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スーパーウラシマコレクション

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大学生となり寮暮らしを始めたレトロゲーマーうら。隣部屋から転がり込んできて居座りモンスターと化した嶋先輩。スーパーファミコンのゲームをめぐる短編小説集。ゲームを通して人生が見えて… もっと読む
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第4話 スーパー桃太郎電鉄DX

第4話 スーパー桃太郎電鉄DX

 炎天下、灼ける砂浜、寄せては返す白波に青い海、浜中に建てられたパラソルの下にバカンスを楽しむ老若男女。着ているティーシャツが汗でじっとりと濡れて気持ち悪い。荷物を今すぐ肩から下ろしたい。

 インドア派の私にとって、これほどの厳しい環境は他に無い。
 隣に立つ嶋先輩は、到着し開口一番「海だー!」と雄たけびを挙げた。麦わら帽子に大きな真っ黒のサングラスが鬱陶しい。
 普段は殆ど屋外へ出ない癖に、こ

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第3話 ドラゴンクエストⅤ

第3話 ドラゴンクエストⅤ

  今日は授業も無ければ、私はアルバイト等もしていない身。大学生にして何のサークルや部活にも所属していない私は、自分の事ながら随分しみったれた大学生活を送っているものだと嘆かわしく思う。
 何しろせっかくの休日だというのに、私は朝から嶋先輩の横で先輩がプレイするゲーム画面を眺めて暇をつぶしているだけなのだ。涙が出そうな程に、潤いが無い。
 「うらちゃん!そんな事ないよ」
 「そうでしょうか」
 「

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第2話 レミングス

第2話 レミングス

 五限が休講になった事で随分早く暇になってしまった。
 授業が無い。それは私にとって大学が無用の場所に変わるのと同義。
 クラスメイトや同回生に友達が居ないという訳では無いのだけれど、私は元々一人でじっとしているのが好きな人間なのだ。何をしていても用が済めば真っ先に家へ帰りたくなるのは、最早習性のようなものと言って良い。

 無駄に凝ったデザインのせいで迷路のように入り組んだ大学構内を抜け、駅まで

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第1話 スーパーマリオコレクション

第1話 スーパーマリオコレクション

 恐らく、寮内で未だに起きているのは私と嶋先輩の二人だけだろう。

 寮前の大通りですら交通量もまばらになってくる深夜。
 私はある種の怪物と闘っていた。何の怪物かと問われれば、「居座りモンスター」とでも答えるのが妥当だろう。或いは「地縛霊」。
 
 ここに越してきてすぐの頃、私は隣部屋の嶋先輩にさっそく目を付けられた。よくよく考えればこの時期に滑り込みでこんなに良い部屋が空くという事実に対し、私

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