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すー
2019年5月23日 14:28
広子(ひろこ)は56才のとき今から数年ほど前に、地震に遭って家を失った。家族も夫と息子の二人を失った。残ったのは当時20才の娘、律(りつ)だった。命からがら生き残った広子は、何をするにしても無気力さが抜けなかった。大切な家族を失って生きて何になるのだ。部屋にこもってじっとしていると、自分も後に追いたいという暗い気持ちが、あとからあとからわいてきた。「お母さん!」律が広子に声をかけた。今
2019年5月15日 10:50
陽菜(ひな)は、おばあちゃん子の12才。編み物や身の回りのものを作るのが得意なおばあちゃんをとても尊敬している。誕生日が来るともらえたニットのセーター。お手製の花のオブジェが付いたハンドバッグだっておばあちゃん製だ。お父さんやお母さんからもらえる誕生日の日の特別なお金ももちろんうれしいが、冬になると、おばあちゃん製のセーターを、必ず学校に身に着けていく。市販製のものしか着たことのない今どきのお
2019年5月13日 13:19
細野恵美(えみ)は、アラサー女子一歩手前の29才。新入社員だったころの緊張感がようやく薄れ、仕事も何とか様になってきた。 しかし、私用から自分のアパートに戻ってくるなり、はぁあ、と彼女は深いため息をついた。 心がとても、もやもやしているのだ。 理由は、私用が、会社で育てた可愛い後輩の結婚式だったからだ。 後輩は一所懸命に恵美から仕事を覚え、入社して3年目、ようやくモノになろうとい
2019年5月9日 21:31
江平徹(えひらとおる)は、誰にも言えない悩みがあった。彼はただ今、業績絶好調になっている新しい企業の社長だ。自分の得意分野を活かして、並みの会社員よりもたくさんのお金を稼いだ。彼は自分の幸運に感謝し、また、新たなアイディアを駆使して人のニーズをつかむことにも長けていたので、そこそこの評判も得ていた。彼の悩み。それは、お金を得ることにまったく喜びを感じなくなってしまったことだった。贅沢と言えるか
2019年5月8日 19:50
ゴールデンウィークのことだった。佐竹仁(さたけひとし)は家族を連れて、10連休にインドネシアへ渡った。目当てはとあるビーチ。妻の麻美(あさみ)も、14才になる娘の裕子(ゆうこ)も大喜びでついてきた。佐竹は家族でホテルを出て、人でにぎわう浜辺に着いた。まだ太陽は高く上っていて、海に光が反射してまばゆい。「さあ、泳ぐぞー」佐竹はトランクスタイプの海パン姿で、麻美と裕子に声をかけた。「ち