見出し画像

「とれたての短歌です。」 俵万智+浅井慎平


「心にはいくつもの部屋 好きだから言えないことと 言わないことと」



「とれたての短歌です。」 俵万智+浅井慎平


詩のような写真であり
写真のようでもある詩


31音の言葉と1葉の写真


歌と写真のマリアージュ


俵万智さんと浅井慎平さんのコラボ


たった31音の言葉で
こんなにも想いが生まれ
情景が瞼に浮かんでくる
ものなのでしょうか
言葉の記号があるだけなのに


一葉の写真の
その上に、、、
傍に、、、
余白に、、、


浮かびあがった言葉は
まるで秘密をお見通しのよう


写真と言葉の文通が
微妙に揺れる時差を
ゆっくりと満たしてくれます


二週間先の約束嬉しくて
それまで会えないことを忘れる

まっさきに気がついている
君からの手紙
いちばん最後にあける

「今いちばん行きたいところを言ってごらん」
 行きたいところはあなたのところ

西へ西へ
向かって走る食堂車
時速二百キロのコーヒー

乗りかえのホームで
反対方向の
電車に乗ってしまった心

あなたから電話が
来る日と決めている
理由はないけど
そう決めている


熱いコーヒーを飲みながら


孤独のの字と
一人のの字


「それでもいいんだ」
と慰める 恋はこひ


何十年も前に待ちわびていた
電話のことを思い出しました



【出典】

「とれたての短歌です。」 俵万智+浅井慎平 角川書店


いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。それだけで十分ありがたいです。