見出し画像

マネジャーが配るべき「空間」と「時間」という情報

「マネジメント」という言葉は、特に日本人にとっては、なかなか共通のイメージを持ちにくいもので、ふわっと使われることが多い。

そういう状態で理解していることが多いから、いざ「マネジメント」を実践しようとしても、結局何をすればよいのかと悩んでしまう。

「マネジメント」でやるべきこと

そういう時に参考になるのが、高木晴夫氏の『プロフェッショナルマネジャーの仕事はたった1つ』だ。

同書では、マネジメントの仕事を次のように整理している。

マネジャーの本質的な仕事とは、(中略)部下たちの疑問や悩みを解決する「適切な情報を配る」ことなのです。
(出所:『プロフェッショナルマネジャーの仕事はたった1つ』)

もちろん、より上位のマネジャーになれば、各種リソース(人材や予算等)を「配る」権限が与えられるが、ミドルマネジャーとなると、そこまでの権限は与えられない。

あるいはプロジェクトマネジャーやクロスファンクショナルチームのマネジャーなども、場合によっては自らが人事権や決裁権を持っていないことも多いだろう。

そういう立場のマネジャーがやるべきことが、上で紹介した「適切な情報を配る」ということ。

「適切な情報を配る」、言い換えれば部下やメンバーにとって必要な情報を提供することで、彼らは主体的に動くようになると説いている。

マネジャーが配るべき4種類の情報

では、どのような情報を配れば良いのか?

プロフェッショナルマネジャーの仕事はたった1つ』では、特に次の4種類の情報を伝えることが、部下やメンバーの主体性を引き出すために重要だとしている。

(1) どんな状況で、その仕事がどんな意味を持つのか
(2) なぜその仕事を担当するのか
(3) その仕事はどう評価されるのか
(4) 上司は何を考えているのか

この4種類の情報は組織で仕事をする人であれば、誰もが知りたいと思うような内容だ。

このうち特に(1)の情報は、伝えられた側、つまり仕事を振られた側が、組織全体の中で、自分の仕事の位置づけを理解できるという点で非常に重要だ。

この「組織全体の中」という部分を言い換えると、組織という抽象的な「空間」の中での位置づけを伝え、理解してもらうことになる。

「時間」という範囲の中でいまの仕事の位置づけを考える

マネジャーが部下やメンバーに伝える情報として、『プロフェッショナルマネジャーの仕事はたった1つ』で紹介されている「空間」という範囲に加えて、新たに「時間」という範囲を付け加えてみることはできるだろうか?

中期経営計画で示されているような3年や5年といった「時間」の範囲、あるいはシナリオプランニングでよく使われる10年という「時間」の範囲で、今取り組んでいる部下やメンバーの仕事を位置づけてみるのだ。

そうすると、今、組織という「空間」の中で取り組んでいる部下やメンバーの仕事が、未来という「時間」の中で、どのような意味を持ち、それが未来にどうつながっていくのかを理解することができる。

つまり、部下やメンバーの仕事の位置づけを「空間」という範囲で考えてみると、それが組織の中でどう役に立っているのかを理解することができる。

次に「時間」という範囲で考えてみると、部下やメンバーの仕事が、3年や5年、あるいは10年という期間の中で、どのように役に立ち、どのように影響し、それが次にどのような仕事につながっていくのかを理解することができるだろう。

研究開発や人材開発などの成果を思い浮かべると想像がつくように、今取り組んでいる仕事が、必ずしも短期的な成果につながるわけではない。

短期的には「何のためにやっているのかわからない」と感じるものもあるはずだ。

そういう時には、組織全体の中の「空間」という観点、そして比較的先の未来までを含めた「時間」という観点の両方をあわせて、部下やメンバーの仕事の位置づけを考え、それを伝えてみるのが良いだろう。

そうすることで、部下やメンバーはもちろん、マネジャー自身も、目の前の仕事に主体的に取り組めるはずだ。

【PR】シナリオプランニングの意味やつくりかたをコンパクトに解説した実践ガイドブックを公開しています。

Photo by Tristan Gassert on Unsplash

この記事が参加している募集

推薦図書

サポートいただき、ありがとうございます。いただいたサポートはより善い未来を創るための資金として、知識や知恵の仕入れのために使っていきます。