見出し画像

日本一美味しいチーズケーキ3種!(自称)。本当に、本当に美味しいんです!このケーキ達こそ正に〈論より証拠〉。ご自身でご確認下さい(笑)

シェフの進藤です。
今日ご紹介するのは、当店のショーケースに常に入っているレギュラー商品
①〈ベイクドチーズケーキ〉
と、期間限定商品2品
②〈バスクチーズケーキAMF〉
③〈クレメ〉


①〈ベイクドチーズケーキ〉
②〈バスクチーズケーキAMF〉
③〈クレメ〉

ではまず、当店の商品に関する詳しい説明の前に、一般的な〈チーズケーキ〉について少しお勉強して頂こうかと。
製菓専門学校での教員経験から、常にケーキについて誰かに教えたい欲求が…。すみませんが、少しお付き合い下さい(笑)。

ひとくちに〈チーズケーキ〉と言っても、現在のチーズケーキはレシピやその製法の違いにより、大きく3種類に分けられます。

1.【ベイクドチーズケーキ】
“オーブンで焼成する”チーズケーキの総称。よく耳にする〈ニューヨークチーズケーキ〉〈バスクチーズケーキ〉等もこちらにカテゴライズされる(例外:スフレチーズケーキ)。
基本の材料は①クリームチーズ②砂糖③卵④薄力粉。レシピによって、クリームチーズに替えてカッテージチーズやリコッタチーズ等を使ったり、全卵を卵黄に・薄力粉をコーンスターチに置換したり、生クリームを加えてみたり。基本の作り方は、材料の温度を合わせて順に混ぜ合わせるのみ。形状は、円形やスティック状、タルト生地に流して焼いた物も。
以下は、代表的な2種類のベイクドチーズケーキについて。
〈ニューヨークチーズケーキ〉
その昔、ニューヨークに移り住んだユダヤ人が広めたとされるベイクドチーズケーキ。
特徴①レシピにおけるクリームチーズの割合が多い為、必然的に濃厚な味わいに②約120℃でじっくり湯煎焼きする為、焼き色が薄く、食感はしっとり滑らか③底に、砕いたグラハムクラッカーやクッキーを敷き詰める
〈バスクチーズケーキ〉
スペイン・バスク地方サンセバスチャンにある「ラ・ヴィーニャ」というバルのチーズケーキがオリジナル。それを模したチーズケーキの総称。〈バスク風チーズケーキ〉〈バル風チーズケーキ〉とも呼ばれる。
特徴①こちらもレシピにおけるクリームチーズの割合が多い為必然的に濃厚な味わいに②200℃を越える高温で焼く事で、表面は焦げてカラメル風味、中はトロッとレアな感じに③底には何も敷かない。
食べた感じは“ベイクドチーズケーキとレアチーズケーキのいいとこ取り”と表現される。

2.レアチーズケーキ】
“焼かない”チーズケーキの総称。
英単語の〈レア〉。料理に使う際は〈生焼けの〉という意味なので少し違和感を感じ、調べてみるとやはり“和製英語”との事。ちなみに英語では“ノーベイクチーズケーキ”。
一般的な〈レアチーズケーキ〉は、“クリームチーズ”をベースに、砂糖、生クリームやヨーグルト、サワークリーム・レモン等を混ぜ、ゼラチン(凝固剤)を加えて冷蔵庫で冷やし固めたケーキ。クリームチーズの風味が濃厚で、爽やかな味わい。
特徴①焼かないので、本来のクリームチーズの味わい・滑らかさを堪能できる②卵を使用しない為、見た目は真っ白な仕上がりに③底に、砕いたグラハムクラッカーやクッキーを敷き詰める事が多い。
そして、上記とは異なるのが〈クレメダンジュ〉や〈クレメダンジェ〉と呼ばれるフランス発のレアチーズケーキ。通常は皿盛りのデザートだが、日本ではケーキに仕立てる事も。上記のクリームチーズとは違って、こちらに使用するのは〈フロマージュブラン〉。〈フロマージュブラン〉とは、牛乳を発酵させただけの熟成させていないフレッシュチーズの事。そのフロマージュブランに砂糖・泡立てた生クリームやメレンゲ等を加え、ガーゼで水分を抜いたクリームに、ラズベリー等のフルーツソースを添えて提供される。名前の“アンジュ”や“アンジェ”は、その銘菓の作られた地方、及び町を指す。

3.【スフレチーズケーキ】
“焼く”という工程があるにも関わらず〈ベークドチーズケーキ〉とはレシピ・作り方・食感が大きく異なる為、別カテゴリーに。
基本の材料は①クリームチーズ②砂糖③卵④薄力粉。レシピによって、バターや牛乳、レモンを加える事も。
〈ベークドチーズケーキ〉と〈スフレチーズケーキ〉両者の一番大きな違いは、スフレチーズケーキに〈メレンゲ〉が入る事。メレンゲとは卵白+砂糖を泡立てた物。そのメレンゲが入る事により、出来上がりが〈ふわふわなスポンジタイプのチーズケーキ〉に。海外では〈ジャパニーズ  チーズケーキ〉〈ジャパニーズ スタイル チーズケーキ〉と呼ばれる。
特徴①レシピにおけるクリームチーズの割合が少ない為、必然的にチーズの風味が控えめ②メレンゲが入る事でフワフワに③始め200℃の高温→その後温度を下げてじっくり湯煎焼きする為、出来上がりの生地がしっとりシュワシュワのスポンジ状に。

レアチーズケーキと言えば東京赤坂の〈しろたえ〉が有名(敬称略)。クレメダンジュなら〈パティシエ シマ〉。確か商品名は〈クレーム アンジュ〉だったかと。
スフレチーズケーキと言えば、私は大阪出身なので真っ先に〈りくろーおじさんの店〉が思い浮かび、私的にはもう1つ、地元の〈大黒屋〉という和洋菓子店にあるスフレチーズケーキが大好きで。学生の頃どうしても食べたくなり、自転車を飛ばして買いに行ったことも(笑)。
バスクチーズケーキといえば、ブームの火付け役となった白金のバスクチーズケーキ専門店「GAZTA(ガスタ)」が有名。

ちなみに、当店の〈ベイクドチーズケーキ(商品名)〉は、カテゴリー①ベイクドチーズケーキ→〈ニューヨークチーズケーキ〉の流れを汲むチーズケーキになり、新作の〈バスクチーズケーキAMF〉の方は言わずもがなかと(笑)。

大変お待たせ致しました。
では、以下は当店のケーキの詳しい説明になります。

〈ベイクドチーズケーキ〉

この〈ベイクドケーキ〉は、オープン当初の10年前からずーっと現在まで、中断期間無く販売している〈超ロングセラー商品〉。
当店が目指すのは〈販売する全ての商品が“驚く程美味しい”ケーキショップ〉。
そのチーズケーキ部門を長年任せているのが、この〈ベイクドチーズケーキ〉。
敢えて〈ありきたりな名前〉にしていますが、

「侮るなかれ!」

なぜなら、たくさんのケーキを食べ、たくさんのケーキを作ってきたケーキオタクなこの私が〈日本一美味しいチーズケーキ〉を自負しているチーズケーキ。
私の勝手なイメージでは、当店一番人気の〈しんどうロール〉が黄門様なら、〈ベイクドチーズケーキ〉は“助さん”な感じ。
もう1つの超ロングセラー商品である“格さん”な〈ガトー オ ショコラ〉と共に〈主役級の実力者〉、そんな感じなんです。

〈私は、このチーズケーキを買う為にわざわざ遠くから来ています〉

とおっしゃる“熱烈なファン”を既に多く獲得している事から、とっても魅力的なケーキである事に間違いはないかと。
時にはムースケーキの華やかさに見劣りしたり、ありきたりな名前にしたが故に選ばれず、なんて悲しい事もありますが〈たかがチーズケーキ〉とスルーする事なく、是非とも1度はお召し上がり頂き、当店のコンセプトである〈美味しい+ビックリ=感動〉を体験して頂きたいと思います。

私は、当店の商品に関して《オリジナリティー》にとてもこだわっており、その為、店に並べるケーキ・焼き菓子のほとんどは誰かに貰ったレシピではなく、自分で1から作成したレシピで作っています。それがポリシーなのですが、若い頃に修業先で頂いたレシピの中には、僅かではありますが〈非の打ち所の無い素晴らしいレシピ〉もありました。その中の1つが、今日ご紹介させて頂く“ベイクドチーズケーキ”の土台部分なんです。

昔の話になりますが、大阪の辻製菓専門学校卒業後、私は心斎橋にあったケーキ喫茶『パット オブライエン』(現在閉店)に就職しました。大阪アメリカ村の中にあり、細い路地を入らなければ辿り着けない隠れ家的なロケーションの人気店で、丁寧に作られた美味しいフランス菓子と、サイフォンで入れた美味しいコーヒーを提供しているお店でした。雑誌・テレビにも頻繁に取り上げられていて、そんなお店で働いている事がとても誇らしかったのを覚えています。

(株)角川書店ChouChou 2000No6号   懐かしの〈パットオブライエン〉ケーキ特集記事。       〈マーブルチーズケーキ〉はどこでしょう(笑)?

そのパットオブライエンに入社し、働き始めて数日後、お店で提供されている商品を覚える名目で当時2番人気の『マーブルチーズケーキ』(マーブル?なのにそういう名前でした)という商品を食べた時の事です。
一口食べた瞬間にびっくり!

「これは…美味しい!!」

と思ったのを今でも鮮明に覚えています。それまでに食べた事の無い濃厚で柔らかな口当たり、上質なチーズの中にバニラの良い香りがフワッと漂い、レモンではない穏やかな酸味と滑らかな舌触りがとても心地よい、素晴らしく美味しいチーズケーキでした。もちろん大変売れ行きも良く、その〈マーブルチーズケーキ〉をお一人で10ケ以上テイクアウトされるお客様や、いつもそれしか注文されないお客様も多数いて。

〈人生最高のチーズケーキ〉に早くも23才で出会ってしまいました。

若かりし頃はそれを認める事が出来なくて、いろんなレシピでベイクドチーズケーキを作っては食べ、作っては食べ、を繰り返し…あれに比べては…と。
その間も思い立っては、〈マーブルチーズケーキ〉のレシピを自分なりにいじってみる→結局納得いかずにオリジナルに戻る、そんな事を何度も繰り返しました。
そして最終的に、パットオブライエンで教わった〈マーブルチーズケーキのオリジナルレシピ〉が、〈ベイクドチーズケーキの中のベスト〉である事を認めました。
その後、悪あがきとして、その素晴らしく美味しいチーズケーキに“ベストマッチな何か”を探す事に考えをシフトし、それからまた数年間試行錯誤しました。
そして、たまたまMOF(フランス最高職人賞受賞者)の講習会で見つけた〈珍しいクッキー〉がそれに当たるとの結論に達し、そのクッキーを独特なフォルムに焼成→ケーキの上に飾って、ようやく【進藤洋菓子店】にしか無い〈ベイクドチーズケーキ〉が完成しました!
そのクッキーは一見普通のクッキーなのですが、口に入れると〈ホロホロ崩れる食感〉と〈やさしい甘み〉を感じ、そして飲み込む際に“香ばしく焼かれたアーモンドの香り”を〈強烈 !!!〉に感じる事ができます。本当に美味しいクッキーだと思います。
通常、一般的なベイクドチーズケーキはクッキーを砕いて底に敷くのが定石ですが、あえて上部に飾る事で湿気りを防ぎ、長い時間そのクッキーが持つ独特の〈アーモンド風味やサクサク感〉を保てる様に工夫しました。
そのクッキーの成形は、下の写真で分かる様に1粒1粒手作業で。1粒1g。コロコロと丸めてからくっつけて形を整え、その後焼成。その一風変わったクッキーとチーズケーキとのマリアージュ(組み合わせ)を見つけた時は、とっても嬉しかったです。

少し前、『バスクチーズケーキ』がメディアに取り上げられちょっとした〈ブーム〉になっていましたが、それを食べた今でも変わらず、当店の〈ベイクドチーズケーキ〉も肩を並べる程の〈日本一美味しいチーズケーキ〉だと自負しています。まだ召し上がった事の無い〈チーズケーキ好き〉な方には、是非とも。

お召し上がりの際は、フォークを縦にザックリとクッキー&ケーキに突き刺して、トッピングしたクッキーとチーズケーキを一緒に召し上がって下さい。そのマリアージュにビックリしてもらえると思います。
人によっては「チーズケーキの味わいと濃厚さを堪能したいので、先にクッキー、後からチーズケーキと。私は別々に食べています」との事。どうぞ、どうぞ。そーゆー理由であれば理解はできます(笑)。

では続いて、
期間限定新商品の②〈バスクチーズケーキAMF〉の説明に。


〈バスクチーズケーキAMF〉

ケーキを普段あまり食べない方でも、〈バスクチーズケーキ〉という名前くらいはどこかで耳にしたことがあるのでは?
なぜなら、すこし前までちょっとした〈ブーム〉になっていたケーキなので。

日本でこれまで起こった〈スイーツブーム〉と言えば、私が覚えている限りでは〈ティラミス〉〈ナタデココ〉〈マカロン〉〈エッグタルト〉〈カヌレ〉〈タピオカ〉〈パンケーキ〉〈クリスピークリームドーナツ〉〈生キャラメル〉…など色々あり、直近で言えば〈マリトッツォ〉と表題の〈バスクチーズケーキ〉ではないでしょうか。
軽くネットで調べると、2018年に東京白金にオープンしたバスクチーズケーキ専門店「GAZTA(ガスタ)」が、その当時、連日メディアに取り上げられたのをきっかけに〈バスクチーズケーキ〉という名前が巷で認知され始め、その後「ローソン」が〈バスチー〉なる商品を販売した事で一気に全国区になったと。

冒頭の“チーズケーキまとめ”にも書きましたが〈バスクチーズケーキ〉とは、スペイン・バスク地方サンセバスチャンにある「ラ・ヴィーニャ」という“バル”(食堂+バー)のチーズケーキがオリジナル。
ちなみに「ラ・ヴィーニャ」では〈tarta de queso(スペイン語で“チーズケーキ”の意)〉という名前で販売されているとの事。
「そのバルにはとっても美味しいチーズケーキがある」と評判になり、たくさんの人がそれを目当てに訪れるようになったようで。そして世の常ですが〈よく売れる物〉があればそれを真似する人達が必ず出てきて、結局、それを模したチーズケーキが町のあちこちで売られる事に。
なので、そういったレシピ・スタイルで作られたチーズケーキを総じて、日本では〈バスクチーズケーキ〉と呼ぶようになったようです。お店によっては〈バスク風チーズケーキ〉や〈バル風チーズケーキ〉と名付けていたりも。

そのブームが始まった頃、私は元製菓専門学校教員であるにも関わらず、恥ずかしながら〈バスクチーズケーキ〉なる物を知りませんでした。やはり、百聞は一見に如かず。早速、評判の良い〈バスクチーズケーキ〉を買ってきて実際に食べてみることに。
幾つか候補がありましたが、とりあえず1店舗に絞って購入!
そして、ひと口食べてみてビックリ!

「メチャクチャ美味しいっ!」

ひと切れ食べただけで〈ブームになった理由〉が理解できました。
カットされた先端の方は〈濃厚なチーズ感に、驚く程豊かな乳風味〉。ケーキの外側にいくにしたがってエッグタルトで味わえるような〈美味しい卵感〉があり、上下がしっかり高温で焼かれる事で、香ばしい風味が全体を包んでいて…。そして多くの人がそう表現するように、レアチーズケーキとベイクドチーズケーキの良いとこ取りな〈滑らか食感〉が心地よく…。

確かに既存のチーズケーキには無い要素を持った、素晴らしく美味しいチーズケーキでした。
と、同時にもう一つの感想が。
「これは作れそうかな…」

なぜなら、ピエール・エルメ氏のケーキやコンクール優勝ケーキ等を食べた時に感じる複雑さは皆無で、少ない素材で最大級の美味しさを表現するケーキに思えたので。
感じた材料は、ベイクドチーズケーキの基本材料の4つのみ。クリームチーズ、砂糖、卵、小麦粉。

日頃から〈作ってみたい衝動〉は抑えないようにしているので、早速レシピ棚を漁り、以前に業者から貰って放置してある大量のレシピの中から〈バスクチーズケーキ〉のレシピを発見。
案の定、レシピは単純で。

ここからが私の腕の見せ所。

〈そのレシピの持つ“長所”は消さず、もっと日本人好みなケーキに変えられるか?〉

〈ありきたりなものではなく、進藤洋菓子店にしかない物にできるか?〉

進藤洋菓子店は〈クラシックな菓子をクラシックな製法で作り、海外の食文化をそのまま伝える〉事はしない主義なんです。すみません。私はフランス人やスペイン人等の外国の方に「美味しい!」と言ってもらいたい訳ではなく(そんな時期もありましたが)、日本人に「美味しい!」と言って貰えるような菓子作りをモットーとしています。〈パティスリー〉と名乗らず〈洋菓子店〉と名乗っているのも、その理由から(笑)。
海外で暮らしてみてハッキリと理解しました。向こうで〈素晴らしく美味しいと言われてる食べ物〉でも、私が同様に〈素晴らしく美味しい〉と感じる訳では無いんです。育った環境、それに合わせた食文化に違いがあれば、すぐに受け入れられる物と、そうでない物は必ずあります。食で言うと、顎の骨格の違いや、唾液の量の違いから話さなくてはならない事もあり。

話が少しそれてしまいますが、フランスで暮らしていた頃。勉強がてら、語学学校に通う日本人数名とフランス人の友人とで、2つ星のレストランに食事に行く機会がありました。実際、料理は値段に相応の素晴らしいものでした。そして、コースの締めくくりにデザートが出てきた時の事です。ムニュ、サクッ、カリッ、とろっ。色んな食感を駆使した、レベルの高い〈レモンのデザート〉。でも、ひとくち食べて顔をしかめてしまいました。酸味がキツ過ぎて。隣の日本人の友人も同じリアクションでした。これはレシピの分量を間違ったのかな?と思いながら、向かいのフランス人の友人を見ると、彼は美味しそうにペロッと平らげているんです。そして「このデザートメチャクチャ美味しい!」との一言まで。聞くと「丁度良い酸味!」だと。
結局何が言いたいかと言うと、もし私がその〈レモンのデザート〉を作るなら〈フランス人には物足りなく感じるとしても、日本人の口に合うように酸味は減らしたい〉という事。
壮大なタイトルを付けるとすれば〈フランスの食文化を曲げる事の是非。進藤洋菓子店の功罪〉?(笑)

話を戻します。
進藤洋菓子店の〈バスクチーズケーキ〉を作るに当たって変更しなければならない点は、まず①焼き過ぎを防ぐ事。多くの店のバスクチーズケーキは焦げています。「これは美味しいコゲなんです」と言われても〈コゲはコゲ〉です。240~220℃の高温で焼成するので、ある意味焦げて当たり前。しかしそれがオリジナルだとしても、焦げは嫌いです。忘れもしません。一番最初の就職先のシェフにしつこく言われたのが
〈焦げる一歩手前がベスト〉
賛成。となると、高温・短時間で焼きながら、焦げる前に取り出さなければなりません。
次に、②しっかりと焼けている部分と、半生でトロッとしている部分の対比を明確にする。そうなれば、トロッとしている部分の火入れ問題が。卵を使うのであれば、最低でもサルモネラ菌の殺菌、70℃1分間の加熱はマスト。そこをクリアしなければ安心安全な商品として販売する事が出来ない為、上記の高温で短時間焼く事との微妙な板挟みに。
まだまだレシピ変更希望はあり、③乳風味をもっと増す為に生クリームとマスカルポーネチーズを加え、④チーズ感を上げる為にクリームチーズを増量。⑤小麦粉を加えるとどうしても固くなり、コーンスターチに置換しても余り変わらずで。しかも、それらに入っている〈デンプン〉への火入れの問題もあり…。結局、粉類は入れない事に。そうすると次は固める素材を抜いた事による保形の問題が出てきて…。

理想ばかりを考えれば実現不可能な問題が出てきて。その1つをクリアすれば次の問題が。いつもこんな〈いたちごっこ〉を繰り返してレシピは出来上がっていくんです。
今回も試作に結構な時間がかかり、いつの間にやら〈ブーム〉は終わってしまいましたが(笑)、最終的には上記の問題

①美味しい焼き色
②しっかりと火を入れた上で、中は柔らかく滑らか。外は美味しい卵風味
③豊かな乳風味
④濃いチーズ感
⑤柔らかさと保形の問題

それらを全て解決し、実現する画期的な製法を開発しました!
なので商品名は

〈バスクチーズケーキAMF〉

に。AMFはフランス語の〈a ma facon=私流の〉の略です。なので、

〈私流のバスクチーズケーキ〉

出来上がったチーズケーキは、前述の当店の人気商品〈ベイクドチーズケーキ〉と肩を並べる程の出来映えに。どちらも甲乙つけがたい〈日本一のチーズケーキ〉と自負しています。
あとは個人の好みの問題かと。
ちなみに〈ベイクドチーズケーキ〉は、チーズや乳や卵以外にバニラ・サワークリーム・クッキー等の複雑なハーモニーが美味しく。片や〈バスクチーズケーキAMF〉はダイレクトな素材の味と食感勝負な美味しさです。

新商品はいつも、お客様の反応を見る為に期間限定に。この〈バスクチーズケーキAMF〉は9月と10月の約2カ月間の販売とさせて頂きます。気になる方は、それまでにお忘れなく。

私の思う最高のベイクドチーズケーキ2種類。この機会に是非とも食べ比べては如何ですか?

断面のトロッと具合がお分かり頂けますか?


〈クレメ〉

3品目はレアチーズケーキの逸品を。

このケーキは〈フロマージュ ブラン〉と呼ばれるフランス産のフレッシュチーズを使った、フランス版〈レアチーズケーキ〉になります。
実はこのケーキ。8年前のオープン当時にも販売しており、その時は“皆さんに分かりやすい”と言う理由から、そのまんま〈レアチーズケーキ〉という商品名でした。
人気の商品でしたが、当時続々と新商品を出していく都合で一旦販売休止に。そうこうしている内に忙しくなり、手間の問題から出すタイミングを失ってそのままずっとお蔵入りとなっていました。
昨年ふと思い出し、当時のレシピを少しリニューアルして〈8年ぶり〉に再登場させました。もちろん期間限定商品としてですが。そのタイミングで、名前を最初の商品名〈レアチーズケーキ〉からフランス菓子の正式名〈クレメ〉に変更した次第です。

こちらのレシピの原形は、若い頃勤めていた東京品川 御殿山ヒルズ ラフォーレ東京 〈ル・コルドンブルーブティック〉で販売していた物になります。

話は少し逸れますが、生まれ育った大阪を離れて東京品川にあるそのホテルに転職し、神奈川県菊名にあった独身寮に移り住んだのが25才の時。その時まで大阪から出て生活した事が無かった為、日々の勤務や日常生活等全てが新鮮で。
あちこちから聞こえてくる標準語の圧力もあり、引っ越し初日から〈完全アウェーの雰囲気〉に飲まれていた自分を懐かしく思います(笑)。
職場も、社員4人程度の喫茶&ケーキショップから社員約150人のホテルへの転職だった為、戸惑う事ばかりで。あ、この話をしだすと長くなるのでまたいつか…。

そのホテルの1Fに私の所属する〈ベーカー部〉が運営するケーキショップがあり、名前は《ル・コルドンブルー》(現在閉店)。
〈ル・コルドンブルー〉と聞くとピンっと来る方がいるのでは? 
その名は知る人とぞ知るフランスの有名料理学校で、そこが運営アドバイザーとなっているお店でした。
その為、レシピはル・コルドンブルーから提供されているものも多く、商品はフランス菓子が中心。定期的に青山にある料理学校〈ル・コルドンブルー〉に勤めているフランス人も厨房を訪れたりして。まだMOF受賞前だったブルーノさんもチョコのピエスを飾りに来たり(笑)。

そう確か、今日ご紹介している〈クレメ 〉(この商品の正式名称はクレメ ドゥ トゥレーヌ)は、その当時〈ル コルドンブルーブティック〉のショーケースの中で1番人気のケーキでした。
当店で扱う商品は〈進藤オリジナル菓子である〉という事にこだわっているので、当時の物をそのまま作る気はありません。ですが、それだけ既に美味しいと認められていた物を、美味しさそのままにブラッシュアップするのは中々大変で。ですがそこはわたくし(笑)。フランスで学んできた細かなテクニックをふんだんに注ぎ、結果、更に美味しいレアチーズケーキに辿り着きました。

ケーキの構成は、水分を切って甘味をつけ、泡立てた純生クリームと合わせた〈濃厚フロマージュブランクリーム〉で、ラズベリーソース+当店特性のふわふわスポンジケーキ+食感の変化をつける為に2粒の“フレッシュブルーベリー”を包み、ガーゼで覆っています。
食べる際は、ガーゼを開いてお召し上がり下さい。
食べ方の見本として下に、ガーゼを開いた写真と、スプーンで1口食べた感じで撮影した物を貼り付けました。ご参考までに。
当前ですが、ガーゼは食べられませんのでお気をつけ下さい(笑)。

一般的にスイーツ好きな方に〈クレメ〉と言えば、〈クレメ ダンジュ〉か〈クレメ ダンジェ〉が有名かと。こちらはフロマージュブランに生クリームや〈メレンゲ〉を加えた軽やかなクリーム。私が作る〈クレメ ドゥ トゥレーヌ〉は、フランスの料理学校〈ル・コルドンブルー〉直伝の〈メレンゲ〉を加えない濃厚な物です。それ故、小さいケーキですが食べ応えは十分。
メインのチーズクリームは、ヨーグルトとチーズの良いとこ取りな風味で、爽やかな味わいなんです。メチャクチャ美味しい!
ケーキオタクなこの私が、〈日本一美味しいレアチーズケーキ〉と強くお勧めするケーキです。間違いないかと。

当店インスタの〈リール〉に〈作る工程動画〉を公開しているので、そちらも併せて是非御覧ください。

ちなみに〈クレメダンジェ〉は発祥のアンジェという町の名前を、〈クレメダンジュ〉はアンジュ地方を表し、当店の〈トゥレーヌ〉もアンジュ地方のお隣トゥレーヌ地方を表しています。
期間限定なので、食べ逃しの無いようご注意下さい。


最後にちょっと豆知識を。
実は、私が修業したフランスのパティスリーでは〈チーズケーキ〉は販売されていませんでした。基本的に、

〈フランスにチーズケーキはありません〉

元々チーズは〈塩味を楽しむ食べ物だという認識が強く、なのでフランス人には〈チーズを甘くするという考え方〉がありません。また、レストランのコース料理では、最後に〈デザート〉か〈チーズ〉のどちらかを選ばなければならない事が往々にあり、〈デザート〉を選ぶと〈チーズ〉が食べられず、〈チーズ〉を選べば〈デザート〉は食べられないんです。
なので、その両方を混ぜて〈チーズケーキ〉なんてあり得ないわけで。
とはいえ、フランス全土をくまなく探せば、ポワトゥー地方の〈トゥルトーフロマージュ〉や上記の〈クレメダンジュ〉の様な希少なチーズケーキ・チーズデザートを見つける事もできるので、フランスはやっぱり面白いです。

では、今日ご紹介した〈ベイクドチーズケーキ〉や〈バスクチーズケーキAMF〉、〈クレメ〉も〈違いの分かる大人向き〉なケーキ。
そして、いつもより強めに〈論より証拠〉。ご来店をお待ちしております。

よければ〈スキ〉〈フォロー〉を宜しくお願い致します。励みになりますので(笑)。

以下は〈バスクチーズケーキAMF〉〈クレメ〉と共に〈期間限定〉私のイチオシ商品です。こちらも是非!


この記事が参加している募集

至福のスイーツ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?