見出し画像

欧州デザインスクール(TU Delft)留学の出願エッセイ公開

こんにちは。デルフト工科大学修士のDesign for Interactionコースに在籍しているShionです。私は学部4年次の冬に卒業制作(美大)と並行して、デルフト工科大学への入学願書を出願しました。進学を決意したのが出願締め切りの2ヶ月前だったため、とにかく必死にポートフォリオとStatement of Purpose(志望動機書)を作成していたのを記憶しています。

この記事では、私が出願までに行った具体的な準備を時系列で共有しつつ、志望動機書の全文を公開します。デルフトに特化した内容になっていますが他のデザイン修士プログラムの出願にも参考になるのではないかと思います。入学後に同大学の教員や、同級生から聞いた裏話(?)もあるので多少話せたらと思います。志望動機書に関しては有料の添削サービスを使い、かなり精神を擦り減らしながら作成したので有料とさせて頂きます。なお、私が出願したのはデルフト工科大学の上記コースのみとなります。

この記事の対象になる方は、

  • デザイン留学を検討している方

  • デルフト工科大のデザイン修士を検討している方(デザインバックグラウンドではない方も入学できます)

  • デザインに限らず、デルフト工科大学の進学を検討している方

  • 今後の出願に向けて受験の傾向を知りたい方




1. 出願要件・書類をしっかりと理解する

言うまでもないことですが、提出書類や必要になるGPAなどは大学のwebサイトで確認する必要があります。
デルフト工科大学のデザイン学部の必要書類は以下になります。

・学士号取得の証明書
・成績証明書
・語学証明書
・志望動機書(1000-1500 words)
・履歴書
・パスポートのコピー
・ポートフォリオ

https://www.tudelft.nl/onderwijs/toelating-en-aanmelding/msc-international-diploma/required-documents

学士号取得の証明に関して

願書提出時に学部をまだ卒業していない方もいらっしゃると思いますが、そういった方は卒業見込みの証明書を大学で発行してもらえると思います。

成績証明書に関して

デルフトの場合、GPAの75%が足切りとなっております。ちなみに私は、学部時代にドイツに交換留学ををしていますが、ドイツ交換留学時の成績を含めないとトータルで75%に達しないことが分かり、ダメもとでドイツの留学先の成績証明書も含めて出願し、合格を頂きました。

語学証明書に関して

語学証明としてデルフトが認めている試験は以下になります。

  • TOEFL iBT

  • IELTS (academic version)

  • Cambridge Assessment English

TOFELに関しては、各技能で最低22点、IELTSでは各技能で最低6.5、Cambridge Assessment Englishでは、C1もしくはC2で最低Overall185点が必要となります。ちなみにこの足切りのスコアに関しては、ほぼ毎年変動しています。私が出願した年はIELTSでOverallで6.5があれば、各技能では6.5を下回っていても問題ありませんでした。

志望動機書に関して

志望動機はもしかするとポートフォリオよりも重要になってくるのではないかと私は個人的に思っています。なぜなら、デザインのポートフォリオはビジュアルでごまかしが効く分、審査員に好印象を与えやすいのに対して、志望動機書は、しっかりと批判的に見られている可能性が高いからです。具体的に私が行ったことについては後述します。

ポートフォリオに関して

ポートフォリオのフォーマットに関してはかなり厳しい規定があり、プロジェクトが個人なのかグループのものなのかを明記することや、指導教官の名前とメールアドレスの記載などがあります。英語でのポートフォリオ作成は、今まで英語で自分の作品をプレゼンした経験が少ない方は苦戦するかもしれません。私はかなり苦労しました。後述します。

2. まずは英語のスコアを取得(志望理由書・ポートフォリオは後回し)

私はIELTSで語学証明のスコア取得を目指しました。語学力を既にお持ちの方でも試験に慣れていなければ目標スコアを取れない可能性があるのでテスト対策をするのは必須になります。私は出願締め切りまで時間がなかったので急いで過去問を購入して、2回目の挑戦でOverall6.5を取得しました。IELTS対策と、志望動機書・ポートフォリオの作成を同時にやるのは難しいと考え、まずはIELTS取得に専念しました。

3. ポートフォリオ作成

出願ポートフォリオに関してデルフトのDesign for Interaction(以下DFI)コースは、webサイトで、"同コースが持っている姿勢を大切にしたポートフォリオを提出するように"と記しています。非常に解釈に余地のある言い回しになっているのですが、ここで私なりの考えを示せたらと思います。デルフト工科大学のデザイン工学部は、Human-Centerd Designを理念とし、リサーチプロセスをかなり重視しています。なのでそれがポートフォリオに反映されているのは必須になります。特にDFIにその傾向が強く、実際に入学してみると、プロジェクトの7割はリサーチに時間を割くので、最終成果物の見栄えは二の次といった感じです。実際、私自身は美大出身ということもあり、リサーチから得られたエビデンスをもとにシステミックにアプローチするプロジェクトはほぼゼロだった訳ですが、奇跡的に1作品ユーザビリティをテーマにしたものがあり、それをポートフォリオに入れました。ここまで聞くと、ユーザーリサーチが入っていないポートフォリオは落とされると思われてしまいそうですが、とにかくその方向性に既にある作品(プロジェクト)を寄せていくことが大切です。ユーザーリサーチのやり方は入学後に学ぶのものなので、とにかく興味関心があることをアピールできれば良いのではないかと個人的には思います。私の同級生はMITのMechanical Engineering卒でしたが、DFIに入学を果たしました。また、誤解を招かないように申し上げておくと、デルフトにはCritical Designを専門にしている研究者もおり、そっち方面 (脱Human-Centered Desgin)の作品もちゃんと評価してもらえます。参考までに1ページだけ私のポートフォリオのスクショを載せておきます。

ポートフォリオ

4. 志望動機書作成

とうとう志望動機書まで来ました。志望動機書で見られている点は主に2つあります。

  • 論理的に英語で説明する能力

  • 志望している学科についてどれだけリサーチをしているか

論理的に英語で説明する能力は、入学後にプレゼンやレポートで必要になる重要なスキルでこれがないとチームワークもできないと思われてしまいます。志望している学科に関するリサーチは、実際にデルフトの教授が書いた論文を読み、そこから自分の興味と合致しているものがあることを示せれば問題ありません。

私は執筆の際、2名の方に添削をお願いしていました。1人目は当時在籍していた大学の教員のDFIコースを卒業されている方で、その方から主に文章の構造の添削をして頂いていました。その方がいたことが私の合格を確実にしたと言っても良いくらい論理展開、文章構造に関して助けを頂きました。もう1人は当時、DMM英会話で出会ったイリノイ工科大学でデザインリサーチを学ばれた講師の方で、その方には具体的な文章の添削をかなりお願いしていました。当時の私の英語力(IELTS6.5程度)だと、自分で書いている文章の響きが少し不自然なのは感覚的に分かるのだけれど、納得できる英文が思いつけないと言う状況に陥りがちでした。プロセスとしては、

  1. まず、自分で書いてみる

  2. どうしても自分のボキャブラリーだけで足りない部分はDMMの講師と一緒に考える

  3. 出来あがった文章を持ってDFI卒の方に添削をしてもらいに大学に行く。文章の構造の直しが入る。

このサイクルをひたすら繰り返していました。「DMMの講師と一緒に考える」作業は今だったらChat GPTで置き換えられるかもしれません(当時は細かなデザインを語る上でのニュアンスのある表現を大切に文章が書きたかったので同じ経歴を持つその方を頼る意外に方法がありませんでした)。
上記の3のところに関しては、自分が時間をかけて考えた文章がことごとく「いらないから削れ」と言われたり、大幅な修正が入ることも多々ありました。今振り返ると自分には文章を構造として見る視点が足りていなかったと実感しています。このDFI卒の方が志望動機書執筆に関して非常に大切なことを言っていたのでシェアしたいと思います。それは、志望動機にはストーリーが必要であると言うことです。自分は今までどんなことをしてきて、どんなきっかけでその学科を知り、そして、どんなことがやりたいのか。このストーリーが共感できるように書かれていると良いと思います。これをデルフト側が盛り込めと指定している内容に沿わせれば良いわけです。以下がDFIが指定していた内容です。

・志望学科に対してのモチベーション
・デルフト工科大に興味を持っている理由と何を発見できることを期待して
いるか
・もし、志望学科に専攻がある場合、どの専攻に興味があるのかとその理由
・デルフト工科大に入学したらどんな卒業研究プロジェクトをやりたいか
・学士の時の卒業研究の内容 

https://www.tudelft.nl/onderwijs/toelating-en-aanmelding/msc-international-diploma/required-documents

私の場合、「ドイツ留学を経て、Research through Designに興味を持ち、デルフトで学んで行きたい」といった流れで書きました。「デルフトに入学したらどんなプロジェクトを実施したいか」についてですが、入学したら絶対にそのプロジェクトをやらなくてはいけない訳ではないので、あまり気負う必要はありません。問われている内容に漏れがないことを確認したら、私は一度だけ有料の添削サービスに文章を見てもらい、最終チェックを済ませ提出しました。


いかがでしたでしょうか。かなり文章が冗長になってしまいましたが、出願準備のリアルをお伝えしたかったので敢えて余談話も含めて話しました。当時を振り返ると、自分が果たして彼らの求める人物像であるのかが分からず場違いなのではないかと思うことがありました。ただ、後から聞いた話ですがDFIには美術系出身者枠のようなものがあり、おそらく自分はその枠で入れたのではないかとのことでした。デルフトのデザイン修士プログラムは多様性を重視しているので、自分らしさを存分にアピールしても良いのかもしれません。

以下に私の提出した志望動機書を載せます。

ここから先は

9,419字

¥ 2,000

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?