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息継ぎ

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自分のために吐き出したもの
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耳慣れないチャイムは絶望の音がした。

耳慣れないチャイムは絶望の音がした。

――キーンコーンカーンコーン。

耳慣れたチャイムは絶望を運んだ。
手の先が冷えていき、音は少し遠くに聞こえる。
誰もいない校舎にひとり。
私はあのときの感覚を、きっと一生忘れない。

宮澤賢治の作品に『よだかの星』というものがある。
数か月前に大学の授業で触れたことで開いた記憶の扉。
このまま閉じ込めておくのは悔しいと思うくらいには強くなったので、
小さないじめの話を、今日はしたい。

どこにで

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私は言葉に生かされて、いずれ言葉に殺される。

私は言葉に生かされて、いずれ言葉に殺される。

人は淵に立っていて、ぽんと背中を押されたら抵抗することもなく、落ちてしまうような危うさを持つ。

小さな不幸が重なって、
些細な一言が波紋となり全身に伝う。
表面張力、ギリギリで保っていた水面が揺れ、溢れる。
誰にも響かない言葉が、そのとき偶然に自分の背を押すかもしれない。

心の器に溜まった水を、全て抜く言葉がある。
淵に留める、歌詞も一節も。
目に映る景色の輪郭を鮮明にして、
広がる風景がどん

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強く、柔く、温かい。

強く、柔く、温かい。

先日、私が産まれる前から私を知っている整体師さんのもとへ訪れた。
通院は上京をきっかけに途絶えていたので
約3年ぶりに先生に会った。

骨を折ったとき、頭痛外来に掛かっているとき、
高校・大学受験のとき、と
私の身体を私より知っていると言っても過言ではない、第二のおばあちゃんのような存在である。

久々に会う先生は驚く程に変わっていなかった。
御年84歳の、優しくて頼もしい空気を以前の記憶のままに

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世の大半は、生き辛い。けれど。

世の大半は、生き辛い。けれど。

自分の生き辛さをADHDの傾向であればなんて
今の世の大半が当てはまるもののことを思っていた。

大学三年、一人暮らし。
不安定が常だが、いつもよりキツい、
このままでは危ない気がすると、落ち着いた頃を見計らって実家へ帰った。
危ういながら自然体を意識して生活してたら
あるとき母に、お世辞でも自然とは言えない空気で自然を装って「HSPって知ってる?」と聞かれた。
聡い母は私の限界に気付いているだろ

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夜に溺れる

夜に溺れる

深夜2時。
思考が止まらない。
ぐるぐるぐるぐる頭が回り、
半身が闇に沈んでいくような感覚を覚える。
目を閉じてもその黒から逃れられない。
手を空に伸ばしても、その手さえ見えなくて。

助けを求めるように開いた画面の明るさにたじろぐ。
逃げ場はここじゃない。
そう思いながら情報の波に呑まれてゆく。

思えば今日は好きなものに触れても落ち着かなかった。長く触れていられなかった。

こんな日はどうした

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例えば息をするだけで

例えば息をするだけで

例えば息をするだけで、精一杯な日がある。
生きているだけで偉いと自分を甘やかしたい日がある。

モニター前の自分は何者でもなくて、
真に誰とも繋がれないそれは、私の存在を消していった。

久々に街に出た。
改札が変わり広告が変わり、パチンコはドラッグストアに、駅前には高層ビルが建っていた。

知らない世界が何処までも広がっていた。
何処にいても新しかった。
私の時間が止まっていても、それでも世界は

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