームが行えた。
➔勝敗関係なく素晴らしい。

達成の人生。
➔達成のための達成に捧げる人生のこと。

●関係性
(R:Relationships)
「ポジティブ心理学とは何か?」
=「他者」
➔ポジティブなもので孤独なものは少ない。

人生における素晴らしい出来事。
➔他の人がいるところで起きること。

※「他人」というのは、自分が人生のどん底にあるときには最高の防御手段となり、唯一頼れる存在。

他人に親切にする。
➔ウェルビーイング度を一時的に向上させる唯一最も信頼できる方法。

人間は感情面において群居する生き物。
➔同じ群れの中のメンバーとポジティブな関係性を持とうと不可避的に求め続ける生き物。
=関係性を重視する。

ポジティブな関係性を求める。
➔人類の成功にとって基本的なもの。

🐾ウェルビーイング理論のまとめ
ウェルビーイング構成概念
幸せではなく、ウェルビーイングこそがポジティブ心理学のテーマ。

ウェルビーイングの考察対象。
➔測定可能な要素(PEAMA)
P:Positive Emotion
=ポジティブ感情
➔幸福感と人生の満足感が要素として含まれる。
E:Engagement
=エンゲージメント
R:Relationships
=関係性
M:Meaning
=意味・意義
A:Achievement
=達成
➔どれも単独でウェルビーイングを定義する要素はない。
=各要素がウェルビーイングに寄与する。

※要素には主観的に測定される側面と、客観的に測定される側面とがある。

ウィルビーイング理論
➔5つの柱すべてに関する理論。
=5つの要素を支えるのが「強み」

🐾ポジティブ心理学の目標としての持続的幸福

自分の人生と地球上の持続的幸福の量を増やすこと。

ウェルビーイング理論におけるポジティブ心理学の目標は多元的。
➔幸福理論とは大いにお異なっている。

持続的幸福とは何か?

本書より

「基本的特徴」に6つの「付加的特徴」のうち3つを備えていなければならない。

国民の持続的幸福を目的として、各国がどのように取組を行っているかの調査。
各国2千人以上の成人を対象。

ウェルビーイングの調査項目

本書より

ヨーロッパの中ではデンマークが首位。
➔33%の市民が持続的幸福を実現した状態。

イギリスはデンマークの約半分。
➔18%の市民が持続的幸福を実現した状態。

最下位はロシア。
➔6%の市民が持続的幸福を実現した状態。

本書より

ウェルビーイング理論においてポジティブ心理学のめざすところ。
=人間の持続的幸福を測定し、構築することにある。

「自分たちを本当に幸せにしてくれるものは何だろうか?」
➔問うことから始まる。

🐾幸せを想像する

ポジティブ心理学エクササイズ
●感謝の訪問
感謝をする。
➔人生は幸せに、満足のいくものとなる。

※人は自分の人生のポジティブな出来事に伴う好ましい記憶から恩恵を受ける。

感謝の気持ちを他人に表明する。
➔相手との結びつきが強くなる。

「感謝の訪問」
頭に浮かんだ人に感謝の手紙を書いて、自分で直接その手紙を届けること。

やり方)
・手紙の内容は具体的に、かつ700~800文字程度(日本語換算300語程度)にする。
・その人が自分のために何をしてくれたのか、自分の人生にどう影響を与えたのかを具体的に書く。
・自分が今現在何をしているのかを相手に知らせる。
➔相手がしてくれたことをよく思い返していたと伝える。

サプライズで渡しに行く。
➔読んでもらった後は、お互いの気持について話し合ってみる。

🐾うまくいったことエクササイズ

人は役に立つことよりも、悪いことについて考えるのに多くの時間を費やす傾向がある。

うまくいったことについて考える。
➔その出来事をじっくり味わう。

今日うまくいったことを3つ書き出す。
➔どうしてうまくいったのかを書いてみる。

物理的に残しておくことが大事。
➔日記、パソコンでもOK。

それぞれのポジティブな出来事。
「この出来事はなぜ起きたのだろう?」
➔質問に答えてみる。

例)
夫がアイスクリームを買ってきてくれた。
Answer)
「夫はときどき本当に気が利くので」
「私が職場から夫に忘れずに電話して、帰りにお店に立ち寄ってくれるよう念を押したから」
など。

姉が健康な男の赤ちゃんを出産した。
Answer)
「神様が姉を見守っていてくれたから」
「姉は妊娠中にきちんとした生活を送っていたから」
など。

6ヶ月ぐらいで効果が出る。
➔落ち込むことが少なくなり、幸せになる。

🐾特徴的強みエクササイズ

自分の特徴的強みを新しい方法で、かつ頻繁に活用すること。
➔強みを自分のものにするよう働きかけること。

特徴的な強みの特質
・当事者意識と本来感
➔「これが本当の、自分らしい自分だ」という感覚。
・強みを発揮している最中に高揚感を得る。
・強みが初めて発揮されるときに学習曲線の急上昇が見られる。
・強みを活用する新しい方法を見つけたいという渇望感がある。
・強みを活用することへの必然性を感じる。
・強みを活用している最中は疲労ではなく活力を得る。
・強みを中心に個人的な課題を創造して追求する。
・強みを活用している最中には、喜び、活力、熱意、恍惚感を得る。

「VIA・強みテスト」受検推奨。

➔サイト上でテスト結果をすぐに入手できる。

ミシガン大学、クリス・ピーターソン開発。
200ヶ国から100万人以上が受検。
➔他の人の結果と比較することが可能。

テスト結果の上位5位の強み。
「これは自分の”特徴的強み”だろうか?」
➔問うてみる。

テスト後のエクササイズ。
1つかそれ以上の自分の特徴的強みを新しい方法で活用してみる。
➔強みを使う機会をはっきりと決めておく。

・自分の強みが「創造性」の場合。
➔脚本の執筆を始めるために、ある晩に2時間取ってみる。
・自分の強みが「希望楽観性」の場合。
➔宇宙計画の未来について自分の期待を表明するようなコラムを地方紙に宛てて書いてみる。
・自分の強みが「自己コントロール」の場合。
➔ある晩はテレビを見るのではなくジムに出かけてワークアウトしてみる。
・自分の強みが「審美眼(美と卓越性に対する鑑賞眼)」の場合。
➔通勤に20分余分にかかるとしても、職場との行き帰りに遠回りの、美しい道を選んで見る。

自分の経験について書いてみる。
➔エクササイズの前、最中、後でどう感じたか。
・難しかったか/優しかったか?
・時間が経つのが早かったか?
・自意識を失ったか?
・再びやるつもりはあるか?

🐾ポジティブサイコセラピー

ポジティブサイコセラピー(PPT)とは。
基本的な治療法の要素
・温もり
・適切な感情移入
・基本的な信頼感や純粋さ
・ラポール
(お互いに心が通じ合い、安心して相手を受け入れること)
などとともに、最も効果的なテクニックをまとめたもの。

●PPTの14のセッションに関する概説
(ラシッドとセリグマン、2011年)
セッション1
ポジティブな資源がないか、かけている場合に抑うつを引き起こし、持続させることがある。
➔空虚な人生が生み出されることもある。

「ポジティブな資源」
ポジティブ感情、徳性の強み、意味・意義

宿題)
ポジティブな自己紹介を書く。
・最高だったときの物語を具体的に語る。
・自分の最高の強みをどのように活用したいかを説明する。

セッション2
自分の徳性の強みを特定し、以前どのような状況でそれらの強みが自分の役に立ったかを話し合う。

宿題)
「VIA・強みテスト」をオンラインで完成させる。
➔自分の徳性の強みを特定する。

セッション3
徳性の強みによって、快、エンゲージメント、意味・意義が促進される可能性のある具体的な状況に集中的に取り組む。

宿題)
「よいこと日記」を書き始めること。
➔毎晩、その日に起きた3つのよいことを書く。

セッション4
抑うつが持続する場合のよい記憶と悪い記憶の役割について話し合う。

宿題)
怒りや恨みの感情を書き出すこと。
➔どのように抑うつの原因となっているかを書き出す。

セッション5
怒りや恨みの感情をニュートラルな感情に変える。
➔「ゆるし」の実践を導入する。

宿題)
「ゆるしの手紙」を書く。
➔相手の罪や、関連した感情を説明する。
=相手をゆるすと誓うこと。
(手紙は相手には送らない)

セッション6
感謝について、限りないありがたい気持ちとして話し合う。

宿題)
今まできちんと感謝の気持ちを示したことのない人に感謝の手紙を書く。
➔手紙を相手に直接届ける。

セッション7
「よいこと日記」や、強みの活用を通して、ポジティブ感情を高めることの重要性を再確認する。

セッション8
「満足者」の方が「追求者」に比べて良好なウェルビーイング状態にあるという事実について話し合う。

「満足者(サティスファイザー)」
「これで十分だ」と、最低限の条件を満たすものを選んで満足する人。

「追求者(マキシマイザー)」
「完璧を見つけなければ」と、諸々の条件を極限まで追求して選ばないと気の済まない人。

宿題)
自分の満足度を向上させる方法を再確認し、自分のための「満足計画」を考案する。

セッション9
「説明スタイル」を用いて、楽観性や希望の実践について話し合う。

「楽観的スタイル」
悪い出来事を一時的で、不安定で、その場限りのものとみなす思考スタイルのこと。

宿題)
自分の前でしまった「3つのドア」(逃してしまったチャンス)について考える。
➔その後、どんな新しい可能性が開けたか?

セッション10
自分の大切な人(複数可)の強みを確認する。

宿題)
自分の強みと、自分の大切な人の強みをたたえる時間を持つ日取りを決める。

セッション11
家族一人ひとりの持つ強みをどのように発見すればよいか、また、自分の強みがどこに由来しているのかを話し合う。

宿題)
家族に「VIA・強みテスト」をオンラインで受検するように依頼する。
➔家族全員の強みを含む家系図を描いてみる。

セッション12
「深く味わってみる」エクササイズを導入する。
➔ポジティブ感情の強度と持続時間を増やすテクニック。

宿題)
楽しい活動を計画して、実行する。
➔物事を深く味わうテクニックが具体的に書かれたリストを受け取ること。

セッション13
「時間の贈り物」をすることができる。

宿題)
かなり時間のかかることで、自分の強みが求められることを実行する。
=「時間の贈り物」をすること。

セッション14
快、エンゲージメント、意味・意義を統合する「十全な人生」について話し合う。

🐾薬とセラピーの”ばつの悪い秘密”

●治療VS症状緩和
薬の種類)
・治療を目的にしたもの。
➔薬をやめても再発しない。
・一時しのぎを目的としたもの。
➔薬をやめると再発する。

苦痛の緩和➔最善ではない。
=介入の究極目的ではない。

症状の緩和通過点。
➔現状は症状緩和で行き止まり。

精神薬物類
➔すべての薬は一時しのぎの薬。
=治療薬はない。

●65%の防壁(バリア)
サイコセラピーでの薬の効能。
➔厳密には「小さい」

抑うつに対する「効果あり」と保証されている2つの治療法。
①認知療法
➔悪い出来事についての考え方を変える。
②選択的セロトニン再取り込み阻害薬
➔SRSI、プロザックやゾロフトなどの抗うつ剤。

①②それぞれおよそ65%の改善率を得られる。
➔45~55%のプラセボ効果を伴っての数字。

※プラセボがリアルで精工であるほど、プラセボの比率は高くなる。

なぜ65%の防壁が存在するのか?
➔自己を強化するものではない。
=時間の経過とともに効果は弱まっていく。

摂取をやめる振り出しに戻る。
➔例外なく再発と逆戻りを繰り返す。

🐾積極的ー建設的反応(ACR)

夫婦カウンセリングの通例
➔配偶者ともっとうまくケンカすることを教える。
=「耐え難い」から「我慢できる」関係になるかもしれない。

ポジティブ心理学
➔良好な関係を最高の関係へと変えていくことに注意を向ける。

カリフォルニア大学サンタバーバラ校
心理学部教授、シェリー・ゲーブルが証明。
「強いきずなを予測するのはケンカのやり方ではなく、お祝いのやり方である」

本書より

4つの反応のうち1つだけが相手との関係性を築く方向に作用する。

🐾治療への新たなアプローチ

あらゆる人、あらゆる患者は、ただ「幸せになりたい」
➔ウェルビーイングの構築とを組み合わせる必要がある。

治療
=薬サイコセラピーポジティブ心理学

薬とサイコセラピーは一時的なもの。
➔症状緩和にすぎない。
=治療が終われば再発する。

セラピーの一部として症状とうまくつき合う訓練が必要。

ポジティブ心理学の具体的なスキルを学ぶ。
・もっと多くのポジティブな感情。
・もっと多くのエンゲージメント。
・もっと多くの意味・意義。
・もっと多くの達成。
・よりよい人間関係。
➔得る方法を学ぶ必要がある。

惨めさを最小にするスキル
ポジティブ心理学

ポジティブ心理学は自分で継続可能。
➔幸せがずっと続く方法そのもの。
=ウェルビーイングの追求に不可欠。

🐾ペンシルベニア大学MAPPプログラム

●MAPP(マップ)の魔法の成分
「MAPPプログラム」
応用ポジティブ心理学修士課程

3つの要素
①学びがい・教えがいがあって、役に立ち、励みになるような”内容”である。
②ポジティブ心理学には”個人的にも職業的にも変容を促す力”がある。
③ポジティブ心理学は使命感をもって取り組める”天職”である。

●応用ポジティブ心理学の授業
ポジティブ感情の「拡張ー形成」

ネガティブ感情
➔外部の刺激物を特定し対処する。
=「火消し」効果

ポジティブ感情
個人が後々の人生で活用できる、尽きることのない心理的資源(サイコロジカル・リソース)を個人内で拡張し、継続的に形成する働きをする。

ポジティブ感情
➔ただ楽しいと感じる以上の効能がある。
=心理的資本(サイコロジカル・キャピタル)が蓄積していることを示している。

例)
ポジティブな発言対ネガティブな発言の比率
会社の場合。
社内チームの会話。
2.9:1
上回る会社では経営状態が良好。
下回る会社では経営状態が悪化。

ポジティビティが多すぎてもダメ。
ネガティブなし状態。
13:1
➔信頼を失う。

夫婦の場合。
2.9:1では離婚を招く

愛情に溢れた結婚生活
➔5:1
=配偶者を1回非難するたびに5つのポジティブな発言が必要。

※持続的な幸福感を促すにはポジティブ比を適切な範囲に留める必要がある。

エナジー・ブレーク
「BRAC」
基礎的な休息と活動のサイクル。
➔人間および昼行性の動物に特有のもの。

平均的に昼前と夜に最も意識がさえている。
➔昼下がりと夜半すぎにはサイクルの底辺の部分にいる。

底辺疲れている。
・不機嫌
・不注意
・悲観的

サイクルは生物学的なもの。
➔死はBRACの底辺部分で偏って起きる。

BRACの底辺部分にあるときこそ身体活動を取り入れる。
・ダンス
・激しい運動
・メディテーション
・ウォーキング
など。
➔疲労が解消し、知的エネルギーが蘇る。

※人は年を取れば取るほど、身体を動かすことでよく学ぶことができ、よく教えられるようになる。

🐾コーチングとポジティブ心理学

「コーチング」
バックボーン(支えとなる基礎)を探究する実践行動。
・科学的でエビデンスベースドなバックボーン
・理論的なバックボーン

ポジティブ心理学
・コーチングの節度ある実践範囲を示す。
・効果のある介入や測定尺度
・コーチとしての十分な資格証明
➔提供することができる。

コーチングの実践範囲、テクニックに際限のない状態。
➔科学的、理論的なバックボーンが急務。

コーチングを変える。
➔まず理論が必要。

理論➔科学➔応用

理論)
ポジティブ心理学
・ポジティブ感情
・エンゲージメント
・意味・意義
・達成
・関係性
➔5つの人生の側面を測定し、分類し、構築しようと試みる。

試みを実践し、実践範囲を決める。
➔コーチングと関した職業を区別する。
・臨床心理学
・精神医学
・ソーシャルワーク
・結婚・家族カウンセリング
など。
=混沌とした状況に秩序をもたらす。

科学)
ポジティブ心理学
➔効果のある科学的なエビデンスに根ざしている。

実証済みの測定方法や実験方法。
・横断的研究法
・ランダム割付
・プラセボ対照実験

エビデンスベースドの介入。
ウェルビーイングに関する有効な測定法。
➔信頼できるコーチング実践の境界線を決められる。

例)
キャロライン・アダムズ・ミラー
目標設定(ゴール・セッティング)理論

●変容すること
自分たちにとってうまくいっていることに共鳴する。
➔変化への準備を支える力となる。

「360度評価」
批判に圧倒されることで変わるという考え方

批判にさらされる。
➔防御するために自分の考えに固執する。
=批判によってでは変わらない。

🐾ポジティブ教育

学校でウェルビーイングを教える。
Q:自分の子供に最も望むことは何ですか?
A:幸せ、自信、心の安らぎ、充実感、バランス、よい出来事、親切心、健康、満足、愛情、教養、意味・意義など。
=子供にとって”ウェルビーイング”は至上の優先課題。

Q:学校は子供に何を教えているでしょうか?
A:達成、考えるスキル、成功、順応、読み書きの能力、数学、勉学、受験、規律など。
=職場でいかに成功するか、ということ。

※2つの回答には重なる部分がほとんどない。

児童の学校教育
➔成人してからの仕事のための下地作り。

●ウェルビーイングを学校で教えるべきか?
若者における抑うつの有病率。
➔世界中どこでも恐ろしく高い。
=50年前のおよそ10倍。

抑うつの最初の発病
50年前➔30歳くらい
近年➔15歳未満

50年前に比べ、ほぼすべてのモノがよくなっている。
・購買力
・家の大きさ
・車の数
・進学率
・音楽
・権利
・エンターテインメント
など。
50年前の人から見たら「天国」
➔実際は天国ではない。
=幸福度には少しも反映されていない。

平均的なデンマーク人、イタリア人、メキシコ人。
➔50年前に比べて幾分満足している。

平均的なアメリカ人、日本人、オーストラリア人。
➔50年前と同様に人生に満足していない。

平均的なイギリス人とドイツ人。
➔満足度は下がっている。

平均的なロシア人。
➔さらに不幸になっている。

理由は不明。
➔生物学的、遺伝学的でないことは確か。

※近代化に関わる問題であり、誤った「繁栄」にかかわる問題。

ウェルビーイングが学校で教育されるべき理由。
①抑うつの氾濫
②幸福度がわずかしか増加していない

ウェルビーイング度が高いと学習能力が増進する。
ポジティブな気分
・幅広い注意力
・創造的な思考
・包括的な思考
➔などが生み出される。

結論)
ウェルビーイングは学校で教えられるべき。
・抑うつ患者の急増に対する特効薬。
・人生の満足度を向上させる。
・よりよい学習や創造的な思考を促す。

🐾ペン・レジリエンシー・プログラム(PRP)

ウェルビーイングに関するプログラム。
➔エビデンスベースドである必要がある。

「PRP」
青年期にありがちな日常の問題に生徒が自ら対処する能力を向上させることが目的。

現実的、柔軟に、目の前の問題について考えることを教える。
➔楽観性を促進する。
・適切なアサーティブネス
(自己表現)
・創造的なブレーンストーミング
・意思決定
・リラクセーション
・コーピングスキル
(対処技法)
などを教える。

PRPの基礎調査結果
・抑うつ症状を軽減させ、予防する。
・絶望感を軽減する。
・臨床レベルの抑うつと不安障害を予防する。
・不安感を軽減させ、予防する。
・行動障害(攻撃的な行動や非行など)を軽減する。
・異なる人種的・民族的背景をもつ子供にも同様の効果がある。
・健康に関連した行動を改善する。

PRPは若者における抑うつ、不安障害、行動障害を確実に予防する。
➔レジリエンス(精神的回復力)はポジティブ心理学におけるひつの側面。

より包括的なカリキュラム
・徳性の強み
(キャラクター・ストレングス)
・関係性
・意味・意義
➔構築するためのもの。

包括的なプログラムの目的
①自分の特徴的な強みを発見する手助けをすること。
②自分の強みを日常生活の中で活用する機会を増やすこと。
・レジリエンス
・ポジティブ感情
・意味や目的
・ポジティブな社会的関係性
➔促進することをめざす。

カリキュラムで使うエクササイズ。
例)
3つのよいことエクササイズ
1週間、3つのよいことを毎日書きとめる。
➔良いことは主観でOK。

それぞれに次のうち1つを書き添える。
「このよいことはなぜ起きたのだろうか?」
「この出来事は自分にとって何を意味するのだろうか?」
「将来、どうすればこのようなよいことをもっと経験することができるのだろうか?」

●特徴的強みを新しい方法で活用してみる。
自身の強みを特定。
➔徳性をできるだけ多く活用。
=人生に大きな満足感がもたらされる。

「VIA・強みテスト」

強みを活用するための試練。
プログラムの基礎調査結果。
・学習への関与度、学校を楽しむこと、達成
➔好奇心、向学心、創造性といった強みを向上させた。
・社会的スキルと行動障害
➔共感力、協調性、アサーティブネス、自己コントロールを向上させた。

ウェルビーイングは教えるべき。
➔個々の教室で教えることが可能。

🐾ジーロン・グラマー・スクール・プロジェクト

●ポジティブ教育を教える
単独型コース
・レジリエンス
・感謝
・強み
・意味
・フロー
・ポジティブな関係性
・ポジティブ感情
➔ポジティブ心理学の基礎を教える。

ポジティブな感情を形成するにはどうしたらよいか。
➔自分の両親に宛てて「感謝の手紙」を書く。
・よい記憶を味わうにはどうすればよいのか。
・ネガティブな先入観をどう克服すればよいのか。
・人に親切にする行為がどれほど満足の得られるものなのか。

ABCモデル
A:Adversity
➔思い込み
B:Belief
➔結果
C:Consequence
➔感情

※逆境そのものではなく、逆境についての思い込みが結果としての感情を引き起こす。

感情は、外的な出来事から生じるのではなく、”自分がどう考えるか”によって生じる。
➔実際には自分の考え方を変えることができる。

柔軟で的確な考え方をする。
➔ABCのプロセスを落ち着いてたどることを学ぶ。

<第2部 持続的幸福への道>

🐾知性に関する新理論

根気、徳性(キャラクター)、達成
●学習率
「達成スキル×努力」
スピードの1次導関数
・スピード(速さ)
速さと、無意識で処理される資料の量と、課題への精通度はそれぞれ比例する。
・スローネス(遅さ)
計画をたてること、磨き上げること、間違いをチェックすること、創造性など、達成のための任意かつ強力な情報処理過程のこと。
➔速さと知識量は比例し、その分だけ「実行機能」を働かせる時間が得られる。
・学習率
無意識化した知識の預金口座に、新しい情報をどれだけ速く貯金できるかということ。
➔ゆっくりとした実行機能の情報処理過程のためにさらに多くの時間を割り当てることができる。

「実行機能」
・障害物に注意を向けたり、無視したりする。
・新しい情報を記憶したり、利用したりする。
・活動を計画したり、修正したりする。
・突発的で衝動的な考え方や行動を抑制する。

●自己コントロールと根気(GRIT)
「努力」
過程に費やした時間の量のこと。
➔達成における非認知的要素は「努力」としてまとめられる。

あらゆる高度な専門知識の土台となるのは、神から与えられた才能ではなく、周到な練習、すなわち、周到な練習に費やした時間と労力だ

フロリダ州立大学、アンダース・エリクソン教授の主張。

自制心の高い生徒(中学2年生)の観察結果。
・学校の成績平均で高得点を取った。
・学力到達テストで高得点を取った。
・ランキングの高い高校に合格する傾向が見られた。
・宿題に多くの時間をかけ、しかも朝早くから始めていた。
・欠席が少なかった。
・テレビを見る時間が少なかった。

IQと自制心には互いにはっきりとした関連性があるわけではない。
➔IQよりも自制心の方が学業上の成功について予測するのに役立つ。

●根気VS自制心
「根気」
目標に向かうときの粘り強さと熱意の組み合わせ。

根気の根底にある理論的説明。
例)
学術論文の場合。
①よい問題について考える能力
②問題に取り組む能力
③考察に値する結果を見分ける能力
④いつ切り上げ、結果を書き上げるかを判断する能力
⑤的確に書く能力
⑥批判から前向きに学ぶ能力
⑦論文を学術雑誌に投稿する決断力
⑧修正する粘り強さ
➔8つの各要素で50%を上回る。
=生産性は25倍大きくなる。

非常に高度な努力。
➔極度に粘り強い人格的特徴に起因する。

「根気テスト」(GRIT尺度)

8つの項目への答え
①当てはまらない
②やや当てはまる
③どちらとも言えない
④やや当てはまる
⑤当てはまる

設問)
1.新しいアイデアや計画を思いつくと、以前の計画から関心がそれる。
2.私は困難にめげない。
3.物事に対して夢中になっても、しばらくするとすぐに飽きてしまう。
4.頑張りやである。
5.いったん目標を決めてから、後になって別の目標に変えることがよくある。
6.終わるまでに何ヶ月もかかる計画にずっと興味を持ち続けるのは難しい。
7.始めたことは何であれやり遂げる。
8.勤勉である。

採点方法)
1:設問2、4、7、8の得点を足し合わせる。
2:設問1、3、5、6の得点を足し合わせて、24からその合計点を引く。
3:1と2で得た得点を足し合わせて、8で割る。

研究での結果)
より高い学歴のある人により根気がある。
➔65歳以上の人が他のどの年齢層よりも根気があった。

本書より

🐾成功の要素を強化する

「達成スキル×努力」
達成に関する要素
①速いこと
②遅いこと
③学習率
④努力
➔課題に費やす時間。
課題に純粋な時間は、目標を達成するのに持ち合わせているスキルを倍増させる。またこれは、第一の要素(速さ)の一部である。
課題に時間を多く費やすほど、知識やスキルもまた増大する(身につく)。
どれくらいの時間を課題に注ぎ込むかを決定する主な特徴的決定要因は、自制心と根気である。

🐾アーミー・ストロング

総合的兵士健康度プログラム
●グローバル・アセスメント・ツール(GAT)
4つの領域で測定することを目的としたツール。
心理社会的健康度
・感情面
・社会面
・家庭面
・スピリチュアル面
➔それぞれの健康度

「GAT」
兵士を基礎レベルから上級レベルまでのさまざまなトレーニングプログラムに適切に誘導するために用いられるもの。
➔評価手段としても活用される。
=陸軍全体における心理社会的健康度の測定基準を提供。

GATの「全体的な満足度」テスト

本書より
本書より
本書より
本書より

例)
「感情面の健康度」
PTSDや抑うつの発祥にとって大きな意味合いを持つ。
「とてもよくあてはまる」
➔不安障害、抑うつ、PTSDの危険性がある。

「社会面の健康度」テスト

本書より
本書より

🐾オンライン講座

ある男性大尉のGAT得点例
平均値と比較した場合。

本書より

得点から得られるフィードバック。
・彼は陽気で楽観的な人です。
・友人や家族をとても大事にしています。
➔特徴的な強みだが、他の兵士と比べると自分の仕事にあまり打ち込んでおらず、強い目的意識が欠如している。

・困難な事柄に積極的に対処しようとしない。
・物事を柔軟に考えない。
➔ストレスや困難な状況に対処できない。

「柔軟な考え方」
「積極的な問題解決」
➔PRPのトレーニングが有効。

オンライン講座
「スピリチュアル面の健康トレーニングコース」
➔受講推奨。
=仕事面について意義を見いだせるようになる。

さらに恩恵を受ける。
「家庭面の健康トレーニングコース」
➔オンライン講座・上級編

🐾自分の感情を上手に活用しよう

ポジティブ感情を「上手に活用する」
➔何から何までポジティブ1色で物事を見ることではない。

ポジティブ感情の作用とシグナルから学ぶこと。
(a)ポジティブ感情が知らせるチャンスを十分に活かせるよう積極的に関わること。
(b)ポジティビティの頻度と持続時間を増大させる方法を見つけること。
(c)共同体のよき一員となること。

ポジティブ感情を高める。
➔成功する可能性を高めていく。

リソース・ビルダーとしてのポジティブ感情
ポジティブ感情を上手に活用する秘訣。
➔ポジティブ感情を「リソース・ビルダー」として考えること。

ポジティブな感情の経験を思い出す。
・誇らしさ
・感謝
・喜び
・満足感
・興味
・希望
など。

出来事に名称を与える。
例)
「将来について考える」
など。

出来事で経験した感情を特定する。
➔気持ち(感情)は2通りに働く。
①注意を引くこと
②反応を調整すること

※ポジティブ感情は自分たちにとって特にうまくいっていること、うまくいく可能性のあることへと目を向ける。
➔リソースが形成される機会として考えられる。

例)
・自分が興味を持つときや鼓舞されたとき。
・ある人が特に親切にしてくれたと感じるようなとき。

●家庭面の健康度に関するモジュール
家庭の人間関係における感情的な出来事。
・感情が激高した状態で電話での言い争いを終えること。
・家庭における統率力や力関係について言い争うこと。
・お互いに無視され、孤独で、疎遠だと感じてしまうコミュニケーションのあり方。
・よき友として励ますような会話ができる能力がパートナーにない場合。
・親が不在で、ひどく寂しい思いをしていることから感情をあらわにする子供をどう扱ってよいのかわからない場合。
・パートナーの一方または両方から別れ話が切り出されるという恐怖があること。
・兵士がインターネットのポルノサイトから手っ取り早くマスターベーションで満足感を得るなど、戦場に派遣された兵士たちがインターネット上で実際に多くの性的な機会を得ていることが、本国にいるパートナーたちにとっては大きな問題になっている。信用と裏切りの問題は、兵士とパートナーとの間の言い争いの中で代表的なもの。

家族関係のためのスキル。
・信頼感と安全性を築き、維持する。
・友情と親密性を築き、維持する。
・信頼感と誠実性を増大させる。
・励まし、支えとなるような電話での会話を実現する。
・争い事に建設的に、かつ穏やかに対応する。
・争い事をエスカレートさせて暴力に至るような事態を避ける。
・認知的に自分を落ち着かせる。
・生理的かつ認知的な混乱状態を抑制し、コントロールする。
・自分のパートナーを落ち着かせる。
・関係性の外部で生じるストレスを管理する。
・裏切りに対して、立ち直る。
・関係性を通して、心的外傷後ストレス障害を心的外傷後成長に変えていく。
・共有できる意味・意義を創造し、維持する。
・子ども一人ひとりとポジティブな関係を築き、維持する。
・子どもを効果的にしつける練習をする。
・子どもがそれぞれ家で自学自習できるよう手助けする。
・健全な友人関係が築けるよう子どもを支える。
・不健全な関係を断ち切るスキルを教える。
(不健全な関係を示す兆候を知る)
・家族や友人からの支援を求める。
・必要なとき専門家からの支援を求める。
・別離によるネガティブな影響から子どもを守る。
・子ども、または自分自身のために、人生を肯定する新しい関係性を選択する。

●社会面の健康度に関するモジュール

愛国心、忠誠心、従順さ、勇気、および共感の精神を高いレベルで備える人が数多くいた種族は、常に互いを支え合い、公益のために自らが犠牲になることをいとわなかった。このような種族が他の大半の種族に対して勝利を収めてきた。これが自然選択につながったのである。

チャールズ・ダーウィンの言葉

●スピリチュアル面の健康度に関するモジュール
モジュールを段階的に難易度を上げていく。
➔3段階に分ける
1段階目
落ちぶれた友人のために称賛の言葉を書く。
➔友人がかつて拠り所にしていた生きる価値観や目的に目を向けさせる。
2段階目
精神的葛藤の結果が成長または大敗につながる。
➔対話形式で進め、心の分岐点で方向性を決めるよう導く。
3段階目
他人や他の文化の価値観や信念とより一層深いつながりを見いだせるよう手助けする。

🐾トラウマを成長に変える
●心的外傷後ストレス障害
診断基準)
A:その人は、外傷的な出来事に暴露されたことがある。
B:外傷的な出来事が、再体験され続けている。
C:外傷と関連した刺激の持続的回避と、全般的反応性の麻痺。
D:持続的な覚醒亢進症状
E:障害(基準B、C、およびDの症状)の持続期間が1ヶ月以上。
F:障害は、臨床上著しい苦痛または、社会的、職業的または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

●心的外傷後成長(PTG)
極度な逆境(PTSDレベル)を経験した後の成長。

私を殺さないものは、私を一層強くする。

ニーチェの言葉

ひどい出来事を1つ経験した人。
➔経験したことがない人に比べて強靭さを備える。
(ウェルビーイング度が高かった)

ひどい経験1つ 2つ 3つ強くなる。

第1の要素
「トラウマへの反応そのものを理解する」こと。
第2の要素
「不安の軽減」
➔侵入思考と侵入イメージをコントロールする。
第3の要素
「建設的な自己顕示性」
➔トラウマに関する体験談を話すように勧める。
第4の要素
「トラウマの物語(ナラティブ)を創造する」
➔トラウマを自分史における分岐点とする。
=パラドックスに対する認識を強めるよう物語が導かれる。
・喪失と獲得がともに体験される。
・悲嘆と感謝がともに体験される。
・脆弱と強さがともに体験される。
➔どのような新しい道がひらけたかなどについて詳しく述べる。
第5の要素
「試練に対して揺るぎない、包括的な人生の教訓やスタンス」を明確に述べる。
・利他的であるための新しい生き方。
・生き残った者として、罪悪感なく成長を受け入れること。
・思いやりに満ちた人間としての新しいアイデンティティを形成すること。

🐾マスター・レジリエンス・トレーニング(MRT)

心理的な健康度を引き上げるための訓練
訓練対象者➔兵士の教官役となる軍曹。

エクササイズ内容)
・ロールプレイで、1人の軍曹が教師の役割を演じ、5人の軍曹が兵士の役割を演じる。
・5人の軍曹チームが、別の5人の軍曹チームが回答すべき難問を作成する。
・MRTトレーナーが指導する模擬セッションの間に、指導上の間違いや、内容的な混乱を確認する。
・実際に兵士たちが問題に直面する状況で活用する適切なスキルを確認する。

トレーニング内容)
・メンタルタフネス(精神的な強靭さ)を強化すること。
・強みを構築すること。
・確固たる関係性を築くこと。

●メンタルタフネスを強化する
ABCモデル
C(感情の結果)は
A(困難な出来事)からではなく
B(困難な出来事に対する信念や思い込み)から生じる。
➔単純な事実。

軍曹たち
Aの例)
職業的
➔5キロの走り込みから脱落する。
個人的
➔戦地から帰還したが、息子が自分と一緒に遊びたがらない。

Bの例)
自分が瞬時に考えること
Cの例)
自分の考えが生み出す感情や行動

Cの(感情や行動)をAの(困難な出来事)から切り離せるようになることを目標としてエクササイズを行う。

スキルセッションをこなす。
➔特定の感情を引き起こす具体的な考え考え方を特定できる。
例)
・不法侵入について考える。
➔怒りを引き起こす。
・喪失について考える。
➔悲しみを引き起こす。
・危険について考える。
➔不安を引き起こす。

「思考のわな」
例)
「過剰一般化」
ある人の価値や能力を、たった1度の行動によって判断すること。

「氷山(アイスバーグ)」
根深い思い込みで、好ましくない感情的反応につながること。

氷山についての問いかけ。
1.氷山はまだ自分にとって意味のあるものだろうか?
2.氷山は与えられた状況において的確なものだろうか?
3.氷山が「硬すぎる」(思い込みが激しすぎる)だろうか?
4.氷山は役に立つだろうか?

氷山の例)
「人に助けを求めるのは弱さの表れだ」
➔援助を求め、他人に頼りたいという意欲を蝕んでしまう。

メンタルタフネスを養うスキル。
➔PTSDの予防効果もある。

レジリエンス(楽観性)トレーニング
➔不安と抑うつ両方に対する予防効果がある。

●徳性の強み(キャラクター・ストレングス)
アサーティブ・コミュニケーション
5段階モデル)
①状況を特定し、状況を理解する。
②客観的かつ正確に状況を説明してみる。
③気になることを言ってみる。
④他の人の考え方に耳を傾ける。
➔好ましい変化にむけて努力する。
⑤変化が起きたときに伴う利点を書き上げる。

🐾ポジティブヘルス

楽観性の生物学

健康とは、単に病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、社会的にも、すべてが良好な状態にあることをいう。

世界保健機関憲章前文(1946年)より

●医療を覆す
ポジティブメンタルヘルス
「存在する」こと。
・ポジティブな感情
・エンゲージメント
・意味・意義
・良好な関係
・達成
➔存在することを指す。

精神的な健康状態
➔持続的な幸福感が存在すること。

「学習性無力感」
最初に逃避不可能な不快な出来事を経験すると受動的になり、困難に直面すると諦めてしまうこと。

学習性無力感にならない人。
➔不快、困難な出来事に対する考え方。
「すぐになくなるだろう」
「自分で何とかできるだろう」
「こんな状況は今だけだろう」
挫折から素早く立ち直る。
➔職場での失敗を自宅まで持ち帰らない。
=楽観主義者

学習性無力感になる人。
➔不快、困難な出来事に対する考え方。
「これは永遠に続きそうだ」
「これですべてが台無しになってしまう」
「自分の力ではどうすることもできない」
敗北から立ち直らない。
➔職場に私生活上の問題を持ち込む。
=悲観主義者

悲観主義者は楽観主義者より抑うつに陥りやすい。
・仕事や学業、スポーツで低い能力しか発揮できない。
・人間関係には困難が多い。

🐾悲観性、楽観性は病気に影響するか?

●心血管疾患(CVD)
最も強い楽観性を備えていた男性の罹患率。
➔平均よりも25%低かった。
最も弱い楽観性を備えていた男性の罹患率。
➔平均よりも25%高かった。

強い楽観性が病気から保護した。
➔弱い楽観ではが病気に蝕まれた。

楽観性と心血管疾患に関するすべての研究。
➔楽観性が心血管疾患から身体を保護することに強く関係しているという結論に集約される。

●感染症
より強い免疫系を持つ人が感染症をよりよく防ぐことは、科学的に明らかにされてはいない。

※心理的な状態が風邪の感染に及ぼす影響は明らかになってきた。

感情スタイルでの風邪の割合。

本書より

グラフ上:ポジティブ感情スタイル
➔風邪にかかりにくい。
グラフ下:ネガティブ感情スタイル
➔ネガティブ感情度の低い人はあまり風邪を引かなかった。
=重要なのはネガティブ感情こそが原動力ということ。
➔ネガティブ感情ではない。

ポジティブ感情が高い。
➔インターロイキン-6(IL-6)
=炎症は少なくなる。

本書より

●ガンと全死因死亡
ウェルビーイングの因果関係と身体への影響
・楽観性は心血管の結構に、悲観性は心血管の危険性に強く関係している。
・ポジティブな気分は風邪やインフルエンザの予防に、またネガティブな気分は風邪やインフルエンザに対するより大きな危険性に関係している。
・非常に楽観的な人はガンになる危険性が低い可能性がある。
・健康な人で、良好な心理的ウェルビーイングにある人は、全死因死亡に対する危険性が少ない。

なぜ楽観主義者は病気になりにくいのか
可能性)
①楽観主義者は行動的
➔健康に良いことを自ら率先して行う。
②ソーシャルサポート(社会的支援)
➔友人と愛情に恵まれている人ほど病気になりにくい。
③生物学的メカニズム
・免疫力が高い。
・ストレスによりよく対処する。

🐾ウェルビーイングの政治学・経済学

●富と幸福
「あなたの望むものが人生の満足度であるならば、お金を稼ぐのにあなたの貴重な時間をどれくらい費やすべきだろうか?」

本書より

円=国
円の大きさ=人口
①お金があればあるほど人生の満足度も大きい。
➔人生の満足度は国民1人当りのGDPが高い国ほど高くなっている。
②お金をたくさん儲けいることによって、すぐに人生の満足度において収穫逓減点に達している。

「収穫逓増(しゅうかくていぞう)」
投入量を増やしたときに追加的に得られる産出量の増分が次第に増加すること。

「イースタリン・パラドックス」
セーフティネットの下
➔お金の増大と人生の満足度の増大は同調して上昇する。
セーフティネットの上
➔幸福の増大を生み出すのにますます多くのお金が必要となる。

本書より

※GDPを、国の繁栄度を示す唯一の指標とすることがあってはならない。

測定されるものがお金に限られる。
➔あらゆる政策がさらにお金を得ることをめざすものになってしまう。

知ることだけでは十分ではない、それを使わないといけない。やる気だけでは十分ではない、実行しないといけない。

ゲーテの言葉

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