見出し画像

祖父が一番輝く瀬戸内の海

深く青い瀬戸内の海を、小さな船で冒険。

釣りをしたり、船上でフルーツを頬張ったり、

小さな島に降り立って泳いだり…




子どもの頃は、夏休みになると祖父母の住む
瀬戸内海の島へ帰省していました。

祖父が趣味の釣りへ連れて行ってくれる日は、
朝からみんな総出で準備をします。



祖父は釣り道具の手入れや準備。

祖母と母は、おにぎりや飲み物などの準備。

兄と私はちょこまかとお手伝い。


準備が整うとすぐ目の前にある桟橋へ向かい
祖父の小さな船に乗り込みます。


波で揺れる船に、恐る恐る飛び乗ると、
いよいよ夏の冒険のはじまりです。


ゴゴゴッーと、大きなエンジンの音。

白く泡立つしょっぱい波しぶき。




兄と私は開放的な海に向かって大声をあげ
祖父は生き生きと嬉しそうに船を操ります。



そして、全身で夏を感じるのでした。




しばらくすると祖母が缶ジュースを出してくれます。

お決まりのバヤリースのオレンジジュース。

青い海を背景にしたあのオレンジのパッケージが、なぜかとても印象に残っています。




きらめく水面に、瀬戸内の島々。



フェリーや高速船が走ると波がうまれ、
小さな船は左右に大きく揺さぶられます。

まるでちょっとしたアトラクションのように。


小船のアトラクションを楽しんでいるうちに
釣りのポイントに到着。


エンジンが静かになると、釣りが始まります。



祖父に教わりながら糸を垂らし、手で魚がかかる
感覚を待ちます。


魚も賢いので、そう簡単にはかかりません。


指先に神経を集中させて、ひたすら根気強く待ちます。



ピクッとした瞬間、急いで糸を手繰り寄せると…



元気に跳ねながらギザミがあがってきました。
(関東ではベラというそうです。)


祖父が手早く針から外し、発泡スチロールのなかへ。


釣れたときのワクワク感に魅了され、
また餌をつけて糸を垂らします。


兄は少しすると飽きて、持ってきたデラウェアを
つまみ始めますが、負けず嫌いで真面目な私は
“釣り一筋”。


こういうところに、性格がでますね。


釣りを多面的にイベントとして楽しむ兄。

釣るという目的を達成することに猪突猛進の妹。



でも、誰よりも楽しみ、誰よりもたくさん釣るのはいつも祖父でした。



祖父がかっこよく一番輝いて見える夏の海が、
私にとって特別な景色として心に残っています。




祖父母は数年前に他界したので、
もう小船に乗って冒険はできませんが、
海を眺めながら母や兄と思い出話をしたいな。


今年も帰省できず叶わぬ夢ですが、
来年こそは瀬戸内の海をめいっぱい感じて、
あのときの祖父のように、キラキラと夏を満喫したいです。


この記事が参加している募集

夏の思い出