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バランスと上肢

📖 文献情報 と 抄録和訳

若年および高齢者におけるバランス能力に対するタスクの難易度の影響を、腕の動きがどのように緩和するかを探る

📕Johnson, Ellie, et al. "Exploring how arm movement moderates the effect of task difficulty on balance performance in young and older adults." Human Movement Science 89 (2023): 103093. https://doi.org/10.1016/j.humov.2023.103093
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🔑 Key points
🔹若年者と高齢者を対象に、上肢の動きがバランスに及ぼす役割を検討した。
🔹タスクの難易度がバランスに及ぼす影響を、上肢の動きがどのように緩和するかを探った。
🔹高齢者は上肢の動きが制限され、より不安定であった。
🔹上肢の運動制限効果は、困難なバランスタスクでより顕著であった。
🔹上肢制限コスト(arm restriction cost, ARC)と呼ばれる新しい尺度を提案する。

[概要] 上肢の動きは、若い成人の静かな立位バランス制御において、実質的かつ機能的に関連する寄与をしていることが、新たな証拠によって明らかになりました。加齢は、「非機能的」な代償的姿勢制御戦略(すなわち、下肢の共収縮)と関連しており、その結果、直立姿勢を制御するための上半身戦略への依存が高まる可能性がある。そこで、本研究では、若年者と高齢者を対象に、難易度の異なる課題において、上肢の自由運動と制限運動のバランス能力への影響を比較することを主目的とした。

[方法] 若年者15名(平均±SD年齢:21.3±4.2歳)と高齢者15名(平均±SD年齢:73.3±5.0歳)が、2つの上肢条件(上肢制限運動条件と上肢自由運動条件)で二足歩行、セミタンデム、タンデムのバランスタスクを実施しました。姿勢のパフォーマンスと戦略の指標として、圧力中心(center of pressure, COP)の振幅と周波数がそれぞれ算出された。

[結果] 特に高齢者では、上肢の動きを制限することで動揺の振幅と周波数が増加し、それは主に左右方向で観察された。さらに、バランス課題の難易度が高くなると、姿勢制御における腕の自由運動と制限運動の違いを定量化する新しい指標である腕制限コスト(ARC)が上昇し、高齢者ではより顕著であった。

[結論] これらの結果から、ARCはバランス制御における上半身への依存度を示す指標であり、高齢者の姿勢制御には腕の動きが重要であり、特に難易度の高い課題において重要であることが示された。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「腕の位置はどうすればいいですか?」

バランス課題をやっている時に、よく質問されることの1つ。
これに対して、今までは曖昧に答えがちだった。
今回の研究によって、難易度としては上肢位置を制限した方が高くなることが示された。

もう少し、この研究の結果の考察をしたい。
バランス反応には、カウンターウェイトとカウンターアクティビティの大きく2種類がある。

✅ カウンターウェイト(CW)とカウンターアクティビティ(CA)
<カウンターウェイト>
・目的動作にともない運動に参加する体幹以外の部位を目的方向と反対方向へ移動させることで重みを釣り合わせて運動の拡がりを制御する活動。
・例.起きあがりの際の上半身の重みに対して下肢の重さで釣り合いを合わせる
<カウンターアクティビティ>
・目的動作に対して起こる運動の拡がりに対して、その逆の方向に運動の拡がりを起こし、同時に2つの動作を行い、制御する活動。
・例. 座位の右方向への重心偏位に対して下肢の重さではなく体幹部の立ち直りにより重心を左に戻す

📕冨田, 2010. 理学療法研究 (27): 3-9, 2010. >>> site.

上肢は、立位バランスにおいて、カウンターウェイトの役割を果たしている。
それを制限することは、すなわち、当事者のカウンターアクティビティ能力が晒されることになる。
それは難易度を上げることにもなるし、カウンターアクティビティ機能に負荷を加えることにもなっている。
つまり、練習になる。

バランス機能をCWとCAの2つに分けて評価し、CAの向上を求めたい場合には、上肢制限をすることが適切。
一方、CAの能力は良好だが、CW戦略の動員が不十分である場合、上肢は解放すべきだろう。

バランス機能の評価-介入の引き出しが、1つ増えた!
嬉しい。

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