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#37『成瀬は天下を取りにいく』(著:宮島未奈)を読んだ感想

宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』

先月の2023年3月に刊行されたばかりの宮島さんのデビュー作。
本作の中の短編「ありがとう西武大津店」で、第20 回「女による女のためのR-18 文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞しました。

ここ最近では1番かもしれないくらい、タイトル、装丁、帯文がとにかく気になった1冊です。


あらすじ

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」。
各界から絶賛の声続々、いまだかつてない青春小説! 中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。コロナ禍、閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。さらにはM-1に挑み、実験のため坊主頭にし、二百歳まで生きると堂々宣言。今日も全力で我が道を突き進む成瀬から、誰もが目を離せない! 話題沸騰、圧巻のデビュー作。

「BOOK」データベースより

感想

  • これほど疾走感と爽快感溢れる主人公は記憶にないかも

  • 成瀬の姿に、読んでいて元気がみなぎってきた

  • 滋賀が気になってしょうがない?


滋賀に住んでいる主人公・成瀬あかりを中心とした青春短編小説。
成瀬は、二百歳まで生きる、テレビに毎日映る、M-1に出場するなど明らかに異彩を放っています。


これほど疾走感と爽快感溢れる主人公は記憶にないかもしれません。

二百歳まで生きる、テレビに毎日映る、M-1に出場するなど……
一見すると成瀬の行動は意味が分からず、悪く言えば「変わり者」

でも、様々なことに取り組み、ブレない彼女はカッコよくて勇ましいと思います。読んでいると元気がみなぎってきて、何でもできそうなんじゃないかという気持ちにもなりました。
また、物事に意味があるかどうかを考える必要なんてないんだなという気持ちにもなりました。


有名人がまだ一般人だった頃はこんな感じなのかな、と思いながら読んでいました。

成瀬がまいた種はきっと大きな花を咲かす予感がします。
たとえそうならなくても、今後の成瀬あかり史を見届けたいと僕は思いました。
偉人達が大きな目標を掲げてそれを達成したように、成瀬も本当に二百歳まで生きているんじゃないかとワクワクしています。

そして、成瀬の強烈なキャラによって少しずつ変わっていく登場人物。
その中で、友人の島崎さんも良いキャラをしていました。


今は、全く縁もゆかりも無い滋賀が気になってしょうがないです。
読了後に、「近畿の中で行きたい場所は?」と聞かれたら滋賀と答えるかもしれません。

短編の中では「ありがとう西武大津店」と「ときめき江州音頭」が印象的でした。

印象的なフレーズ

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」

『成瀬は天下を取りにいく』

西武大津店の閉店もこれと似ていることに気付く。無印良品も、ロフトも、ふたば書房も、百貨店そのものも、京都や草津に行けばある。重要なのはそれらの機能が大津市におの浜に集まっていたことにあって、ばらばらになってしまっては価値がない。

『成瀬は天下を取りにいく』

教室内を見回すと、そこここで小規模なグループが発生し、線が生えていくのがわかる。ここから蜘蛛の巣みたいに線がつながってグループ化が始まり、序列が固まっていく。点の配置だけで答えがわかってしまう子ども向けの点つなぎと違い、人間関係は意外な点と点がつながる。

『成瀬は天下を取りにいく』

「わたしが思うに、これまで二百歳まで生きた人がいないのは、ほとんどの人が二百歳まで生きようと思っていないからだと思うんだ。二百歳まで生きようと思う人が増えれば、そのうち一人ぐらいは二百歳まで生きるかもしれない」

『成瀬は天下を取りにいく』

「先のことなんてわからないだろう。貴殿は二〇一九年に東京オリンピック延期を予想できたのか?」

『成瀬は天下を取りにいく』

たくさん種をまいて、ひとつでも花が咲けばいい。花が咲かなかったとしても、挑戦した経験はすべて肥やしになる。

『成瀬は天下を取りにいく』

今後の成瀬あかり史、「作家・宮島未奈」史が気になる

帯文の絶賛の文字を見ると構えてしまう僕も、本作はその通りでした。

滋賀県の有名人といえば西川貴教さんですが、今後は成瀬あかりも滋賀県の有名人となっているかもしれません。

そして、これからの「作家・宮島未奈」史も気になります。

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