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ストレスメーター。心身のストレス強度別の人体反応

📖 文献情報 と 抄録和訳

ストレスの神経認知効果:メタパラダイムの視点

📕Kim, E.J., Kim, J.J. Neurocognitive effects of stress: a metaparadigm perspective. Mol Psychiatry (2023). https://doi.org/10.1038/s41380-023-01986-4
🔗 DOI, PubMed 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

[レビュー概要]

■ ストレスメーター:軽度〜慢性ストレスが人体に及ぼす影響のまとめ図
<図の上段>
・軽度のストレス状態:交感神経系を介した短時間の神経化学的変化を伴い、意欲、覚醒、覚醒機能に影響を与える。
・中等度のストレス状態:神経活動やシナプス可塑性に比較的長い時間変化が生じる。
・強い慢性ストレス状態:海馬の形態変化、神経新生、神経毒性に影響を及ぼし、海馬の変化を拡大させる可能性がある
<図の下段>
・ストレスに対するこれらの多様な生理的変化は、その後の海馬の記憶機能を高めたり、損なったりすることがある。
・ストレスの海馬機能に対する増強-障害作用は、Diamondらの「ストレス-海馬相互作用の時間力学モデルでも提案されている(📕Diamond, 2007 >>> doi.)。

■ このレビューの主な目的
(i)現代のストレス研究の基礎およびトランスレーショナル研究におけるHPA軸ドグマにつながった歴史的背景におけるストレスの神経認知的影響の概要を示すこと
(ii)ストレスのグルココルチコイド仮説の必要性と十分性を批判的に再検討すること
(iii)ストレス影響の進行を神経コードレベルで監視および操作する代替メタパラダイム手法を提案すること

■ 心身のストレスによる細胞レベルへの影響
・肉体的、心理的なストレス体験が圧倒的であると、その後の海馬の神経細胞の特性や認知機能に測定可能な影響を与えることがある。
・細胞レベルでは、ストレスが海馬のシナプス可塑性、スパイクおよび局所電位活動、樹状突起形態、神経新生、神経変性を変化させることが示されている。

■ 心身のストレスによる行動レベルへの影響
・行動レベルでは、ストレスは、ヒトの言語想起記憶やネズミの空間記憶など、認知に基づく宣言的(または明示的)課題の学習と記憶を損なう一方で、ヒトの差動恐怖条件付けやネズミの文脈的恐怖条件付けなど、感情に基づく課題を促進することが明らかにされている。
・これらの海馬の垂直的な変化は、被験者がストレスを受けた後に手続き的に観察されるが、一般に、循環器系の視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の効果ホルモンであるグルココルチコイドが、コルチコステロイド受容体が密集している海馬の神経細胞に直接作用することによって、繰り返し上昇することが介在すると信じられている。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ストレス、と聞いて直感的にどうだろうか。
『嫌』だと思う。
だが、ストレスとは、嫌な“だけ”のものだろうか。
「いえいえ、ストレスはある意味で友達ですよ」と主張しているのが以下TED talkの講演者ケリー・マクゴニガルだ。
彼女の主張は、以下の3点である。
① ストレスは害だ、身体に悪いという概念を捨て去りなさい
② ストレスは身体に有用なもの、役割を持つものという認識を学びなさい
③ ストレスを持つものに手を差し伸べなさい

果たして、本当にそうなのだろうか。
良いストレスなど、あるのだろうか。
今回の論文は、その問いかけに対して強く『Yes』と頷いた。
そして、All Yesではなく、「強度によってYes」だという。
ストレスメーターの図は、その概念をとてもよく示唆してくれている。

アイントシュルツの法則というものがある。

✅ アイントシュルツの法則とは?
弱い刺激をすることで神経機能を喚起し、中程度の刺激で神経機能を興奮させ、強い刺激は神経機能を抑制し、最強度の刺激で静止する方法である。
~Wiki~

Intensity dependent effects。
何事につけ、強度というものが大事だ。
ストレスだって、その強度をコントロールできれば、友達になりうる。

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