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TKA×術前理学療法。疼痛への対処能力を与える


📖 文献情報 と 抄録和訳

疼痛への破局的思考が強い人工膝関節置換術患者の術前理学療法を受けた場合と受けなかった場合の周術期の経験

📕Ochandorena-Acha, Mirari, et al. "Perioperative experiences of patients with high pain catastrophism and knee arthroplasty after receiving or not preoperative physiotherapy: Qualitative study." Musculoskeletal Science and Practice (2024): 102918. https://doi.org/10.1016/j.msksp.2024.102918
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🔑 Key points
🔹参加者の周術期経験は理学療法の有無で異なる
🔹術前理学療法は参加者の自己効力感と管理能力を向上させた。
🔹術前理学療法は患者に痛みに対する積極的な対処能力を与えた。
🔹術前理学療法はリハビリテーション中の参加者に力を与えた。
🔹術前理学療法を受けなかった参加者は痛みへの対処に限界があった。

[背景・目的] 人工膝関節全置換術(TKA)後の疼痛持続のリスク因子として研究されているものの中で、疼痛への破局的思考が際立っている。この点に関して、疼痛への神経科学的教育やマルチモーダル理学療法に基づく術前介入が疼痛破局的思考の軽減に有効であることが示されている。目的:本質的研究の目的は、人工膝関節全置換術を受ける疼痛への破局的思考が強い参加者の周術期の経験を探ることである。術前に理学療法介入を受けた者と受けなかった者との比較を行う。

[方法] 無作為化比較試験の参加者を無作為抽出法により抽出した。合計14人が対面式の半構造化面接に参加した。

[結果]
1)症候性人工膝関節置換術患者の術前経験(健康、機能、認知、行動に関する側面)
・理学療法介入を受けた参加者は、痛みに対処する能力、自己効力感、自己管理能力を認識していた。
2)TKA周術期のリハビリテーションプロセス(術前理学療法介入を受けた患者と受けなかった患者の経験の違いを示す)
・参加者はリハビリテーションに参加し、運動に対する恐怖を感じず、痛みは一時的なものであり、リハビリテーションの一部であると認識していた。
・術前に介入を行わなかった標準治療を受けた参加者は、術後のリハビリテーションにおいて、限定的で受動的な対処戦略を示した。

[結論] 術前理学療法を受けなかった参加者は、術後のリハビリテーションにおいて限られた対処法しか示さず、術前と同じ認知(過敏、反芻、活動回避)を示したが、術前理学療法を受けた参加者は、痛みに対処する能力を示し、力を得ていると感じ、リハビリテーションに参加していた。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ギリシャ神話の中に、プロメテウスとエピメテウスという神が出てくる。
ざっくり、以下のようなイメージだ。
プロメテウス:予知の神。あらかじめ先を予測して、行動する。
エピメテウス:後知の神。事が起こってから、それに気づく、対応する。

例えば、嵐が来る際には、明らかにプロメテウスの方が有効な戦略を立てられそうだ。
嵐が来ることを予期し、家の脆いところを補強し、避難路を確保しておき、非常食を準備しておく。
さらに重要なことには、嵐が来て緊急事態になる『心づもり』をつくっておくことができるので、パニックにならない。

今回抄読した文献は、術前理学療法は、まさにプロメテウス的な働きをするのではないかと感じさせた。
これから来る、術後の疼痛という嵐に対して、術前に疼痛教育や理学療法を施す中で、まさに『心づもり』をつくってもらうことが可能となる。
それによって、術後に訪れた疼痛に対して、「ああ、それなら知っているよ」という感じで対処できる、と。
疼痛に対する術前理学療法、疼痛教育、重要である。

事前の一策・事後の百策
中野勝雄

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