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お年寄りが道端で「母乳?」と聞いてくる理由。それは社会の手触りかもしれない。

「あら~、可愛いわねぇ」

それはもう数年前の事。
生後3か月の子供をベビーカーに乗せてバスを待っていた、とある日。
隣で並んでいたお婆ちゃんが、子供に気付いてにこやかに話しかけてくれる。

この後のバス車内で泣き出すかもしれない…と不安な気持ちがいっぱい。
「可愛い」と存在を肯定してくれる方がいる事はとても救われた気持ちになる。

「有難うございます」

「何か月?」 
「3カ月です」

「女の子~?」
「男の子なんです」


「母乳?」


「・・・・・ミルクと半々くらいですかね(^_^;)」


え、何でそんな事聞くの??( ゚Д゚)


よく聞かれる質問TOP3


出産経験のある女性にとって、「母乳?」と聞かれた事が一度はあるのではないだろうか?

私は、冒頭の様に街中で「見ず知らずのお年寄り」からも聞かれたし、仕事で知り合った70代の男性からも聞かれた事がある。

同性ならともかく、異性の人に「母乳?」と聞かれる事に少なからず抵抗感があった。

父親にも、「母乳はちゃんと出てるの?」と聞かれて、正直良い気分ではなかった。

何でそんな事を聞きたいの?

という嫌悪感がある一方で、月齢が近い子供を持つママ同士では
「完母(完全に母乳)?ミルク?混合?」という話題は、頻繁に登場する話題だった。

これについては、「悩める子育て真っただ中の仲間同士」として全く抵抗感がなかった。

でも、この件についても「気にする人もいるから話題にしない方が良い」という意見を聞いてから、自分から話題にすることを辞めた。

「完全母乳の為に一切ミルクを与えない病院」は今でもある。
「完全母乳が絶対の正義」という価値観を植え付けらえる環境もある。

この件については、本当にセンシティブで当事者にならないと分からない感覚だろう。

「もらい乳」は助け合い


母乳なんてキーワードもすっかり口にする機会がなくなった近頃。

つい最近、中学からの友人と久しぶりの再会を果たしてランチをした帰りにエレベーターで0歳児と思われる赤ちゃんとママに遭遇した。

可愛い・・・♡
赤ちゃんって、そこに存在しているだけで可愛い。
顔を動かしたり、ちょっとした声を出したり、意思の疎通ができないからこそ可愛い。


私達はエレベーターを出た瞬間に
「可愛かったね!」「話しかけたくなっちゃうよ、おばさんだよね(笑)」
「あんまり見たら悪いかな…と思いつつ、見ちゃうよね~」
と、主語もなく感想を語り合った。

そして私は冒頭の様に、子連れで歩いていると「母乳?」と聞かれる事が、聞かれる意味が分からず嫌だったという話をした。

すると友人は
「私は一度も聞かれなかった。聞かれたら『やっぱり戦争中はもらい乳して大変だったんですか?』とか、お年寄りとお話したかった」
と話していた。

もらい乳・・・?

私はそんな発想が全くなかった。


友人と別れてからも、1人で歩きながら考えていた。

確かにミルクがなかった時代は母乳が飲めなければ生きていけない。

調べてみると、まさにその通りだった。
この記事では、歴史的背景について書かれていてとても興味深かった。

このNHKのサイトの一番最後に、とても素敵なコメントが書いてあった。

「歴史的な長い視野の中で考えると、母親が乳をあげることが母性愛の象徴とされるようになったのは近代以降で、いつの時代にも常識であったわけではありません。ただもらい乳があった時代も今も変わらないのは、いつの時代も子どもは母親一人の力では育たないということだと思います。母も子ものびのびと生きられるよう、周囲に助けてと言える社会を作っていく、それはずっと変わらない大切なことだと思っています

NHKのサイトより

母親一人の力では育たない。
周囲に助けてと言える社会。

そこに「お金」というチケットは存在していなくて、
「助け合う事が当たり前」という意識を皆が持っていた。

これはまさに、小説で読んだこの部分の事だ。

自分たちの手足を動かして助け合うしかない。それでもだめなら、がまんするしかなかった。
 社会に手触りがあったとでも言うんやろうか。みんなが助け合っていることが直に感じられた。

母乳どころか
今は、自宅に子供のお友達を呼ぶことすらない。
お友達が来て「今日、うちで夕飯食べてお風呂も入っていきなよ」なんてこともない。

公園でオジサンが子供に話しかけただけで「不審者情報」として学校のアプリに通知が来る。

助け合いに参加できる仕組みがあった

そんな中、「もらい乳」について調べていたらこんなサイトに出会った。

母乳は「完全栄養食品」として位置づけられていて、特に新生児には大事な栄養素。
だけど母乳が出ないお母さんもいるので、他のお母さんから母乳を「ドナーミルク」という形で寄付してもらう為の団体。

欧米では広く「常識」として普及しているとの事。
恥ずかしながら、私は全く知りませんでした。

当然、もう私はこの「助け合い」に参加する事はできない。

だけど、偶然にもこの記事を目にしてくれた方の中に
「ドナーミルクを提供できる」という方がいたら、是非検討してもらえたら大変嬉しく思う。


こうして啓蒙する事で、私も「社会の助け合い」に参加したい。

そして、私自身が参加できる「助け合い」にこれからもアンテナを張っていきたいと思う。

手触りのある社会の為に、ほんの少しでも貢献したい。

〈あとがき〉
それにしても赤ちゃんってどうしてあんなに可愛いんでしょう。
赤ちゃんを連れて歩いていた時はとても大変だったのに、時間が経つとそんな事はすっかり忘れて「いいな~、連れて帰りたい」とちょっと危険な事を思ってしまう(笑)
新生児室にズラーっと赤ちゃんが寝てる光景とか、たまらなく幸せな気持ちになります。

今日もありがとうございました。

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