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高校陸上部のトレーナー帯同率

📖 文献情報 と 抄録和訳

イリノイ州公立・私立高校陸上競技の医学的監督

Jones, Nathaniel S., et al. "Medical supervision of Illinois public and private high school athletics." The Physician and Sportsmedicine (2021): 1-7.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 米国では、高校生のスポーツ参加者が年々増加し、それに伴い傷害の数も増加しています。全米の主要な医療・スポーツ団体では、スポーツ選手の適切な医療管理を強化するよう提唱しています。調査目的は、イリノイ州の高校における運動競技の医療保障を分析し、イリノイ州の公立高校と私立高校の違いを比較すること。

[方法] スポーツ医療保障の様々な要素を取り上げた調査票を2018年にイリノイ州高校協会(IHSA)の全高校810校に配布し、電子的に記入してもらった。

[結果] 回答率は50%(407/810校)であった。回答校のうち、私立高校は14%、公立高校は86%であった。整形外科医,家庭医,小児科医,その他の医師の帯同率は,私立高校で9.2%,公立高校で8.5%であった.アスレチックトレーナー(AT)は、私立高校の91%、公立高校の79%で帯同していた。私立高校の68%がCPRの訓練を受けたコーチを報告しているのに対し、公立高校では85%であった。私立高校、公立高校ともに、緊急時対応計画書(89% vs 91%)、AEDの設置(100% vs 99%)、脳震盪管理プロトコル(96% vs 97%)を作成している割合が高いことが示された。

[結論] 本研究では、高校の医療保険加入率は全国調査と比較してほぼ同じであったが、私立高校と公立高校の間には大きな違いがあることがわかった。イリノイ州のほとんどの高校では、EAP、脳震盪管理プロトコル、AEDを備えている率が高かった。全体として、医療監督と緊急時の備えを強化することが必要であり、そのためには、トレーナーや医師の配置を増やすとともに、地域社会や学校の関与を高め、医療保障の実施を改善する必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

私立高校のトレーナー帯同率91%、公立高校で79%

高くね?、と思った。
これには、もしかしたら非回答バイアスが関わっているかもしれない。
最近の抄読の中で、「志願者バイアス」について考察した。

✅ 志願者バイアス(≒ 自己選択バイアス)とは?
- 研究への参加・不参加が対象者の自己判断に委ねられる場合、より研究に関心のある人ほど参加しやすくなる
- それに伴い、特にO(アウトカム)に影響を与える性質において、研究参加者が標的母集団 target populationを代表しなくなることで生じるバイアスのことをいう

非回答バイアスについても、この志願者バイアスとほぼ同様だ。
今回の研究では、回答していない人たちが「50%」もいる。
その50%の中に、トレーナーが帯同していないチームが多いことが危惧されるのだ。
ちなみに、アンケート回答率50%というのは並の下の回答率だ(📕 Baruch, 2008 >>> doi.)。
そのため、非回答バイアスを加味すると、帯同率はもう少し下がると思われるが、それでも、高校へのトレーナー帯同率はかなり高くなっている。
日本では、どうなのだろうか?

もう1つ気になる視点が、「ボランティアか仕事か?(報酬有無)」である。
以前、仕事としてトレーナーをやっている人が「ボランティアのトレーナーは営業妨害である」というニュアンスの話をされていた。確かにそうだと思う。
だが、逆のことも言える。
たとえば、それまでPTの仕事の傍ら、ほとんど趣味活動に近いレベルで高校チームに帯同していた、楽しかった。そういうPTがいたとする。
そこに、仕事としてのトレーナーがやってきて、「営業妨害」だという。
そのPTにとっては、どういう思いだろう。
ここの問題は、今後、よりしっかりと見つめられる必要があるだろうし、そうなるだろうとも思う。
まだ、個人的な答えは見えない。

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