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筋トレはROMを増大する

📖 文献情報 と 抄録和訳

筋力トレーニングは可動域の改善を誘導する: システマティックレビューとメタアナリシス

📕Alizadeh, Shahab, et al. "Resistance Training Induces Improvements in Range of Motion: A Systematic Review and Meta-Analysis." Sports Medicine (2023): 1-16. https://doi.org/10.1007/s40279-022-01804-x
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🔑 Key points
🔹外部負荷による筋力トレーニングは、可動域を中程度に改善することができる
🔹可動域の改善は、筋力トレーニングとストレッチトレーニングの間に有意な差はない
🔹筋力トレーニングの前または後に、柔軟性を高めるために追加のストレッチを行う必要はないかもしれない
🔹ストレッチトレーニングは、多くの人がフィットネスやトレーニングの要素として提唱し、競技前のウォームアップの構成要素として取り入れることができる

[背景・目的] 筋力トレーニングはストレッチトレーニングと同様に関節可動域を広げる効果があることが知られていますが、これまで、筋力トレーニングの可動域に対する効果を、その潜在的な影響変数をすべて含めて調査した包括的なメタ解析は行われていない。
目的:本メタアナリシス付きシステマティックレビューの目的は、慢性的なレジスタンストレーニングが可動域に及ぼす影響を、対照条件またはストレッチトレーニング、またはレジスタンストレーニングとストレッチトレーニングの組み合わせのいずれかと比較して、調節変数を評価しながら評価することであった。

[方法] デザイン:主解析にはランダム効果メタ解析を用い、サブグループ解析には混合効果モデルを導入した。サブグループ解析では性別と参加者の活動レベルを、メタ回帰では年齢、筋力トレーニングの頻度、期間を考慮した。データソース4つのデータベース(PubMed、Scopus、SPORTDiscus、Web of Science)および参考文献リストでの系統的検索の結果、55件の研究が適格であることが判明した。適格性基準健康な参加者を対象に、レジスタンストレーニングエクササイズと対照群、ストレッチ群、ストレッチとレジスタンストレーニングを組み合わせた群のいずれかと、可動域に関するトレーニング効果を個別に比較した対照試験またはランダム化比較試験。

[結果]
■ 筋力トレーニング群 vs. 対照群
・筋力トレーニングは可動域を増加させた(Effect size[ES]=0.73;p<0.001)
・ただし、体重のみを用いたレジスタンストレーニングでは有意な可動域の向上は見られなかった。

■  筋力トレーニング群 vs. ストレッチ群
・筋力トレーニング対ストレッチトレーニング(ES = 0.08; p = 0.79)、レジスタンストレーニングおよびストレッチトレーニング対ストレッチトレーニング単独(ES = - 0.001; p = 0.99)の間にも有意な差はなかった。

■ その他の要因と筋トレの関節可動域増大効果
・「トレーニングを受けている人や活動的な人」は可動域を増加させたが(ES = 0.43; p < 0.001)。「トレーニングを受けていない人や座りがちな人」は可動域の変化の大きさが有意(p = 0.005) に大きかった(ES = 1.042; p < 0.001).
・性別と収縮タイプによる差は検出されなかった。
・メタ回帰では、年齢、トレーニング期間、頻度による影響は見られなかった。

[結論] 外部負荷による筋力トレーニングは可動域を向上させることができるため、筋力トレーニング前後のストレッチは柔軟性を高めるために必要ない場合がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

唇歯補車(しんしほしゃ)という言葉があって、僕はこの言葉が好きだ。
たとえば、唇と歯は食べるときに一緒になって働く。
このように、密接な関係にあって、お互いが助け合うことによって成り立つこと、持ちつ持たれつの関係を指す言葉。

筋力トレーニング(筋力の動員)と関節可動域は、まさに唇歯補車の関係だと思った。
例えば、膝を曲げようと思えば、膝の屈曲可動域と、膝の屈伸筋力が双方働く必要がある。
つまり、筋力と関節可動域の関係性は、以下のように捉えられる。

片方を動員することは、もう片方も動員されること。
片方を鍛えることは、もう片方も鍛わる可能性がある、ということ。

そして、今回抄読した研究は、まさにそのことを明らかにした。
筋力トレーニングは、関節可動域を増大し、その効果はストレッチと差がないという。
具体的に、この筋トレが関節可動域を増大する仕組みは何だろう?
これまでの文献抄読からの2つの仮説を紹介する。

①筋力トレーニングが筋膜を伸ばす→ROM↑

②インターナルショートニング→腱・筋腱の伸張→ROM↑

注目すべきは、論文アブストの結論。

外部負荷による筋力トレーニングは可動域を向上させることができるため、筋力トレーニング前後のストレッチは柔軟性を高めるために必要ない場合がある。

ストレッチ→筋トレ、ではなく筋トレがストレッチも包含しているかもしれない。

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