“TF”と“DD”という、投球スタイルの仕分け
📖 文献情報 と 抄録和訳
「トール&フォール」と「ドロップ&ドライブ」の投球スタイルの比較
[背景・目的] これまでの研究で、尺側側副靭帯再建術(ulnar collateral ligament reconstruction, UCLR)を受けたメジャーリーグ(MLB, Major League Baseball)投手における「トール&フォール」(TF, “tall and fall”)と「ドロップ&ドライブ」(DD, “drop and drive”)の投球スタイルの割合が報告されている。MLBの全投手におけるこれら2つの投球スタイルの割合はまだ不明である。
●目的:MLBの全投手における1シーズン中のTFおよびDD投球スタイルの割合、ならびに上肢(upper extremity, UE)損傷を受けたTFおよびDD投手とUCLRを受けた投手の割合を明らかにすること。
[方法] 研究デザイン横断研究;証拠レベル、3。2019年シーズンのMLBにおける投手の人口統計学的特徴と投球情報をオープンアクセス経由で入手した。二次元ビデオ解析を用いて、対象投手をTF群とDD群に分類した。統計学的比較と対比は、両側t検定、カイ二乗検定、ピアソン相関分析を適宜用いて行った。
[結果] 2019年にMLBに登録された660人の投手(年齢、27.39±3.51歳、肥満度、26.34±2.47kg/m2、速球速度、150.49±3.99kph[93.51±2.48mph])のうち、412人(62.4%)の投手がTFスタイルを、248人(37.6%)の投手がDDスタイルを使用していた。
UE損傷は、DD群と比較してTF群で有意に多く認められた(それぞれ112件対38件;P < 0.001)。UCLRを受けた投手は12人(TF、10人、DD、2人)で、全投手のUCLR率は1.8%であった。2人の投手は2回目の手術であり、いずれもTF投法を用いていた。2019年以前にUCLRを受けた投手は、DD群よりもTF群の方が有意に多かった(それぞれ135人対56人、P = 0.005)。
[結論] 本研究の結果は、TF投手においてUE損傷とUCLRの既往の両方の有病率が高いことを示した。投球スタイルとUE損傷との潜在的関連性を探るため、さらなる研究が必要である。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
投球動作に関する研究をやっていて、何が最大の障壁となるか。
それは、「被験者」である。
まず人数を集めるのが大変だし、競技レベルの高い投手ほど、リクルートの難易度は高まるだろう。
だが、最も興味のある領域が、そこだったりするのだ。
その中で、今回の研究のようなフリー素材を使って分析できる手法の開発というのは夢がある。
テレビで見ているようなスター選手の動作解析や、分析がし放題になるわけなので。
そして、その結果はとても分かりやすく、「骨盤帯をドロップすることができる投球動作の方が障害リスクが少ない」というものだった。
メジャーリーガーではTFが主だったが、日本ではどうだろう?
多分、DDが主な気がする。
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