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大腿骨転子部骨折を見よ!解剖体から学ぶ骨折状況


📖 文献情報 と 抄録和訳

転子部骨折の病理解剖学-死後研究

📕Bartoníček, Jan, et al. "Pathoanatomy of pertrochanteric fractures-a postmortem study." Injury (2023): 110760. https://doi.org/10.1016/j.injury.2023.04.047
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🔑 Key points
🔹転子部骨折は3つの主要な骨片、すなわち近位骨片(骨頭と骨頚部)、遠位骨片(骨幹部)、後方骨片(平坦な皮質)で形成され、3つの骨折線で区切られている。
🔹一次骨折線は近位骨片を遠位骨片から分離し、二次骨折線は後方骨片を遠位骨片から分離し、三次骨折線は後方骨片を2つの部分に分離する。
🔹骨折の不安定性の重要な要因は後方皮質の欠損であり、これは後方骨片の大きさと形状に依存する。

[背景・目的] 最近の3次元CT再構成に基づく病態解剖学的研究により、AO/OTA分類の妥当性が疑問視されている。しかし、これらの3次元CT研究は、すべての細部を解析することはできない。そこでわれわれは、死後標本を用いて転子周囲骨折の病理解剖学的解析の可能性を追求した。

[方法] 解剖学研究所のコレクションから、股関節周囲骨折を負い受傷後30日以内に死亡した16名の股関節標本を入手した。主要骨片の数とその形状、主要骨折線のコースについて検討した。

[結果] 3種類の骨折線(一次線、二次線、三次線)で区切られた3つの主要骨折片(近位骨頭頚部骨折片、遠位骨幹部骨折片、後方扁平骨折片)が同定された。

一次線は近位骨片(骨頭と骨頚部)と遠位骨幹部骨片を分離した。二次骨折線は後方の平坦な骨片と遠位の骨幹部骨片を分断した。第3次骨折線は後方骨片を2つの部分に分けた。骨折が不安定になる主な要因は後面皮質の欠損であり、これは後面破片の大きさと形状に依存する。

小転子と隣接する皮質の剥離は、内側では不安定な骨折線の配置をもたらすが、外側では大きな後方骨片が外側転子壁を弱める。分離した後骨幹部皮質の断片の大きさは、剥離した小転子の大きさから間接的に推定することができた。

[結論] 最近のCT研究と一致して、この病態解剖学的研究の知見は、従来の転子周囲骨折の病態解剖学的分類の見方を多くの側面から変え、従来の4つの主骨片の代わりに3つの主骨片という概念を導入するものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

百聞は一見に如かず。
いつも教科書や、またレントゲン、CTで見ているのは、あくまで骨折の一側面に過ぎなかったことを知った。
今回の論文で示された数々の実際の骨折写真を見て、「こんな風になってるんだ!」と感心しきりだった。
とくに、後方欠損についてはほとんど知らなかったため、その部分の欠損が重要で、その欠損は小転子の離開度合いが関連することはとても勉強になった。

これまで、小転子の離開は腸腰筋に影響する、という認識しかしていなかったので、そこが骨折重症度全般に大きく関わることであることは、とても重要な知識に思えた。
百聞は一見に如かず、まさしくそうだ。

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