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#55『ランチ酒 おかわり日和』(著:原田ひ香)を読んだ感想【読書日記】

原田ひ香さんの『ランチ酒 おかわり日和』
『ランチ酒』シリーズの第2弾です。


読んだきっかけ

『ランチ酒』を読んだ時に、まるで美味しいお店を見つけたような感じになり、続編が気になっていました。そして今回、続編となる本作を読みました。

このような方にオススメの本です

  • 『ランチ酒』を読んだことがある

  • 相手との向き合い方について悩んでいる

  • 東京の美味しいお店を探している

  • お酒が好き

あらすじ

この物語は「さびしたのしい」ひとりの時間の大切さを伝えている。
――花田菜々子さん(書店員)

珠玉の人間ドラマ×絶品グルメ小説第2弾

犬森祥子が離婚をきっかけに「見守り屋」の仕事を始めて約一年。気づけば、小三の娘と会えないまま半年が経つ。元夫が再婚して以来、面会させてもらえなかったのだ。周囲の助言もあり、久々に娘に会いに行くが――ハンバーグ×ビール、角煮丼×赤ワイン……寂しさを癒すのは夜勤明けの「ランチ酒」。心温まる人間模様、美味しい料理と酒の三位一体が味わえる口福小説第2弾。

「BOOK」データベースより

感想

  • (前作同様に)食欲と酒欲がそそられた

  • 祥子の食と人への向き合い方は素敵だと思う

  • 会いたいと思う人には直接会おうと思った

  • 急展開のラストで続きが気になる?


犬森祥子は、「見守り屋」という夜から朝まで依頼者をただ見守る仕事をしている。そんな祥子の楽しみは仕事終わりの「ランチ酒」。依頼先にある美味しい店の料理と酒に癒されているが、それは自分自身を見つめ直す大切なひと時でもある。「見守り屋」の仕事を始めてから約1年が経ち、自身の心情や周囲の人々との関わりにも変化が生まれる。


本作も前作同様に食欲と酒欲がそそられました。前作よりも肉系のメニューが多い印象。なんといっても原田さんの表現力によって、メニューの良さをより引き立たせていると思います。また、食通が好みそうなお店だけでなくチェーン店が出てきたりと、祥子が行く店はバリエーションに溢れているのも良いと感じました。


祥子の食と人への向き合い方は素敵だと思うし、色んなことを感じさせてくれます。自分の好みや価値観と合わないから否定するのではなく、受け入れる姿勢もあるのが良いと思いました。
また、何か特別な一言がなくても「そばにいる」だけで人の心は変わるかもしれない。今はスマホ1つで相手の顔を見ながら話せる便利な世の中になりましたが、会いたいと思う人には直接会おうと思いました。

見守るって簡単なようで難しいですね。様々な事情を持つ依頼者には気を遣うし、相手の内面にはずかずかと踏み込んではいけない。「見守り屋」は祥子だからこそできる仕事なのかもしれません。


祥子自身や前作からの登場人物の心情の変化も見どころがあります。本作の依頼者も個性的。特に印象的だったのは、第五酒で出てくる樋田さんです。美味しいお店の話は聞くだけでも楽しいのは、何か共感できるものがありました。

物語の展開も上下動したり、前作よりさらに色んな味を楽しめました。そして急展開のラスト。これは続きが気になるぞ!

印象的なフレーズ

――オムレツもとろとろの仕上がりだし、カツは柔らかく煮たものを丁寧に揚げているし、白飯もおいしい。三つのおいしいものをすべて吟味して作っている感じがする。だからこそのおいしさ、行列なのだろう。
ふっと思う、やはり、三つを適当に合わせてはならないのだ、三位一体なのだ、と。

『ランチ酒 おかわり日和』

「いつでも食べられるって思ってたけど、いつでも、なんてない」
「なんでもそう。ね?あなたは、きっと今、ここにあるものは、あなたの手の中にあるものは、いつまでもここにあるって思ってる。けど、違う。それを楽しめるのは本当にごくわずかな時間だけなのよ」

『ランチ酒 おかわり日和』

焼き肉だ!久しぶりの焼き肉だ。
うーん、と舌も脳もうなっている。脂と甘みという人類を墜落させる、究極の毒の味。

『ランチ酒 おかわり日和』

皆、寂しいのは同じだ。「寂しい」の一言で片づけるのは、「暇なんでしょ」「バカなんでしょ」とかの言葉と同様、その先の言葉をすべて封じてしまう。何も生まない。寂しいのは当たり前で、その中で何かを彼らは求めているのに。

『ランチ酒 おかわり日和』

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